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仄かに私を隠したのは誰?  作者: 狛烏賊
わたしのハジマリ
2/11

1.いつも通りの日常

 朝日が顔に差し込む。今の時間を確認するため時計を見ると、その針は6時30分を過ぎたところを指していた。今日は金曜日。今週最後の学校への登校日で、明日から休みなので気が楽だ。

 

 厳密に言えば部活はあるのだが…。


 どっちにしろ明日は学校自体が休みなのは変わらない。それに今日の時間割りは理社と体育以外の実技教科という素晴らしい組み合わせだ。気が楽にならないわけがあるまい。


 授業の用意を詰めて下にあるリビングにスクールバックを持っていく。


 そして諸々の朝やることをこなし、家を出たのは起きてちょうど一時間たった頃だった。スクールバックを背負い、玄関に置いてあるエナメルバッグとラケットを持つと、『いってきます』と投げ掛ける。 



 俺の名は藍川萩斗という。ある中学校に通う中学二年生だ。部活はバドミントン部に所属している。



 大きな交差点を渡り、学校の方へ向かう。普段は朝一緒に学校へ行く小学校からの友達がいるのだが今日は二人とも朝練でいない。よって今日は一人で行く。


 正直俺はあまり学校が好きではない。嫌いではないけど。友達と話したりするのは楽しいし。別に勉強に関する理由でもない。ただ、ちょっとした嫌がらせを受けているだけであって、それが嫌なだけだ。別に大したことはないのだがそれでも嫌なものは嫌なのだ。


 そんな半ば愚痴といえることをただ一人頭のなかで考えていると、ふいに後ろから声を掛けられる。声の調子から誰か察した。この元気で甲高い声。きっと彼女だろう。そして後ろを振り向くと予想した通り宮川柚菜(みやかわゆな)が立っていた。

 

「萩、おはよ!」

「柚菜おはよう!」


 ほとんど同時に声を出して二人で思わず笑う。彼女は俺の幼なじみで幼稚園に入る前からの親友だった。小学校の頃はよく一緒に学校へ行ったもんだが中学生になってからは帰り道一緒になることはしばしばあるが、朝から会うことはほとんどない。二人ともお互いの友達と行くからだ。


 なぜ今日に限って朝から一緒に行こうとするのか。不思議に思って聞こうとすると、それを察したのか彼女は答える。


「梨佳は朝練で、藻華は朝から委員会があるらしくて、誰もいなくて一人で行こうと思ったら萩ちゃんがいたもんだから…」


 俺は合点する。二人とも彼女の友達で藻夏に関してはこれまた俺の幼なじみである。


「なるほとね…こちらもそっちと同じ感じだよ!」

 

 そう返し二人で一緒に学校へ向かうことにした。


 そこからはいつも通りに普通の世間話みたいな話をする。ちなみに俺たちは去年からずっと同じクラスなので、時間割りなども一緒で、もちろんクラスのようすに関する話題になる。そして学校が近づいたときいきなりこんなことを言った。


「そう言えば今日の音楽合唱らしいけど(しゅう)ちゃんどうすんの?」

「え!?」

 

 そう彼女はいたずらっぽく笑う。こちらとしてはえっ?という感じである。

 いや、別にいいけど。いいけど、さ、ね。一応聞いてみよう。


「もちろん嘘だよね?」

「もちろん嘘じゃないよ」

 

 俺は大きなため息をついた。その横ではやっぱり柚菜は笑っていた。


 俺がこんな反応をする理由はきっと三時間目の音楽になればわかるだろう。






「ですよね…」

「うん…でも、音取れないなら僕も素直にソプラノパートにいった方がいいと思うんだ。」


 時は過ぎて三時間目。音楽の授業。柚菜の言う通り今日の音楽から11月頃にある合唱コンクールに向けての合唱の練習が始まるようだ。これは例年通りで確か去年もこの頃から練習が始まった。そこは特段問題ない。しかし上の会話からわかる人はわかると思うが、、とりあえず時を数分戻し、ここまでの展開を見てほしい。




