firework
「俺が、武島と誰かの言い争い、
いや口論と言うべきかな?。
俺が聞いたのは男の声が2人。
一人は武島。もう一人が誰かわからなかったんだ。
ごめん...,
家を出たのは夜八時ぐらいだと思う。
だから公園に着いたのは八時二十分くらいだったと思う。携帯で確認したから、多分...。」
武島の死亡推定時刻は8時30分くらいだった。
川口の目撃証言に間違った事はなかった。
川口はさらに次の真実を喋ろうとしたので、上智は一回遮った。
1個1個の真実を頭の中で整理したかったのだ。
「なるほどな。
でもお前の家は光創公園まで、5分も掛からないだろ?
なんで、20分なんだ?
その間何をしていたんだ?」
空白の20分間。
武島はこの間に誰かと落ち合い、言い争いをしていたのだろうか?
脳裏に勝手な推理が過ぎった。
川口は何をしていたのだろうか?
答えは焦らずとも次の一言で得ることができる。
「何って...散歩だよ。
暇だったからさ。」
散歩か...と上智はため息をついた。
「悪ぃ、今日はちょっと用事があるんだ。
そろそろ帰っていいか?」
川口が申し訳なさそうな目でこっちを見てきた。
「あ、ああ。ゴメンな。無理に付き合わせて」
「いや、こっちこそ力になれたらいいんだけど...
何か分かったら俺にも教えろよ!
俺も犯人を絶対に許さない」
「ああ、俺も許さない。
約束する。」
「んじゃ。また明日な!」
「ああ、またな!」
川口は自転車にまたがり、帰っていった。
少なくとも川口の証言で分かったこと。
それは武島を突き落としたのは男であり、年齢は不明。
これだけの情報だったが、無いよりましな情報だった。
木々が、風に揺られオレンジ色で塗りたぐっているかのような空になっていた。
上智も自転車にまたがり帰ることにした。
その夜、いろんな事を考た。
だが、事実上何も浮かばなかった。
「何か引っかかってる。
何かおかしいんだ。
今回の事件...」
調べなければいけないことがある。
何故か、強くそう思った。
明日は部活動自体休みだ。
花火大会といった地域行事があり、
昼間っから屋台などが開くからだ。
まともな理由ではないが、校長が全部をその日、休みにすると言い出したので、その方針にしたのだった。
調べなければいけないことがある。
改めてそう思い、拳を強く固めた。
すると、ピロリンと携帯の着信音が鳴った。
その内容に上智は驚きを隠せなかった。
「そうか...そういうことだったのか...
でも、なんで?」
上智はベットから起きて椅子に座った。
寝る前に一仕事できたみたいだった。
次の日...
遅めに目が覚めた上智は、やる事を済ませ、椅子に深く座り込んだ。
今日は手順通り進めるだけだ。
だが、その反面進めたくない。
という思いもあった。
「さて、最終調整だ。」
上智は一言小さな声でそう言うと、
電話機に向かった。
「あ、もしもし上智ですが、・・・・・・・」
カチャ。受話器の置く音が静寂な部屋の中に響いた。
「後は、夜を待つだけだな...」
上智は一言そう言うと自分の部屋に向かっていった。
そこから何時間たったろうか?
時計は午後7時を指していた。
「そろそろ行くか...」
上智は悲しそうな怒ってそうな
何か複雑な顔をして、家を後にした。
「ああ、ごめん待たせたか?」
空は微妙に薄暗く、音もあまり、無かった。
「いや、俺も今来たばっかりだよ。
それより、なんで俺なんだ?」
「皆都合が悪かったからな。
無理に付きあわせっちゃたか?」
「俺は、暇だったし構わないよ。」
「そうか、ありがとう。」
上智と待ち合わせていたのは川口だった。
待ち合わせ場所は学校のテニスコート付近。
「いやぁー、びっくりしたよ!
朝方いきなり、電話が鳴ったかと思えばおまえからでさぁ!
なまったらいけないからテニスしないか?なんて言われたから!
もう一度確認するけど、本当に俺みたいな下手なやつでいいのか?」
川口が意気込んで聞いてきた。
川口には申し訳なかったが、確かめなければならない事があった。
「ああ。いいんだ。川口じゃないとダメなんだ。」
胸がバクバクする。
「俺じゃなきゃダメなこと?」
川口が不思議そうなしぐさをして、こういいかけてきた。
「とりあえずどっか座ろうぜ。
どうもやることはテニスじゃないんだろ?」
察しが早い。
「ああ、だな。」
上智たちは歩いて、椅子が設置してある場所まで、移動した。
そしてゆっくり腰を下ろした。
暫く沈黙状態が続いたが、その沈黙の中で、上智が口を開いた。
「話があるんだ」
「話?」
「ああ、大事な...とても大事な話だ」
「どうしたんだよ?いきなり、堅苦しくなってさぁ。
肩の力ぬこうぜ。」
川口が笑ってその場の雰囲気を必死に崩そうとした。
だが、静寂な空気がそれを許さなかった。
「何か引っかかってたんだ。武島が死んだ事に...」
「引っかかってるって...。
あいつは自殺なんだぞ?
