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仄かに私を隠したのは誰?  作者: 狛烏賊
わたしのハジマリ
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3. 最悪な朝 (前編)

 カーテン越しに朝日が差し込む。そんなやわらかい朝日によってその日、俺は起こされた。


 まだ四月の下旬なのにも関わらず、少し暑いなと感じたので、布団をはぎ、軽く顔を起こしてベッドの隣の机に置いてあるはずの時計を確認する。思った通りそのには時計があり、その針は7時ちょうどを指している。


 多くの中学生にとって休日にこの時刻に起きるということは珍しいらしいが、普段の休日から六時半には起きている俺にとっては少々遅い目覚めだったりする。


 ……そういえば昨日はなにがあったんだっけ。


 思い出せない中でとりあえず体を起こす。特にやることもないのだが、ゲームするなり本を読むなりしようと思った。、そして体を起こしたところ軽い頭痛を感じた。


 ……


 その痛みを感じて数秒後、俺はようやく昨日起こったことを思い出せた。


 あの嫌な出来事を思い出したと言えば思い出したのだが、それに関しては特にない。普段このような気持ちになったときも昼間の間は基本的に自己嫌悪?に陥ることはほとんどない。


 それ以上に昨日の夜、いきなり熱が出たのはいい。でも、寝っ転がったあとに急に気を失ってそのまま寝た…。気がする。そして、あの体の溶けるような痛みがあった割りには今、かなり元気な状態ではないだろうか。


 …あれはなんだったのか?


 水筒の中身をすべて捨てられていたので部活終わりで喉がカラカラだったのに全く水を飲まずに寝たので熱中症だったのかもしれない。それにしても今多少の頭の痛みしかないことに疑問が残る。


 ーーまぁいいか。とりあえず今は微熱はありそうだが高熱では無さそうだ。少しは寝なければならないかもしれないが、十分に休日を楽しく過ごせそうだ。


 しかも微熱はありそうなので部活を休めそうだ。昨日のことがあって部活に抵抗を感じるっていうのもあるが、普段休日はゲームをしている俺からしたらうれしいことである。


 そんなことを考えつつも時計のあった机の上を覗くと、予想通り水筒とスマホと体温計とドリンクゼリーが置いてある。普段風邪を引くと大抵ここにこれらが置いてあるのだ。その中から、俺は水筒とスマホを取り出す。


 先程も述べたように昨夜から全く水を飲んでないのでまずは水筒の中に入った麦茶を飲むためふたを開ける。


 そのあと麦茶を飲みながら、スマホの某ゲームアプリを開きログインしてログインボーナスを回収しようとするのだが、思った以上に自分の手が小さく、アプリのボタンに片手だと指が届かない。もちろんがんばれば届くのだがそうすると手からスマホが落ちそうになったので、麦茶を飲み終わってから両手でやることにした。


 そんな普段より小さく感じられる自分の手に疑問を持ちつつも、ゲームのログインをしたがさすがにまだ、ゲームをする気にはなれず、素直に体温を測って寝ることに決める。


 そしてここで二つ目の疑問。いや、昨日の夜の寝つきも含めれば三つ目だが、、そこはまあいい。


 俺はここで体温計を手に取った。そして脇に差して体温を測ろうとするのだが、、、なんだこれは。


 一瞬なんて表現すればいいかわからなくなる。でもこれを一言で説明する表現はすぐに見つかる。要するに…。


 ーー胸が膨らんでいるのだ。


 夢なのか。でも、ほっぺをつねってみると痛みを感じるので夢ではないのか。


 少しの間思考が停止する。


 とてもじゃないがこの一連の状況を納得できる説明で繋げることができない。ただ呆然としながら髪をクルクル弄り始める。これは普段からの癖でなにか落ち着かないとすぐこうしてしまうのだが、、、


 ーーここでもまた違和感を感じた。


 ここまでの流れで勘のいい人ならわかると思うがやっぱりそうだ。髪がそれなりにのびている。試しに髪を後ろで束ねるようにしてみると、ポニーテールにしても変ではないくらいに長い。


 もしかして、、、俺は女の子になっている!?


