第二幕 異なる存在 Ⅳ
宿の窓から月光が差し込む。
部屋に入るなり、全身を覆うローブを脱ぐシーリス。
首には白い布を巻き、胸と肩の部分が大きく開いた黒い長袖の服に、胸元には一際輝く大きな紫色の宝石の付いたネックレス、大きなリボンが付いた腰帯びを巻き、黒いミニスカートに太ももの部分まである黒のニーソックスを履いている。
旅先での動きやすさを意識したのだろうか、思ったより露出度が高い。
そんなシーリスが、月明かりを浴び、ベッドに腰掛どこか憂鬱そうな表情をしている姿に妙な艶かしさを感じて、視線を彼女から外す。
そもそも、俺はシーリスと別の部屋に泊まる事を考えていたが、彼女がそれを拒絶した。
相手が如何に吸血鬼と言っても、絶世の美女とも言える少女と同じ部屋に泊まるという事態に如何して良いか分からず、落ち着かない。
「ねぇ、クレス、貴方はどうして私と別々の部屋に泊まろうとしたの?」
シーリスはどこか憂鬱そうな表情を浮かべる。
「どうしてって、君は女で、俺は男だ、当然だろう。」
「そんな事を気にしていたの?……人間の思考というものは面白いわね。ちょっとこっちに来なさい。」
「……?」
「良いから、早く来なさいよ。」
俺はシーリスの言うとおり、彼女に近づく。
すると突然シーリスは俺をベッドに押し倒し、寄りかかる。
「良い?クレス、よく聞きなさい。契約を結んだ時点で、貴方は私のものなの。つまり私と貴方は一心同体どこに行くのも一緒よ。……分かったかしら?」
シーリスは白く透き通った小さな人差し指で俺の首筋をなぞりながら甘ったるい声で話しかける。酒がはいっているせいだろうか?彼女の指はいつもより熱っぽい。
シーリスの仕草、甘い声に魅了され、只頷くことしか出来ない。
「……一つ聞きたいのだけれど?」
シーリスが口を開く。
「何だ?」
呆然とした様子で答えると、シーリスは言い難いのか、暫く沈黙した後に言葉を選ぶように口を開いた。
「……昼間の、……あの話、本当なの?」
「何の事だ?」
シーリスの言葉があまりにも遠まわしでどういう意味が分からない。
「……だから、……あの話よ。」
シーリスの顔が心なしか赤く染まっている。
「それじゃ、分からないよ。」
相変わらずシーリスの意図が分からない。
「……だから、……その、貴方の思う人でもいるのかという事よ。」
シーリスは暫くの沈黙の後、言葉を選ぶかのようにゆっくりと口を開く。
「ああ、本当の事だよ。」
俺はシーリスの魅力に完全に囚われており呆然とした様子で答える。
シーリスは嬉しそうに微笑んで、俺の首筋に白い牙を突きたてる。
俺は多少の痛みを感じながらも、何とも言えない快感と倒錯した光景に身を委ねる。




