秋
書いたので一応投稿します。
でもこんな文を書くような時期じゃないよね。まだ。
崩れかけの荒屋の庭先にひっそり佇んでいる柿の古木が色付き、その実が人知らず色付いた。
叢に巣く虫の音や白い風に吹かれた芒の葉擦れが耳を擽る。
黄金に輝いていた田の稲は刈られ稲架に架けられ風に穂先が揺れている。
刈られた稲の株には黄ばんだ葉の稲孫が伸び始めた。
畦には鬼火の行列のように曼珠沙華が紅に燃えている。
萩の花は疾うに散った。
山の木々も葉を落とし始め椛の紅い葉がひらひらと舞い落ち、じきに山で緑は松の木のみとなるだろう。
紫の木通は猿に喰われ無惨に果皮を地に散らし朽ちるのを待つのみとなり、落ちた栗の実を照らす天高く照る月は冷ややかに明るい。
枯れた風が木々を揺する葉擦れの音と共に天の雲が緩やかに流れ月を隠した。
しくしくと骨を刺すような肌寒さが何故か今は心地よく思える。