 いやいや、まさか、、、ね…。でも、だ。


 確かにこれが納得できる説明であるとはとても言えない。けど、この状況をわかりやすく説明しろと言われたらこうとしか言えない。これらの特徴は明らかに女子のそれである。


「あーーー」


 なんとなく声を出してみる。これは普段通りの高い、自分でもいうのもなんだが「かわいらしい」声である。でももともとそうだったとは言え、女子の特徴とは一致している。


 ここまで女子になってることを裏付ける事実があるのならこっちを確認するしかない。結局はこれが自分の置かれている状況を証明してくれるはずだ。逆に言ってみればこれが最後の自分が男子だと証明する術だ。


 そう思い、おそるおそるズボンの上から自分のアレがあるところを触ってみる。その結果は、、、半ば予想通りだったが、なにもなかった。


 ここまでの結果を総合するに本当に俺は女子になってしまったのだろうか。俺は考える。いや別に嫌ではないけど。でもこの状況を素直に受け入れるっていうのはさすがにできない。


 そうだ、もしかしたらこんなことを考えていたからアレがなくなっていると、勘違いしたのかも知らない。


 そんなありもしない可能性を信じてトイレに確かめに行こうとする。別に部屋で確認しても問題ないのだろうが誰もいないとはいえ、ここで半裸になるのは気が引ける。


 そう思ってベッドから立ち上がったときだった。階段の方からコンコンと足音が聞こえてくるのを感じた。


 そして、その足音はこの部屋に、着実に近づいている。


 まずい…。瞬間的にそう感じた。今、この状況を総合して考えると俺の今の姿がどんな感じか多少は想像できる。もし、こんな俺と家族が会ったらどんな反応をするだろうか。


 こういうとき布団の中に隠れたりすべきだったのかもしれない。だが、俺は謎の緊張で体が動かず足音の主がこの部屋に入ってこないのを必死に祈るのみだった。


 しかしそんな思いむなしく、というかもちろんその足音の主はこの部屋の扉を開ける。なぜかわからないが、血の気が引くのを感じた。


 その人はドアを開けると同時になにか言ってきた。


「お兄ちゃん、大丈夫?てか、起きてるー?」


 声の主は涼香だった。考えてみれば、下手に母さんが来たよりはマシかもしれない。でも、どっちにしろ面倒くさい説明を強いられるのは必至だ。


 こんな風に場に凍りつきながらこの状況をどうすればなんとかできるか、考えながら立っている俺を見た彼女は少し安心したかのように、


「あ、起きてたんだ!思ったより元気そうでなによ…」


 「り」そういいかけて彼女は固まる。もちろん俺も固まる。  


 と、いうのもこの部屋は俺が朝起きてから今まで光という光がカーテン越しの太陽光くらいしかなかった。俺は起きてからずっとこの暗闇にいたから目が慣れているが涼香は目が慣れているわけがない。それでここまで俺の異変に気付かなかったらしい。しかし。


 彼女は部屋の電気をつけた。


 そうするともちろん俺の姿もはっきり見えるようになるわけであり、それと同時に異変にも気づく。


 一分ほど沈黙の間が続く。


 その重たい空気の中最初に口を開いたのは涼香だった。


「どちら様でしょうか?」


 そんな当たり前といえばそれまでだが、できるだけ言わないでほしいかったような言葉を口に出してきた。


  

   ※



「だから俺は藍川萩斗。お前のお兄ちゃんなの!」

「でもどう見てもあなたは女の子だよ。そこはどう説明するの?」

「それは……」


 こんな感じで先程からこの議論は平行線のままである。彼女の目線でも今の俺は完全に女の子に見えるらしい。それに関して、もちろん朝起きたら突然こうなっていたと言えるはずもなくただただ時間が過ぎていく。

 

 どうすれば自分を証明できるか。そう考えているとふと頭痛がする。よく考えれば今は微熱があるっぽいんだった。いろいろ衝撃の事実が判明して忘れてたけど。


 そんな風にベットに座り込む俺を見て、昨日の俺と今の俺を重ね合わせたのかすずもようやく俺を信用したような素振りを見せる。


「熱、、まだあるの?顔が少し赤いし、体調悪そうだけど…」

「う、うん。少し頭痛がするけど、」

「大丈夫?とりあえず熱を測って。一応昨日の夜は40.2あったらしいし…」


 そういって先程とは一変すずは机の上に置いてあった体温計を渡してくれた。てか、昨日の夜はそんなにあったのか。


 そんな驚きもそこそこにとりあえず体温計を脇に挟む。そういえばさっきは自分の体の異変に気を取られて熱を測ってなかった。


 それからおよそ一分後「ピピピッ」と体温計がなり、脇から取り出すと37.4と液晶に表示されていた。本当に微妙な微熱だな。 

 

