8. ほーちゃん!
お久しぶりです。別シリーズの書き溜めをしようとしたところ残ってた話が複数ありましたので少しずつ公表していきます。ほのかの最後や物語の展開は決めているので続けるかもしれません
こだまする目覚まし時計の音…時刻は6時半……頭は……痛くない、、熱は、、下がったらしい。
これが所謂いつも通りの時間帯。この時刻、しかも今日は日曜日だから下にいるのは恐らく涼香だけだろう。お母さんは普通なら寝ている時間帯である。
髪はやはり長かった。が、昨日はポニーテールにして寝たらしく寝癖らしいものはなさそうだ。前日起こったことは昨日の朝と異なり覚えている。そのわりに妙に冷静だった。
とりあえず下に行ってすずに熱が下がったことを伝えようと、洋服に着替えようとする。昨日買った服を探してみると部屋にあるタンスに詰まっているのを発見し、少し悩んだあとワンピースに着替えた。それに伴い髪型に三つ編みを入れ、下に行こうとスマホをとろうとした、とき。
机の上に様々な書類がおいていることに気づいた。なにか引っ掛かった。昨日のあとに、でも、今日の前に、なにかあった。重要なこと、、かな?
でも、それが何かわからなかった。だから下に行くことにした。それに気のせいかもしれない。そう思い、自室のドアを開け、階段を下りる。
下からはテレビの音のみが聞こえてくる、このところをみてやはりすずしかいないと確信した。そのまま一階のドアを開けた。
「すず、おはよ~」
いつも通りすずに声をかけてソファの方に向く。ここで普段はすずも「お兄ちゃん(お姉ちゃん)おはよ~」と声をかけてくる。しかし、今日はいつもと違った。なにも挨拶をしなかったわけではない。彼女はあろうことか
「あ、ほーちゃん、おはよ~!」
と、声をかけてきたのであった。その時すべての記憶が蘇った気がした。
※
そのあと、すぐに部屋に戻った。涼香には適当にごまかして。でもそんなことよりも今の自分の状況を把握しておきたかった。
そのためにまず、クローゼットを開けた。そこには言われた通り、私用の、確かに悪くないショルダーバッグとリュックサックがおいてあり、学校用のサブバック、メインバック、そして女子用の制服が置いてあった。また、その下の引き出しには体育着、ジャージなどが存在した。
次に机の上においてある書類を見つける。その中には学校に出す書類、そして生命保険証などが置いてあり、そこに個人情報が乗っていた。
名前 楓葉穂乃華
生年月日 20××年9月16日
など、様々な情報。しかし、誰の子という扱いなのかはわからなかったし、出身の学校についてもわからなかった。
さらに端まで探してみると一枚の手紙を見つけた。そこには「萩斗ノスマホ引キ出シニアリ」とあった。そこでようやく自分がさっきとったスマートフォンが別のものだということに気づいた。
そしてLINEを開いてみるとそこにはお母さんの名前しかなかった。慌てて引き出しを開け、萩斗のLINEを開けると部活のみんなから、昨日休んだことをツッこむLINEがいくつか届いていたが、俺は無視を決め込むことにした。
なぜならこのアカウントを使ってはいけない気がした。これに反応することは藍川萩斗の存在の証明になることをなぜか危険に思った。
と、まあこんな感じで一通りしてから例の夢に出てきた…
黒幕
ヤツの言った'呪い'というものが頭のなかを周りだした。そして、、
「正体を知られたら、死んじゃうんだ…」
孤独を感じた気がした。だってみんなに本当の自分をしれないのだから。いや、厳密に言えば三回ばれなきゃいいらしいけど、、あと、、それに、、、
そうだ!家族には一人だけど、、一人だけど俺を知ってもらえるんだ!
そんな当たり前だと思うこと、いや、当たり前ですらないことになぜか喜びを感じた。
とはいえ、誰に話すべきなのだろうか。涼香かお母さんかそれともお父さんか…?
