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神無き世界~悠久の時を生きる深紅の令嬢とかつて神さまと呼ばれた人間~  作者: 蒼 葉月
第三章 滅びの村の死の担い手
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第一幕 死皇帝ゲーテ Ⅳ

 刀を抜刀すると炎を宿した刀身が姿を現す。


 神威カムイ。これが俺の持つ刀の名前。


 無論、只の刀ではなく式術の力を増幅させる特殊な力を持つ術具スフィアクローネだ。


 自分の力では、せいぜい拳ほどの大きさの炎しか作り出す事の出来ない俺は、この神威を使い、自らが持つ式術の力を増幅させて戦う。


 これが、俺の奥の手。

 体勢を低く屈め、神威の刀身を少し下げるとゲーデに向かって駆け出す。


「ほぉ、式術か、只の人間ではないか。しかし、そんな小さな炎では、私には勝てんよ。」


 ゲーデは、余裕の表情を崩さない。


 俺は構わず、炎を纏う神威を袈裟掛けに振り下ろす。


 なぜか、ゲーデは避けない。


 構うものか、神威を握る手に力を込める。

 ゲーデの右肩に、神威の刃が食い込む。

 まるで手ごたえがない。妖魔を斬るとはこういう感じなのか。

 ゲーデの身体に炎の斬撃が食い込む、奴は後方に倒れ込むと全身が黒くなり、地面に溶け込む。


 あまりにも呆気ない結果に思わず呆然とするが、ゲーデの何事も無かったかのような声に現実に引き戻される事になる。


「……ふむ、只の炎ではないようだな、身代わりを使っておいて正解だったな。」


 後方の地面から、這い出るようにゲーデの姿が現れる。


 俺はすぐに声がする方向を向く。


「驚いたカネ?ふむ、退屈凌ぎに少しだけ説明してやろう、貴様がさっき切り捨てたものは私の影だ。そうだな、簡単に言うと、貴様達の式術と同じような力だ。我々は貴様達と違って、力を行使するために媒介は一切必要としない、つまり命などを使わずとも、簡単に力を行使できるという事だ。この力を私達は祖力と呼んでいる。私の祖力は【シャドウ支配者インカネーション】。影の具現化、そこにいるシーリスの【深紅の従属】に良く似た力だ。まぁ、影と血の違いはあるガネ。……それにしても、貴様は何者だ?私の影は只の斬撃や炎では、切り捨てたり焦がしたりは出来ないはずだが……。ますます興味深いな。」


 ゲーデは何かを考え込む。

 ゲーデが何を考えこんでいるのか俺には知る由もないが、一つだけ分かった事がある。奴には神威の斬撃は有効だという事だ。


 俺はシーリスの飛ばされた方に目をやる。

 シーリスはうつろな表情を浮かべてはいるものの、ふらふらとしながら立ち上がっていた。


 良かった。とりあえず無事のようだ。


「……早く逃げろ。」


 精一杯の声で叫ぶと、再び体勢を低く屈めるとゲーデに向かって駆け出す。


「全く馬鹿の一つ覚えのように、突っ込む事しか出来んのカネ。愚かだな。所詮は只の人間ということか。」


「奏でよ、死者の旋律を。唄え、漆黒の鎮魂歌。すべからく生命を奪い取る死者の行進。『死者デス葬送行進曲マルシュフェネーブル』。」


 ゲーデは大きく両手を広げる。奴の影が人の形から不定形に、そして無数の触手のような形に変化し、地面から這い出す。


 次の瞬間、複数の鞭で打ち据えられるような激痛が身体中を襲う。


 目で追うのも不可能な程、素早いゲーデの影の動きに反応が追い付かず、一方的に打ち据えられる。


 激しい激痛に立っていられなくなり、うつ伏せに倒れ込む。



 意識が遠のいていく。



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