第一幕 死皇帝ゲーテ Ⅰ
空気が重い。
昨日の出来事が原因だろうか?
シーリスは今朝から言葉数が少ない。彼女は不機嫌なのか?何か心配事があるのか?どちらとも判別し難い表情を浮かべている。
俺達は必要最低限の会話しかしないまま、街道を只々北に向かって歩いていた。
突然、シーリスが立ち止まる。
「……死臭がするわ。」
何の変調も感じる事ができない俺は辺りを見回した。
すると、今まで快晴だった天気が嘘のように急に霧が辺りに立ち込め始める。
「気をつけなさい。クレス、どうやら噂の張本人のお出ましみたいね。」
シーリスの舌打ちが聞こえる。
「噂って、あの酒場で聞いた噂話?……というか、あの時、君もあの話を聞いていたのか?いかにも聞いていないって感じだったじゃないか。」
「ああ。あれは、対応するのが面倒だったし、まさかあんな場所で私達の話をするわけにはいかないでしょう?」
「……それにしたって、反応ぐらいしてくれても良かったんじゃないか?周りに気づかれないようにだっていくらでもできるだろう?」
納得する事が出来ずに食い下がる。
「そうね、でも、今はそんな話をしている暇はないと思うけれど?」
そんなシーリスの言葉に黙って頷く。
無論、納得したわけではないが、そんなやり取りをしている間に霧が更に濃くなり、気が付くと空には漆黒の闇、辺りには無数の墓標が無造作に乱立する不気味な荒野が広がっていたからだ。
シーリスは頭を覆っているフードを外しながら大きな溜息を吐く。
「疑問に思っていたのだけれど、この世界には君以外にも妖魔はいるのか?」
更に機嫌の悪くなったシーリスに問いかける。
「……いるわ。言ったでしょ、この世界は貴方達だけの物ではないって。」
シーリスは周りの景色を睨みながら口を開く。
「それじゃ、その中にこういう事が出来る奴に心当たりは?」
「……あるわ、でも心当たりが多すぎて考えたくもないわね。」
シーリスは不機嫌そうに口を開く。