 そして、それをすずに渡す。すると、彼女はこういった。


「微熱あるね…。で、、、あなたは本当にお兄ちゃんなの?」


 それは俺を心配する一方でこちらとしては結構ショッキングな言葉だった。なぜならこのようすから彼女が俺を信じたとおもいきっていたからだ。そしてその半ば予想外の質問にどう答えるべきか分からず口を閉ざす。


 そして再び沈黙の間。


 一般的なマンガではこんな展開になるとお互いしか知らないことを聞いてお互いの正体を確かめている気がする。でも、俺たち兄妹でそんな秘密なぞ存在していたっけ。


 そう思っていたその時、涼香が口を開けた。


「じゃあ私のクラスは何年何組何番でしょうか?」

 

 …そんなことを突然に問う。てか、これは知っている人はみんな知ってるんじゃ…


 そう思いながらも少し考える。が、俺も小学生の時ならともかくとして、最近の彼女の学校でのことなどほとんどわからない。そんな中でも必死に考えた結果こう答える。


「五年一組の一番だっけ?」


 五年生なのはあってるはずだ。一組って言うのも二年連続先生が同じ上に一組だったといってた気がする。問題は番号。確かずっと一番だった気がするけどよくわからない。果たしてその答えは……?


「残念。私は今年、初めて二番になりました。」

「うぅぅぅ…。」 


 ハズレだったらしい。一つ目のチャンスがなくなった。そればかりかもしかしたら彼女はこれを俺が俺じゃない証拠と考えているかもしれない。


 そんな風にすこし焦っている俺を横目に彼女は爆笑し始める。なにがそんなに面白いのか。こっちは涼香に信じてもらおうと必死なのに…。あれ?


 その涼香が笑ってる。なぜだろうか。あのまだ小5のすずでもさすがに初めてあった人を笑うようなことはしない。仮にもし俺を俺じゃないと思っているのならここまで笑わないはずだ。


 そのとき、すずは笑うのをやめてこう言う。


「ははは、大丈夫だよ。お兄ちゃん。すずは熱を測ったあたりからなんとなくわかってたから。そもそもこの質問に答えられるとも思ってないし。まぁ最初は確かに少し疑ってたけど。」

「えっ!?」

 

 その言葉を聞いて驚いて聞き返してしまう。そしたら、あの辺りから彼女に踊らされていたということか。少し腹が立つな…。


 そんな俺の気持ちを察したのか彼女は言う。


「確かに薄々わかっていたけど、話し方とかもう少し気を付けて話してみようと思って。そしたら、何だかんだいってお兄ちゃんっぽいところがあってさ。見た目も目とか結構変わってないし。」

「えっ!?そうなの!?」

「うん。確かに女の子みたいですごいかわいいんだけど、なんだかんだでもとの兄ちゃんと一緒のところも多いね。声なんか全く同じ感じだし。」

「それは俺も感じてた。」

「だろうね。でも、少なくともルックスだけなら本当にかわいいから。あとで鏡見ておいで。ついでにすずのワンピも貸してあげるから」

「いや、それはいいよ…」


 そんなこんなで俺が驚いたりする時間もそこそこに俺の容姿や様子について説明してくれる。とりあえず見た目は完全に女子になってしまったらしい。それになんらかの感傷的な気持ちを持ちつつも俺はとりあえずそれを聞く。


 そして、俺にいろいろ話してくれたあと、最後に彼女はこんな、どう答えればいいかすらわからないような、逆になぜここまで全く聞いてこなかったのかわからないような、そんな質問をしてきた。


 ーーそれは


「それで、、、結局どうしてそんな姿になっているの?」


 この事態の本質をつく質問だった。

 ついにこの物語の重要な要素に入ってきます。とはいえここから少しはまだ序章のような形なのですが…。この状況から萩斗がどのように動いていくのか、お楽しみください。


また、文章に変な部分などあったら感想などで教えてくださると嬉しいです。


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