オーロラの声
ハジメが地球の中心部に到達してから25億年後
解けていた自我が微かに結びついてきた。暖かい感覚と脈打つ鼓動、大いなる息吹や流れを感じながら、その意識はより確かなものになっていく。
長い年月で染み出た自らを呼び戻すように、少しづつ体の芯へとエネルギーが流れてくる。
「こ...ここは?」
白い世界の中でもハジメはかろうじて生きていた。そして思い出した。自分の名前やここに到るまでの過程を。再び目覚めた悲しみに暮れる一方、早くも外の世界に期待を寄せていた。
「外は、外は一体どう立っているんだ。早く外に出たい。」
生暖かい白い海を力一杯かき分けた。体のすべての細胞の表と裏を返すように意識を集中させると次第に力が蘇ってきた。徐々に流体の抵抗がなくなっていく。
ハジメはこれまでに無い速さで上へ上へと登る。
「もう少し、もう少しだ!!」
やがて周りは闇に包まれた。温度の低い物質の中へと到達したのだ。
次の瞬間、開放感とともに光がハジメを包み込む。
こうして25億年たって再び地表に這い出てきた。
腹一杯に空気を吸い込む。
ー「はあぁ、こんなのはいつぶりだろう。あの世界にいたときは当たり前にあったんだ。」
頭上には青い空が広がっており、足元には波が押し寄せる。
ゴツゴツとした岩肌を歩きながら潮風の匂いに涙した。
ミオ「ハジメが目覚めたのを感じる。」
キリク「...!」
キリク「彼らは。」
ミオ「すでに集まっているわ。」
水平線を見つめるハジメ。寄せては返す波で体についた鉄の塊がドサリ、ドサリと落ちていく。
「一体どうして、俺はこんなところに来てしまったんだ。」
「何か大切な役目があったのかっ!そうなのかっ!」
「おい!誰か!応えてくれよ!」
「.....」
"オオオォオォォオォォォオオオ"
薄気味悪い重低音が空に響く。音はまるで、語りかけるように少しづつ変わりながら、パターンを繰り返す。
ハジメは驚き慌てて周りを見渡し、やがてその主が頭上に広がる七色のオーロラであることに気づく。
まばゆい光を放つそのオーロラは中心からいくつかの筋を揺らしながら、低く落ち着いた恐ろしい声でハジメに語りかけた。
声「...メ、..ハジメ」
ハジメ「ハジメ?ハジメ、もしかしてオレはそういう名前だったか。」
ハジメ「これは一体なんだ!俺はどうしてこんな所にいるんだ!」
声「ハジメ様、貴方はご自分で決められた。今はお分かりにならないかもしれませんが...」
声「これ...これはあなたがいた時代よりもずっと、ずっと先のことで、そこであなたは決断なさった。」
ハジメ「決断?」
声「これが、あなた様の運命なのです。」
声「もう話せる時間も長くありません。ハジメ..ま...メさま...」
そう言うとオーロラは吹き飛ぶように消えていった。
新たな登場人物が二人加わりました。