【短編】ロリ神様を連れて異世界に行く話のプロローグ【検索除外】
それは突然の出来事で、俺に抗うすべなんかなかった。まるで白昼夢でも見せられているかのように――――俺の身体は、アスファルトを離れてみょんみょんと空へと吸い込まれていった――――
突然だけど、今の俺の状況を簡単に説明させてほしい。
俺はごく普通の男子高校生、夏村散暇。
父さんと母さんが暇散らしでまぐわったら偶然ヒットしちゃったから『散暇』という名前を付けられたという悲しすぎる過去がある以外は、いたって普通の男の子だ。もう十八にもなるのに〝男の子〟と名乗れる年齢かどうかは、議論の余地があるかもしれない。でも俺の中では成人してないからセーフ。
ある暑い夏の日。
学校からの帰り道、突然頭上に現れてた謎の魔法陣にキャトルミューティレーションされて天に昇り、気が付いたら目の前に神様がいた。やたらちっこい、いわゆる『のじゃロリ』だ。
で、のじゃのじゃうるさい神様が言うには、俺は異世界を救う勇者の一人に選ばれたんだとか。悪い魔王を倒しに行くんだとか。
俺の灰色の脳細胞が告げている。これは、異世界転移ものだ。ネット小説でよく読むぞ。ついに俺にも出番が来たか。なんだか現実逃避したい気分だったので、そんな考えがすぐに出てきた。実際、当たってた。
しかし、そこで一つ疑問が湧く。勇者の『一人』ってどういうことでしょう。俺以外にも勇者が居るんだろうか。むしろそっちが本命なのだろうか。俺は成り上がりとかしなくちゃいけないんだろうか。やだ、主人公っぽい。
神様が言うには、異世界を救うためには人手がいるじゃろう? ということだった。
用意された勇者の数は……九人。その最後の一人として、俺は神様に強制拉致されていた……。
理解できる? ついてきてる? 俺は大丈夫、なんとか整理完了。
……オーケー、じゃあ、以下本編だ。
どんなに目を凝らしても地平線すら見えない真っ白な世界の中には、俺とのじゃロリが二人っきり。
俺はのじゃロリ……もとい神様が言ったことを、思わず聞き返した。
「……は? 九人?」
多くないですか神様。勇者そんなに居るんですか。ぶっちゃけそれ俺いりますか。そもそも勇者というのは個の質によって、軍の量を凌ぐ圧倒的強者を示す言葉のはずだ。それが九人とか、なんで数に頼ってんだ。魔王涙目すぎる。
「うむ。九人じゃ。今回は人間達も張り切っているようでの。各国ごとにやたら勇者召喚の要請が多くて、困った物なのじゃ」
「勇者召喚って、そんな国ごとに勝手にやるようなもんなの……? もっと計画性もってやれよ。あるいは神様なんか言ってやれよ」
「まあ、勇者が多い分には構わんじゃろ。それだけ要請が出来ると言うことは、人間達の力が強まっている証拠じゃ。妾としても都合が良い。早く魔王を倒して、世界の秩序を取り戻してほしいしの」
「むむむ……そんなもんか……いやでも九人って……」
早ければなんでもいいのか。何やってもいいのか。それ絶対勇者の間で揉めるからな。手柄問題とか超深刻だからな。
神様は渋い顔をする俺を無視して、空中に何やらホログラム映像みたいなのを投影する。謎パワーに驚くべきところだったのだろうが、渋い顔の限界に挑戦していた俺はその波に乗り遅れてしまった。反応がなくてちょっと寂しそうな顔をするロリっ娘に心が痛んだので、最高に渋い顔で微笑んでやった。最近ハードボイルドな映画を見た影響である。これには神様もにっこりだろう。
実際、俺の取り柄なんて顔くらいなものだ。元カノにも、『あなたって顔だけは悪くないわよね』って褒められた。あれ? それ顔以外は全部悪いってことじゃね。なにそれ酷い。
