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注目の理由
ある日突然、私は両腕を失った。
絵描きとして精進していて、結果を残す前に絶望へと堕とされた。
それでも私は諦めなかった。足を使って画材を準備し、筆を口に咥えて絵を描き続けた。
するとしだいに私の活動が世に知られていき、仕事の依頼が増えていった。
絵も飛ぶように売れる。テレビ局からの番組出演オファーもきた。
私はとても嬉しかったが、ふと考えてしまった。
これは腕を失ってもなお描き続けたからこその成果だ。
けど、絵が評価されているのは「上手さ」ではなく「ハンデを乗り越えて描いているから」ではないのか。
確かに今の作品も今の私の実力で書き上げたものだが、仮に同じ絵を腕で描いていたらどうなっていたのだろうか。
おそらく、ロクに評価もされていなかっただろう。
私は腕を失ったことよりも、作品に正当な評価がつけられなくなった人生に涙を流した。