0. 仄かな記憶
授業の終わりを告げるチャイムがなる。そして号令係の人が合図をだすと、みんなは礼をして、授業は終わる。
この間まであった緊張感が嘘だったかのように教室は和気藹々としている。それはある意味当然のことだといえる。私だって背負っていた大きな荷を下ろした気分であることには変わらない。
それでも私にはもう一つだけ、大きな行事というのには変な今後を決める重要ななにかが迫っている。それで私はなにかを心に抱いている。そして今このときの流れを止められないかと思う。
しかしながらそのときの流れというのもあくまでもいつも通りで、私に起こった事件を知らない友達は楽しそうに話してくる。私も多少は応じるが、適当な理由をつけて彼女を他のところに追いやる。
別に彼女が嫌いなわけではないし、きつい言い方をしたわけではない。少し申し訳なく思う。でも、許してほしい。今はとても余裕といえる余裕がない。
すると、もう一人今度は私のこの事情を知っている親友が声をかけてきた。
彼女はいつものように私を心配するような言葉をかけ、そして私の悩みを話してほしいと願う。でもこればかりは彼女に話してなんとかなる問題なのか。もしそうしたところでそれは様々な面で彼女を傷つける可能性さえあるのではないか。
そう思うととても話せない。
そんなこんなで少し考えていると、予鈴がなってきたので彼女は自身の席に戻らざるを得なくなる。彼女は寂しげな顔をしつつも自らの席に戻っていく。
彼女になら話してもいいのではないか。そう思う自分もいた。
事実彼女はどんなときでも私の話や悩みを親身になって聞いてくれた。でもだからこそより気を遣ってしまうのだ。
しかし彼女はあのときでも私の力になろうとしてくれた。それなのに私がこのことを隠すのは良くないのでは。
私はこの日の放課後、彼女にこのことを伝えることを今決めた。
こう思いつつ、私は数学の教科書を開きながらふとあのときのことを思い出す。
あれは今日のようなただいつも通りの日がきっかけで起こった。
よく考えてみればあのときの私はただひたすらに自分自身を私に隠したがっていた。私はそれを否定したが、それは正解だったのかもしれない。
事実そのあとの生活は以前よりも楽しかった。
でも、果してそれが正解だったのか、それは未だわからない。
あの仮面は言った。彼らがこの事件の発端だと。そしてこれは一つのゲームだと。そう、私をこの事態に陥らせた犯人を探すゲームなのだと。
確かに俺自身を私に隠した発端は彼らかもしれない。でも私は思うのだ。本当の犯人は私自身なのではないかと。
私はこの事態を望んでおり、その発端を作ったのが彼らだったに過ぎないのだ。そう思ってしまう。
そう。
『仄かに私を隠したのは誰?』
その答えは私ではないか。
そう思ってしまうのだ。
私には今二つの不安がある。その一つがこのことだと思う。いつでも心を渦巻くこの気持ち。この魔法のような出来事を起こしてしまった犯人が私でないかという不安。それは日に日に強くなってくる。
あの日以来私は変わった。それ以来の私はそれまでとは違って純粋に心から楽しめることが増えた。でも、それは俺を隠してしまったということを表すのではないか。つまり私自身は偽りの存在ではないかと。それに対する不安かもしれない。
とてもいいことだったはずなのに私の中に渦巻く不安。それが解消できるとしたら解消できる日はおそらく近い。それが第二の不安、冒頭に記した重要ななにかが決められる日ー。
でも、結局その日を起こすことができるのかは、私次第なのだ。そうだ、、。私次第なのだ。この出来事自体を私によって起こすことはできない。あの出来事は少なくとも私によって起こされたものではないのだ。
そのきっかけが仮に私にあったとしても、もし私がそれを願っていたとしても、私だけの力でこんなこと起こるわけがあるまい。あくまでも、きっかけが私なだけなのだ。
なにか吹っ切れた気がした。しかし同時に思う。今から起こるであろうそのことをどうするかは私次第…。急に心が重くなる。
そのときーー。
チャイムの音が授業の始まりを告げた。それは私のそれまでの感情を区切り、あのときの俺と今の私は同じなのだと断言してくれてるように感じた。そして、私の悩みに終止符を打とうとしているのかのように感じた。
あのときから、、、いやそれ以前から、三年間聞いている音色だった。それはずっと変わっていない。
ふとおかしくなった。笑いそうになった。授業が始まったから堪えたけど。それでも私はおかしかった。
きっとまたさっきのような感情に戻ることがあるだろう。いや、絶対にそうなるに違いない。なぜなら、私はあのときから、あのとき以前からずっとそうなのだから。そこはずっと変わっていない。根本的なところは変わっていないのだ。
そして次の瞬間には教科書を開き、またいつも通りの日常が始まった。
もしあのときからいつも通りの基準が変わっていたにしろ、それは私にとってのいつも通りに違いなかった。
あのときの俺にとっても今の私にとってもいつも通りを生活してるのは変わらない。そしてこれからもきっとそうなのだ。
やはり今日の帰りに彼女に伝えよう。それが私の'いつも通り'を保つのにもっとも正しい方法だと、そのときの私は感じた。
窓には今にも芽が膨らみそうなつぼみをつけた桜が映っていた。その姿はあのとき見た、新緑の緑色に包まれた桜と重なって見えた。
ご覧頂きありがとうございます
一作目では全く話を続けることはできませんでした。
ここ数日で書いていたニ作目も文章が非常に読みづらいなと思いました。また、まだあまり続いていなかったのでせっかくなのでもっと文を分かりやすく書き直そうと思い、この作品を書きはじめました。
そのため、ニ作目の文の形を読みやすくして、書けるようにしています。
しかし、下手くそな文章はあまり変わらないので感想のところに悪いところなども書いてくれるとありがたいです。
次回からは本格的に物語がスタートします。




