不動の男
結構遅れました。
ぜひぜひ見て行ってください。
「ジェ...ジェス...」
普段おとなしいジェスが大人の男を軽々しく殺したことにリュートは驚きを隠せなかった。
リュートは目を横にやる。どうやらサラは気絶していたらしい。リュートは少しホッとした。
「ば...化け物めぇえええ!!!」
雄たけびとともに頭を貫かれた兵士のそばにいた兵士が腰に差していた剣を抜き、ジェスに振りかざす。
ガキィン!と金属音が鳴り、刀身の先が飛ぶ。
「ウッ...」少し目に傷が入ったがそれ以上の傷はない。
「な、なんなんだいったい...ちくしょぉおおおおお」
剣を振りかざした兵士が落ちていた銃を拾い、ジェスに向ける。途端に、ジェスの目が殺気に満ちる。
兵士が引き金に指を当てると同時に兵士の首も飛ぶ。
しばらく気を失っていたリュート。
目を開けると、腕が動かせないことに気づく。縄で縛られているみたいだ。
周りに目を配ると。気を失い竜化も解けているジェスが縄で縛られている。サラも恐らくどこかにいるのだろう。近くには見当たらない。
どうやらリュート達はあのまま人間に捕まったのだろう。
今は乗り物の荷台か何かに乗せられているのだろう。ガタゴト山の斜面を走っている。
「なんだ、起きたのか...」
低い声で横から話しかけられた。目をやると、そこには屈強な体をした男が一人。腕を組み、胡坐をかいて座っていた。
「...あの...僕たちはどこに連れていかれるんですか...」
恐る恐る聞いてみた。男は数秒黙り込み。
「竜人族が連れていかれるのは、まぁ、研究所か物好きな富豪が集うオークション会場だろうよ...あぁ、オークションは分からないか、まぁ物として売られるってことだ」
それを聞いたリュートはゾッとした。自分の事ではなく、竜人族であるジェスとサラだ。それかほかに捕まってしまったかもしれないリューアラナイトの皆のことも。
「怖いか...?」
男が話しかけてきた。
「竜人化とやらで逃げないのか?こんな縄子供のお前でも引きちぎれるだろう。」
リュートは少し考え、「ぼ、僕は...竜人族ではないので竜人化はできません...」
「そうか...」男はそれを最後に話しかけて来なかった。
丸三日はたっただろうか、お腹がすいてきた。
ジェスは丸三日気絶している。恐らく竜人化の影響だろう。
横の男もあれから一切動いていない。微かな記憶では兵士の一人が食事を運んできていたが、男は受け取らなかった。
ついに、乗り物が止まった。あの夜から5日たったか、リュートは意識が朦朧としていた。男も腕を組み、胡坐をかき、ずっと動いていない。
兵士の一人が「隊長!第一休憩所につきました!」
隊長と呼ばれた男が「そうか」と、一言発し、立ち上がろうとする。5日間飲まず食わずなのに足元が全くぐらつかない。
「隊長、いいかげん食事をとってください。死んじゃいますよ!」
「俺が食事をとるのならあの子供達にもだ。5日も食ってない、ほっておくと死ぬぞ。」
「それは隊長も同じです!分かりました、あの子供たちにも食べ物を与えます。なので隊長も食事を...」
もう聞こえない位置にまで行ってしまった。
これからどうなってしまうのか、サラは無事なのか薄れていく意識の中、リュートは思った。
読んでくれてありがとうございます。
続きは思いつき次第書いていきます。