引っかかっる事なんて何もないじゃないか。
自分で池に落ちて自殺した。
ただ、それだけの事だろ?」
「違うんだ...何かずっと引っかかってた。
昨日の夜ようやくその疑問が解決したんだ。」
何故、こんなことを話さなければいけないのか?
「なんなんだよ?解決した事って?」
「もともと、おかしかったんだ。
武島のやつが自殺だなんて。
お前の証言だと、男が2人...
武島と誰かが口論していた。」
「ああ、そうだよ。」
「では、その武島と口論していた相手は誰か?
そう、武島を池に突き落とした犯人だろう。」
「だから、その犯人を調べる。」
「ああ、そうだ。
だか、違うんだ。
分かったんだよ。犯人が...」
ゴクリ。唾を飲み込む音がした。
「...お前なんだろ?川口?」
「・・・は?おい、冗談はやめろって。
俺は、あの日の夜散歩してたんだぞ?」
「目撃者は?」
「...」
「いないんだろ?そうした場合お前にも、武島を池に落とせることが可能だったって事だ。」
「は?意味わかんねぇし。
俺、以外にも落とせるやつなんていくらでもいるだろう?
そもそも証拠だよ。
証拠だせよ。」
「あの日の夜は何だったか分かるか?」
「は?知るかよ。武島が死んだんだろ?」
「昨日の夜、中井から連絡があったんだ」
「中井から?」
「ああ、俺が事件当日の夜。
何してったって?聞いたら、今日の祭りの準備だったって。」
「だからなんなんだよ?」
上智は川口の言葉を無視して続けた。
「中井の話じゃ、あの日は中井の地区とお前の川口の地区が準備担当地区だったと聞いた。
だが、あの日、あの夜に川口お前は来なかったと聞いている。
中井はお前の母にあったからなんで、来てないか聞いたらしい。
そしたらあの子、えらいし、熱があったから休ませてるって聞いたらしい。」
「...」
「ここがおかしかったんだ。
お前は熱が出て、家にいたはず。」
「ああ、そうだよ。だから俺に武島を殺すなんてできな...あっ!」
「気づいたか?矛盾してたんだよな。
お前は熱があって外に出られない筈なのに、外で、散歩をしていた?
おかしいんだよ。」
「...散歩しちゃ悪いか?外にでたら気分転換出来ると思って。」
「病人が三十分近く外にいて、散歩してんのか?ありえない。」
「歩けるんだよ!」
「病人じゃなかったからだろう?」
「...!」
「ここから先は俺の推理だ。
お前はこの日何らかの方法で親を騙し、熱があるように見せた。
そして、準備を休んだ。
家族が完璧に家を出たのを見計らうと武島に携帯で、光創公園にくるように言った。
適当な理由をつけてな。
そして、武島はお前に突き落とされたんだ。
お前は目撃者なんかじゃない。
犯人なんだ。
違うか?」
間が空いた。どんよりとした空気が
包む。
「...憎かったんだよ。憎かったんだ。
アイツが。
俺は昔、小学校で何もかも一番だった。
勉強も一番。運動も一番。
トップだったんだ。
ところが小4くらいの時に武島が急にトップに躍り出たんだ。
勉強も運動も。
そして、俺の好きな人と親しくなりはじめたんだ。
悔しかったんだよ。
だが、その俺の好きな人は死んだ。
武島もあの頃からだったよな?
性格が別人になったのは。
クラスでは、ある噂が立っていた。
武島が、殺したって...。
アイツが池に突き落としたんだって。」
「まさか、その場所って...」
「そうだよ。光創公園だよ。
俺は、許せなかったんだ。
武島が殺したと聞いた日から。」
「...聞いた?お前の知ってる武島はそんなやつだったのか?」
「...」
川口はその場に泣き崩れた。
「お前が、武島に対してどんな重罪を働いたか分かってる筈だ。
そして、同時に大切な仲間を失った事を後悔してるんじゃないのか?
もし、その気持ちがあるならば、自首する事を進めるよ。」
上智はそれだけ言うと泣き崩れている川口を後にその場を去った。
こんな事実を告白しなければいけない自分を呪った。
空には花火がうち上がっていた。
夜空に凛と咲く花火。
咲き誇ったら儚く散っていく...。
すれ違いに起こった事件。
始まりは2人の思いのすれ違いだった。
ふと夜空を見上げるとまた、花火が上がっていた。
「綺麗だ...綺麗だよな武島」
END
すれ違いを最後まで、読んでいただきありがとうございました!。
上智を中心とする学生物語いかがでしたでしょうか?
これからもよろしくお願いいたします!