まず、お父さんはないだろう。現在単身赴任で一週間に一度しか帰ってこない上に今の性別と違う。そういった面で考えるとお父さんには悪いけどたった一人、知ってもらう人にふさわしくなく感じてしまった。
問題は涼香にはなすか、お母さんにはなすか、だ。
どちらも良い点、悪い点が考えられた。涼香はいろいろ頼りづらいとこがありそうだけど、きっと俺のことを知ったら姉妹として振る舞ってくれる。そして、なんだかんだ話を聞いてくれるし、助けてくれることをある。
お母さんは頼りになりそうだけど、もともと、俺は男だったのだからどう思うのかがしのばれる。
そうやって考えていたとき、ドアがコンコンとならされた。
いったい誰だろうか?
その問いに応えるかのようにドアの向こうから
「ほーちゃん!入っていーい?」
と、涼香の声が聞こえてきた。どうしようか。でも、ここで断るのは不自然だし…
「いーよー!」
仕方なくそう答えた。そうして、ガチャッとドアを開けて部屋に入ってきた涼香を見ながらさっきの涼香の二人称「ほーちゃん」ってなんだろう?って考えたんだけど、それは結構すぐに理解できた。
今の俺の名前は穂乃華、ホノカだから。そのホをとって「ほーちゃん」なのだろう。
それに俺はここに親戚の子としてきた設定だったはず。俺だって従姉妹や幼馴染みの子とかには名前にちゃんをつけて呼んでいた。それと同じなのだろう。あれ?ってことは俺もすずを「すずちゃん」って呼ぶべきなのか?
うーん…ま、いっか。すずだし、すずで。それにすずは学校の友達にも一部からすずーってよばれてたはずだしね。
で、ここで一旦話が戻ります。
すずは部屋入ってから俺のとなりに座って部屋を見回したあと、クローゼットの方を見て、
「ほーちゃん、クローゼット開けて良い?」
と。少し質問がいきなりになのもあって反応に少しつまったけど別に構わなかったので、
「え、あ、うん。いいけど…」
「やったー!」
なにがやったー!なのかわからないけど、ウキウキしながらクローゼットを開けている涼香を見ながら、果たして本当にこいつに正体教えて大丈夫かなぁ?って少し感じてしまう。てか、クローゼットってなにかあったけ?制服くらいしかなかったはず。あ、学校のバッグもあったけど。あとは萩斗の小さい頃のおもちゃがいくつかあるくらいか…?
「へぇ、女子の制服ってこんな感じなんだね!スカートかわいい!」
「え?あ、うん。」
そういって涼香はスカートやバッグをひたすら眺め始めた。
てか、制服目的だったんだね。スカートかわいいですか?他の学校と大差ないひだつきのやつだけど、、
でも、もう涼香、小5だし、洋服とかに興味があるのかも。昨日、涼香に服を選ぶの楽しそうだったと言われてたし、センスも悪くないって言われた。これを逆に考えると涼香自身も服選びをある程度したことがある=洋服に興味がある、と言えないだろうか。
それに涼香は直接中学生の女の子に会ってないのだろう。初めて見るだけあってより関心を持っているのかもしれない。
視線をすずに戻すと、涼香もまたクローゼットを閉めて、こちらに視線を戻し、目が合った。
「ちなみにほーちゃんどんな筆箱とか、筆記用具持ってるのー?」
「えーと、あ!」
そうだった…よく考えてみれば明日から学校のにも関わらずあのクソ野郎、肝心の筆箱、筆記用具、など用意してないから買ってこいって言ってたな。他にもないものないかあとで確認しとこ。ってか、何て答えればいいんだ。これ、えーっと、うーんと、、
「もしかして、ない?」
「え、う、うん。こっちに来るとき、汚かったから全部捨てちゃったんだ…」
「へぇ、、」
ナイス嘘です。この嘘はそれなりに信憑性あるんじゃないかな?、なんてったってまだボロを出すわけにはいかないからね。というかここまで妙に自分が冷静なのが、もはや自分でも不自然に感じられる件。ま、この際どうでもいいですね。
「ってか、それなら明日の学校どうするの?ほーちゃんも明日から学校あるんでしょ⁉」
おっと、わが妹ながら良い着眼点ですね。
「うん。だから、今日買わなきゃいけないんだけど、この辺になんかイ○ンみたいなショッピングセンターとかないかな?」
こんな感じで不自然かな…?