「ど、どこか痛いのかの?」
「心配されちゃったよ!」
うっ、俺にはまだハードボイルドは早かったのか……。無念。
心の痛みに耐えながらホログラムを見ると、八人の日本人が三分の一スケールくらいで立っていた。男と女が四人ずつ。
「お主以外の勇者じゃよ」
とりあえず、女の子は可愛い……んじゃないかな。なぜかギャルゲ―のモブキャラみたいに顔が無いけど、スタイルは良い感じ。
「なんで顔が無いん?」
「本人の許可を取って無かったことを思い出したのじゃ。肖像権的なあれなのじゃ」
「神様みみっちいな」
女の子は皆スカートを穿いていたので下から覗こうと思ったが、神様にジト目で睨まれてしまった。しかし構わない。男なら、やらなきゃならない時がある。思いっきり寝そべってホログラムを下からガン見する。
「……真っ暗だ」
「CEROで言うと全年齢対象、Aじゃからな。パンツなど見えぬが」
「ちくしょう騙された!」
「お主……馬鹿じゃの」
地に突っ伏して白い床を叩く俺を見て、神様は呆れ顔だ。
……って、あれ。そういえば。
「なんで、日本人しかいないの?」
「お主の世界では、人間とのコンタクトが非常に困難になっておっての。相手が【こんなことあるはずがない】と思い込んでしまっては接触自体がうまくいかんのじゃ」
「接触って、あの俺をキャトった魔法陣のことか」
いきなり頭上から現れて、みょんみょんと俺を空へ引っ張り上げたあの。
「うむ。そもそもあの方法でこの空間に連れてくることができる者自体が非常に少なかったのじゃ。その中でさらに勇者の適正を持つ者というと、の……」
しょぼくれる神様。なんかちょっと心が痛い。見た目は完璧にロリなので、可哀そうになって来る。
「いきなり妾が現れても、【……まさか、こんなことって本当にあるんだなぁ】なんて能天気に思えるのは、お主ら日本人くらいじゃった。勇者の適正を持つものも多かったしの。褒めてつかわすぞ!」
あ、はい。昨今の異世界モノの影響ですかね。褒められてもなんか釈然としねぇ。そしてまず自分がそうだったことについて、深い羞恥を感じる。まあ確かに、なんか非現実的なことが起こったらいいのになぁとは常々妄想してたけれども。穴があったら入りたい。
「穴か……全く、これだから童貞は」
「っおう?」
いやその返しはおかしい。いきなりナニぶっこんでんだ。
発想が中学生並みか。あんた本当に神なのか。いやしかし、現に今俺の思考を読んだ。ならば神か。流石神だ。俺の灰色の脳細胞が0.02秒の速さで答えを導き出した。優秀!
「いかにも、神なのじゃ。ただ神というものは、相対する者のイメージに左右されるからの。妾がこんなちんちくりんで、え、えろえろなのも、全てお主のせいじゃ」
衝撃の事実。俺、ロリコンだったのか。
いやそんなはずは……
「まあ、嘘じゃが」
「なんでそんな無駄な嘘つくんだよ!?」
神様は無駄に嘘つきだった。信用ならない。しかもえろえろって言う時ちょっと照れてた。そういうの、いけないと思います。無駄に嘘をついた上に恥ずかしがるとか、なんて非生産的の極み。
これはきっと、勇者うんぬんも嘘に違いない。俺は実家に帰らせてもらいます!
……。
…………。
ん?
そういえばここ、どこだ?
がくっ、と神様がずっこけた。それは見事なずっこけっぷりで、白いワンピースが良い感じにめくれ上がって、シンプルな純白に包まれた小ぶりなお尻が見える。この神様は芸の神様なのだろうか。
別に俺はロリコンじゃないけど、お尻に罪は無い。お尻はただそこに有るだけなのだ。いわば、空気。お尻は空気! だからこうやって触っているのもむしろ自然なことぶへっ!?