「ということでね、今回から合唱もやっていくんですが、去年もやったのでわかると思うんだけどまずはパート分けをしていきたいと思うんだよね。男子は先に練習していていいけど、女子はパート分けしてください」


 この我が学校の音楽教師、大原(おおわら)先生の声をもとに、パートごとに分かれ練習を始める。もちろん?俺は男声パートにいくのだが、一通り通してみるとまぁ予想通りっちゃあ予想通りな声の出てくる。


「萩斗、やっぱり音取れてないからソプラノの方がいいんじゃね?」

「てかなんでこっち来たの。女子はソプラノへ行けよ。」

 

 そんな風に口々に言われる。去年もそうだったし、流石に慣れたけど。


 音楽の合唱でなにが嫌だってこうやって弄ってくるやつがいて、しかもそれが結構面倒くさいタイプの人からなんだよね。

 上の人は俺の友達で多少心配してるような感じ、したの人は普段俺に嫌がらせするなかの一人であまり関わりたくないような人だ。ただなぜここまで俺だけがいじられるのか。


 理由は簡単。俺は未だに声変わりしてなくてとても声が高いからだ。


 一年生ならともかくとして、二年生になってもここまで声が高いのは俺くらいなもので流石に一人でソプラノパートへ行くのは気が引けたため、一応まずは男声パートを試そうと思ったのだが、案の定無理だったと言うわけだ。


 しかも俺の場合下手な女子より高い音をとれる上、みんなが声変わりする前と比較しても声が高かった。声だけなら女子だ、とかよく言われる。


 そういうことで女子のパート分けが終わってこちらに来た大原先生にもこの事が伝えられて、努力むなしくソプラノに行くように勧告された。




 そして今に至る。

 

 一応勘違いされないように言っとくが別にソプラノへ行くこと自体は別に問題ない。なぜならまず第一に音域がの方が合う。それにソプラノの方が主旋律の部分が多くて音が取りやすい。要するにシンプルに音痴だから主旋律の方がまだ音を取りやすいってだけなのだけど。



 ーしかし、女子からの反応が変じゃないといいけど。


 こちらの方が心配である。


 …二年生になってまで女子パート、それもソプラノに連れてかれる人なんて珍しいってレベルじゃないだろう。


 そう思いつつ、大原先生によってソプラノのところに連れてこられた。そこには柚菜もいた。話せる柚菜(ひと)が居るだけまだマシだ。そう思いながら近づくと開口一番。


「やっぱり無理だよね…」

「当たり前っちゃ当たり前だけどね…」


 柚菜ともう一人去年から同じクラスだった女子が苦笑しながら言う。彼女らも俺が連れてこられるのは想定内だったようだ。それはそれでなんか馬鹿にされてるような気もしなくもないが、俺としてもその方がやり易い。


 去年から同じクラスの人もいるし、なんとなくみんな俺が来ると予想していたのか、誰も文句などは言わないでくれたのでとりあえず安心した。


 そのことを柚菜にいうと


「逆にあんたが男声行くって思ってたひといないよ。」


 と、まぁやっぱり馬鹿にしてるのではないかと疑いたくなるようなセリフを吐く。


 ーまぁ事実なんですけど。


 そんななんか複雑な気持ちになりつつ、一回通してみておかしな部分を修正しながら歌う。そして2回ほど通した曲の合間に柚菜が俺に尋ねてくる。


「そういえば、今日はこの事でなにも言われてないの?」 


 これは普段俺に嫌がらせしてくる人たちになにも言われてないのかという意味である。俺はこれにこう応じる。


「言われたけどもう馴れたよ。流石にね。」

「本当に?でも、萩の声やっぱりかわいいよね。声だけ聞いたら本当に女の子だもん。」

「柚菜もそれに関していじってくんの?」


 そんなしょうもない話をしてたら、気付いたら笑っていた。いじる人によっては楽しいけど、彼らにいじられると嫌な気持ちになるのはなぜだろう。柚菜にそれを聞こうと思ったけど、やめといた。この空気を壊すような気がしたからだ。