「えーと、イ○ンならすぐそこにあるから今日行くの?」
あ、大丈夫みたい。
「あ、それなら行くけど、、」
「じゃあすずと行こ!自転車で10分くらいだし。お母さんと一緒だと時間余計にかかりそうだし。それについでにすずの分のキーホルダーとか買えるかもだからね!」
そういってニカッて笑うと、小さな声で「ねっ!?」と呟き、手を握った。
「もちろんいいよ!」って返して手を握ってあげるとすごい嬉しそうにして、
「じゃあお母さんに伝えてお金もらってくるー!」
と、言って部屋を飛び出していった。
「わかった!お、、私も財布探しとくねー!」
って返しておいた。けど、
やっぱり一人称慣れないなぁ。今はなんとかなったけど気を付けないと。
それに、そもそもお財布なんてあるのかな~?今のうちになにか必要なものがないか確認しよう。
とまあこんな経緯で妹と二人だけで買い物に行くことが決まったんだけど、意外とありがたかったりする。
まず、俺も流石にイ○ンに行くことはあるし、場所もわかるけど最近の筆箱やシャーペンの女子の流行りまでは把握できてない。ある程度はインターネットを使えばなんとかなるけど涼香がいることはこういった意味でもありがたい。
さらにそういったものをどこで取り揃えればいいのかわからない。この感じだと俺はここ数日でここに来たのだから涼香がある程度案内してくれるだろう。
さて、そんなこんなで部屋を確認したところ、筆箱の他にもハンカチや髪ゴムがないことに気づいた。今使ってる髪ゴムはすずに借りたやつだけど、自分の髪ゴムもいくつかあった方がいいだろう。
また、意外なことにお財布はしっかりとバッグに入っていた。中を見ると千円札が5枚、五千円札が1枚、五百円玉が3枚、百円玉が5枚、と計12000円入っていた。また、萩斗の貯金箱も発見し、貯めていた15000円くらいが丸々残っていた。
金の出先は気になるが、あの悪魔の慰謝料と思って受け取ることにし、その事に関しては気にしないことにした。
それと、これは部屋を捜索しているときに髪が気になって気づいたのだけど、髪ゴムもたしかに大切だけど、手鏡とくしはあった方がいいってか、クラスの女子は結構全員持っていた気がする。確かに昨日から気にはなっていたけど、くしがないと上手くかみを結えない。結えないことはなくても、少し跳ねちゃうから。このことを考えると、お金もあるし買うべきだと思った。
このように買うものを紙にメモしてから一階のリビングに戻ると、すでに時計の針は八時半を指していて、お母さんは起きてご飯の用意は終わっていた。
「あ、ほーちゃんおはよう!よく眠れた?」
「あ、はい…」
実の母親が「ほーちゃん」と呼んでいて本当に呪いに掛けられたんだなって実感した。でも、次の瞬間、あることに気づく。
考えてみてくれ。お母さんは俺のことを「ほーちゃん」って呼んでいる。つまり、お母さんにとっての俺は親戚の子なんだ。
じゃあ俺ってお母さんのこと、なんて呼べばいいんだ?
「ほーちゃん!早く食べよーヨ!」
「うん、ちょっと待って~!」
涼香に呼ばれて食卓につき、いただきます、と言ってご飯を食べる。
まぁいっか。お母さんのことはできるだけ呼ばないようにしよう。もしお母さんに正体を明かすなら、少なくともそれまでは。
そう、俺が決心したとき、涼香に声をかけられた。
「ほーちゃん!買い物なんだけど、お昼ご飯のあとなら二人でいっていいって!ほーちゃんもスマホ持ってるからって。」
「わかった!それまでに用意しとくね!」
「あと、自転車はお兄ちゃんの使ってもらうけどいい?」
「わかった~、大丈夫だよ!」
なんだか、「ほーちゃん」って呼ばれるのになれてしまった。まぁいいけど。どうせ、これから学校の人にもそう呼ばれるようになるんだろうし。ただ、、
本当に俺が萩斗だということを忘れていて、知らないんだなって、わかってたはずのに実感した。
でも、不思議と悲しいだけではなかったのが印象的だった。




