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第十五話:さよならなんて言うなよ

う、かなり久しぶりにこの作品を投稿します。方向性が分からなくなってるのですよ……。

お袋は手を洗いに行ったまま、なかなか戻ってこなかった。まさかトイレでぶっ倒れてでもいるんじゃないだろうな。と思っていたら、

「お袋、遅かったな」

お袋の後ろに誰かの姿がある。一体誰だろう、それにお袋はどうしてあんなに強張った顔をしているのだろう。

「上総、あんたに会いたいっていう子がいるのよ」

「・・・・・誰?」

「きっとあんたも会いたいって思っていた子よ」

俺はその言葉に、ハッとする。俺が会いたいって思っている奴、それは

「浅葱!?」

お袋に続いて姿を見せた浅葱は、俺の大声にビクッと身を竦ませた。

「浅葱、」

「あ、あの、」

浅葱は泣きそうな顔で、入り口に立ち尽くしたままだ。なら俺から行くまでだ。お袋は黙っているので、ベッドから出ても問題はあるまい。

浅葱は俺の所作を見つめるだけだ。

「浅葱」

「あ、あの、蘇芳君、」

何か言いたいことがあっても言葉にならないのだろう。浅葱は何度も口を開閉させるが、言葉を出せずに泣きそうな顔になる。七ヶ月前と、全く変わっていない顔だ。

「・・・・・・ごめ、なさい」

謝罪の言葉が零れ落ち、そして白い頬を透明な雫が伝う。嗚咽に消える声。

「せ、で・・・・・僕のせい、で・・・・怪我、し、て」

「・・・今まで、何処にいたんだ?」

「・・・・そ、それは、」

「七ヶ月前のあの日、浅葱は何をしたんだ?俺、覚えてるんだ・・・あの、へんな男と光と、浅葱の泣いた顔」

「ほ、本当は、もっとちゃんと別れの挨拶をしたかったんだけど、」

違う。俺が言いたいのはそんなことじゃない。だから俺は浅葱の細腕を掴んでいた。浅葱が瞠目する。

「す、蘇芳君?」

「確かに別れ方もいきなりで有耶無耶な感じで終わったけど、俺が言いたいのはそんなことじゃない。浅葱がどうしてあんな形で姿を消さなきゃいけなかったか。俺はそれが知りたいんだ」

真っ直ぐに浅葱を見つめると、浅葱は居心地悪そうに身動ぎした。

「俺の前にまた立ってるってことは、何か言いたいことがあるんだろ?七ヶ月前のあの晩みたく」

「そ、それは」

浅葱の体は小刻みに震えている。寒いのか、それとも緊張しているのか。

緊張する理由は、何だ?

「俺には言えないことか?」

「す、蘇芳君・・・腕、痛いよ、」

「あ、わ、悪い、」

俺は知らず知らずの内に浅葱の腕を掴む手に力を入れすぎていたようだ。慌てて浅葱の腕を解放する。

「ごめんなさい、」

「浅葱、」

「でも、もう大丈夫だから」

「え?」

「絶対蘇芳君が怪我しないように、するから」

儚い笑みを浮かべる小さな顔。元々細かった体は更に痩せたように見える。疲れの浮いた黒目がちの瞳が哀しげにそっと伏せられる。

「・・・・・・・最後に、蘇芳君と話せて良かった」

「最後?」

その言葉に俺は激しく眉を寄せた。気配だけを感じ取ったのか、浅葱が身を硬くするが、前言を撤回する素振りは見せない。

「・・・・・・さよなら」

「は?」

「僕は今からこの街を離れるから・・・・・・もう絶対に足を踏み入れないから」

伏せていた目を、俺に向ける。

気弱な瞳の印象が強い浅葱だが、今の浅葱の眼光にはゆるぎない力が篭もっていた。

俺ですら息を呑んでしまうくらいの。

「もう会えなくなるけど、最後にちゃんと話せたからもう大丈夫」

何が大丈夫なんだ。

「これが、本当の、“さよなら”、だよ」

何ひとりで納得したような顔してるんだよ。俺にも分かり易く話せよ。

「意味が分かんねえよ、浅葱!ちゃんと説明しやがれっ」

「ダメだ、無理なんだ・・・・・蘇芳君には何も話せないんだ、」

「何で!俺じゃ力になれないってことなのか!?」

浅葱が哀しげな目をして、首を何度も左右に振る。

「・・・違う、僕はただ蘇芳君を巻き込みたくないだけなんだ。僕のせいで蘇芳君が傷付くのがいやなんだ」

浅葱がもどかしそうな口調で言う。それに比例して、俺ももどかしい気持ちになって来た。

伝わらない気持ち。どうしてこちらの心配が伝わらないのだろう。「良いか浅葱。俺はお前に傷つけられることはないよ」

「……えっ?」

俺は少しでも浅葱が安心出来るように、歯を出して笑って見せる。

浅葱の大きな目が歪み、

「お、おいっ」

いきなりしゃがみ込んでしまう。俺は慌てて浅葱の肩を掴む。

「どうして?」

「え?」

「僕のせいでそんな怪我したのに、どうして……どうして僕なんかに笑いかけてくれるの?どうして?」

浅葱の慟哭が胸に響いて凝り固まる。

俺は我知らず浅葱を自分の腕で抱き締めていた。

「すっ、蘇芳くんっ?」

「泣くな」

「……っ、」

「もう泣くな。泣きすぎで干からびるぞ」

こんなときに気のきいた台詞が言えない自分が情けない。

「すお……っ、」

「だって親友だろ?俺たち」

腕の中、浅葱の痩せ細った体がビクッと震える。

「しん、ゆう」

「大事な親友が泣いてるんだ。慰めて何が悪い。安心させようとして何が悪いっつうんだ」



俺の言葉が届いたのか、浅葱は声を上げて泣き始めた。

「うわぁ、うわあああぁっ」

この細い背中に何を背負っているのかを考えるだけで感じたことのない胸の痛みに襲われる。

「俺なら大丈夫だから、な?」

浅葱が必死に首を縦に振る。

「だから、さよならなんて言うなよ。言わないでくれ」

性格はかなり違うのに、最初は全く感情の見せない浅葱に不気味さすら感じていたのに。

今では、こんなにも大切に思っている。

そしてそれは浅葱にも伝わったと俺は思っていた。

でも、当事者の俺と浅葱を置いて事態は急速に動いていた。

2009年9月12日、完結設定にしました(汗)

どうにもこの作品に関してスランプに陥ってしまい、続きがいつになるか分からないためです……。

2ヶ月放置すると、すぐ赤文字で放置アピールされるんで、なんかなぁ…と思い、完結設定に。

また話の筋がまとまりましたら連載再開いたします。半端、すみません…(汗)

国府神紫音

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