 

 この楽しい雰囲気を壊したくなかった。

 

 そんなこんなで歌い続けて、そのあと一通り通すのを4回ほど繰り返したとき、チャイムがなって授業が終わった。



 ※



 そして、こんな日でもあとはいつも通りの日常があり、部活動の時間になる。先程も述べたようにおれはバドミントン部に所属しているが、今日は体育館が取れてないため、走って筋トレして終わりなのだ。


 それでも前の顧問と違って早く終わったら別のメニューを行うから大体帰れるのはこの時期だと6時である。


 三年生の部長の先輩がメニューを二年生のみんなに伝え、走る用意をする者がいるが、それをしているのは俺を含めてせいぜい8人いるかいないか。二年生を全員合わせると部員は16人いるから実に半分以下しかやろうとしない。


 この男子バドミントン部は学校でもサボりの多い上、問題児の多い部活だと有名なのだ。小学生のころ万引きしたことがあるやつもいるらしい。これでも去年よりはましなのだが。


 というと、この部活で去年まともに走っていた今の二年生は俺を含め三人程度だった。今考えれば恐ろしいほどにみんなサボっているな…。てか、ふざけすぎだろ。


 そう思いつつも部活で仲のいい雪原(ゆきわら)と一緒に走り始める。近くを集団で走る女バドが目に入り、こういうときは女子っていいなと思うのだ。

 

 みんなしっかり部活を行い、休憩のおきは楽しくおしゃべりをしている、、いわゆる『けじめがついてる』。そんなところが羨ましい。


 俺の所属する部活では真面目に練習しているだけで馬鹿にされ、嫌なことを言われる対象となる。最近部活のある人から嫌がらせを受ける理由は一年生のとき真面目に練習していたからではないか。そう考えるようになった。



 ーーこっちは一生懸命やっていただけなのに。


 理不尽な気がする。女子だっていじめはあるだろうけど、少なくともうちの学校の部活においては、みんなで一斉に走り、一斉に休憩をとる。


 『けじめがついてる』だから、一生懸命に練習するだけで嫌がらせを受けることがないだろう。そして『けじめ』のついた練習をできる。女子のそういうところが羨ましい。

 

 もちろん、うちの部活が問題児なだけで他の男子部でしっかりやっているところはあるだろうし、逆に女子部だってうちの部活みたいにやっているところある。それは理解している。


 それでもふとそう思うのだった。



 こんな調子で内周を15周走ったあと、筋トレを終わらせたら、ちょうど5時30分を過ぎ、ミーティングの始まる頃合いとなっていた。


 メニューをすべて終わらせ、あとは先生を待つだけになった俺と雪原は巷ではユビスマと呼ばれるゲームを始める。


 他にもちっちのちだのいろいろな名称が在るらしいがよくわからない。とりあえず全国的にはどうなのか知らないが、この地域ではこう呼ばれているゲームをしながら、雪原に聞かれる。


「そういや今日音楽だったらしいですけど、パートどうしたんですか?やっぱソプラノですか?」


 彼がわざわざ敬語を使うときそれは煽りを意味する。


 ーー煽ってきやがったぞこいつ。あとでどうしてくれようか。


 もちろん友達同士のふざけのようなもんだから別に問題ない。ちなみに彼は2組でおれは3組であるため彼は俺の合唱のパートを知らない筈だか、やはり俺がソプラノに行くだろうということは予想していたらしい。


 そんな風に他にもボカロやアニメなど、おしゃべりをしてると、ふと自分の喉が渇いていることに気付く。水分補給をするため、置いてあった自分のエナメルから水筒を取りだし、スポーツドリンクを飲もうとするのだが、なにか変だなと思う。


 そして水筒を開けようとしたときその違和感は確実なものとなった。なんと水筒があいており、なかは空になっていた。


 慌ててエナメルの中身を確認するとすべてのものがスポーツドリンクによって濡れており、何もかもが使えないとまでは言わないが、とにかく大変な状況になっていた。


 これをすぐに雪原に話すと、俺自身が水筒のふたのロックをし忘れてしまったのではないかと聞く。これは俺もこのことが起こった原因でないかと思ったがそれはないとすぐに考えを撤回する。


 なぜなら、このようなことは中二になってから三回目でしかも一年生のころは一回も無かったため、とても注意しているからだ。


 それを彼に伝えると流石の彼も首を捻った。ならどうなのだろうと。


 俺はもう一つ、原因となりうることを思い付いた。誰かが意図的にやった可能性だ。特に最近俺に嫌がらせをしてくるようなやつならやりかねない。そんなことを考えたがすぐにその意見を捨てようとした。俺はそんな筈がないと思って、、、いや信じていた。


 今思えばそのことを確信していたのかもしれないが、とにかくそうでないことを祈っていた。


 これに関して考えているとあっという間に先生が来てミーティングが始まってしまった。この顧問のミーティングは本当につまらなくて嫌だ。…確かにミーティングは本来面白いはずないのだけど。


 それに今年度の新しい顧問は個人的に言わせてみると、超熱血という感じであまりいい印象でない。さらに言わせてもらえば彼は他にも諸々の問題を起こしており、生徒からの人気がないのだ。まぁこれはまた別の機会に話すことにする。


 そんな退屈な時間をなんとかしのぎ、雪原と帰ることにする。普段は朝一緒に学校に行く友達と帰るのだが、今日はあまりに時間が合わないため、部活のなかで唯一家の方向が同じな雪原と帰る。 


 雪原と世間話やさっきの水筒の話をしながら、帰りの用意をする。大体一番早く帰るのは準備の早い俺と雪原になる。しかし、この日ばかりは違った。


 早く帰ってゲームをしようと考えていたのもつかの間、自分の靴がないことに気付いたのだ。少し周りを見ても見当たらない。したがってひとまずは下駄箱を見に行くことにした。

 

 普段部活の場所へ来るときは直接靴で来るため、下駄箱にある可能性はゼロに等しいと見ていたが、それ以外にありそうな場所が見当たらない。


 それを雪原に伝えたところ彼は外から下駄箱に回り、待っているとのことだった。そして俺は急いで校舎の中から下駄箱に回っていく、、。そのときある可能性が頭をよぎるがその考えはないと再び信じる。そして、もう一度下駄箱へ向けて走り出す。

 

 すぐに下駄箱には着くが、思った通り下駄箱にはない。ならばどこにあるのだろう。とりあえず外にいる雪原にこの旨を伝える。すると彼は震え声で声を発する。


「お前の靴、確か白地青色の筋が入っていたのだったよね!?」

「うん、、そうだけど…」


 それがどうしたのだろう?

 

 彼はそんな俺の気持ちを察したのかこう答える。

「とりあえず…こっちに来い!上履きのままでもいいから…。俺だけだと本当にお前のかわからない」

「はぁ…」


 この感じだと靴が見つかったのか…?でも、彼が指すのは昇降口の目の前にある水道場である。


 このとき俺はなにかを察した。


 しかしその可能性を否定しようと…その可能性はないと信じる。


 そして彼が指す場所に急いで駆け寄った。……


 そのとき俺の目には俺の予想した以上にひどい光景が映っていたのだった。


本格的に日常が始まってきました。…まぁ萩斗としての日常の終結は近いのですが。音楽の授業とか本当にこんな感じでした、、、

次回はどちらかというとこの話と次の次の話の繋ぎになってしまいますが、是非。


〈補足〉

藍川萩斗は確かに学校に対してネガティブなイメージを少しだけ持っていますが、それはあくまでも一部の人間に本人が云うには'嫌がらせ'を受けているからです。彼には多いとは言えませんが、仲良くできる友達もいますし、柚菜のように仲のいい幼馴染みもそれなりにいます。

また、雪原と萩斗が二人だけで帰っているという記述が作中にありますが、普段雪原は一人で帰っています。その理由はただ単に部活のなかに家の方向が同じなのが萩斗しかいないだけであって、雪原本人はどちらかというと部活の盛り上げ役で人気者、という設定です

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