「な、な、なにをするのじゃー!?」
「いや、折角だし、触っとこうかと思って」
「何が折角なのじゃ!? 意味が分からんのじゃ!」
「人間じゃなければ、女の子のお尻を触ってもどこにも怒られないじゃん」
「妾が怒るのじゃよ!? このヘンタイ!」
それからしばらく神様が怒って、山が割れたり海が割れたり谷が割れたりした。最初から割れているのはどーれだ。答えは、お尻です。しかし、触り心地良かったなぁ。けっしてロリコンじゃないけど。
とかどうでもいいことを考えながら、ガミガミとしたお説教を聞き流すこと数十分。肩で息をする神様は、本来の目的を思い出したのか、こほんと咳払いをすると穏やかな口調に戻って俺に語りかけてきた。
「ここは、妾の創った神聖なる空間じゃ。どこの世界からも隔離された、いわばプライベートスペースじゃな」
「つまり、神様の自室みたいな」
「まあ殺風景じゃが、そうとも言えるかもしれんのじゃ」
「俺……女の子の部屋に入ったの初めて……。なんか、良い匂いがするんだね」
「いきなりなんのアピールじゃよ!?」
「いや、女の子の部屋に入ったらこれはやっとかないとなって。ほら、付きあった彼女が『これ……ファーストキスだから』っていうような感じで、とりあえず初めてって言っとけばいいんじゃね的な。それにしてもあいつら、ファーストの意味理解してんのかね。セカンドもサードもファーストになんなら、内野の左側ガラ空きよ?」
なんならピッチャーキャッチャー含めて全員ファーストに押し掛けるレベル。ふざけんな。俺の純情とファーストキスを返せ。
「いや……そんな死んだ目で言われてもの……。というか、結局意味分からんのじゃ」
「お子様にはまだ早いか」
「お子様じゃないのじゃ! 神様なのじゃー!」
迂闊な発言によってまた神様が説教モードに入りそうだ。流石にもう聞き流すネタも尽きたし、何よりずっとここに居るのも飽きたので、話を進めることにする。
「あーはいはい神様神様、世界一可愛いよ。……それで、何。勇者だなんだと俺を呼び出した世界一可愛いよちゃんだけど、結局俺はなにをすればいいの? 世界一可愛いよちゃんの世界一の可愛さを異世界に広めてくればいいの? 任せろ得意だ」
「……せ、せかいいち……?」
上目遣いで聞いてくる神様。なにこれ可愛い。そしてチョロそうな臭いがぷんぷんする。
「うん、可愛い可愛い」
「……お、お主、実は結構良い奴じゃな……にへへ」
そのまま神様が痴態を晒して身悶えること数分。なにこれ正直きもい。本当に神なのか。頭のおかしいドラッガーじゃねぇのか。
「って、ハッ! 違う、そうじゃないのじゃ! 妾の名前はその、せ、世界一もにゃもにゃ……じゃなくて、アーデルリフィケイティカというのじゃ!」
「いや別に俺、名前聞いたんじゃないんだけど」
ていうか長いし言いにくいい。アーデルリフィケイティカ。神様でいいよ。
「……な、名乗ったからにはちゃんと名前で呼んでほしいのじゃ」
「え゛え゛ぇ゛……」
「そこまで嫌なのじゃ!?」
いかん、神様が涙目だ。
というか、本当に話が進まなくなりそうなのでふざけるのも大概にしておこう。この神様反応がいちいち面白すぎる。
「ごめんごめん。冗談だよアーデルリフィケイティカ」
「……ん。許すのじゃ。ついでに、妾のことはリフィと呼ぶことを許可してやるのじゃ」
「あ、どうやって略すのかと思ったらそこ取るのね。わかったよ、リフィ」
「うむ、くるしゅうないのじゃ。――で、お主にやってほしい事じゃったの。まず最初に言っておくが、この空間に入った時点でお主に拒否権は無い。お主は勇者となって、異世界『ワンダーテイル』に行かなくてはならぬ」
それはまた、随分と横暴なこって。でも横暴ロリって属性的には嫌いじゃないな。最終的に屈服させて、首輪付けるまでが1セット。
「……ん。了解」
「なんじゃ、えらいあっさりじゃな。妾が言うことではないが」
「いや、まあ、それも良いかなって。……俺、親に捨てられて児童養護施設の育ちだからさ。施設の人とも、あんまり話さなかったし。友達いないし。彼女とは別れたし。最近、餌やってた野良ネコまでどっか行っちまうし」
猫は自分の死期を悟ると、姿を消すと言う。
……きっとエリザベスはもう……
いやよそう。悲しくなるだけだ。男なら上を向いて、ぐっとこらえるんだ。頑張れ俺。しかし涙って、どんくらい上向いてれば蒸発するんだろう。ドライアイになっちゃう。
「……異世界、楽しいといいのぅ」
「同情するならチートをくれ」
いついかなる時もハッピーになれる魔法とか。あれ、なにそれすげぇ副作用とかヤバそう。
「むぅ、チート……チートか。それは、お主が何の勇者になるかにかかっておるのじゃ」
「何の勇者って……どゆこと。勇者ってなにかしら司るものなの?」
「まあそうじゃな。『固有武装』として、剣とか槍とか弓とか盾とか司るものじゃの。その方が力を付与しやすいし、それにほれ、妾達のような神々が覚えやすいじゃろ?」
驚きの理由。爺さん婆さんだからボケてんのか。
「あァ!?」
「……さーせん」
「……こほん。まあ、よいのじゃ。さぁて、何の勇者がいいかのー?」
「まぁなんか、いい感じにオススメなの頼むわ」
というか何があるかも分からないんだが。
「じゃあこれじゃな。じゃじゃーん、ゼウスん家のトイレ用ブラシ~」
「返してきなさい」
なんてもん効果音付きで出してんだ。
ていうかなんでオススメっていってそれになるんだ。
「いやこれ、最強じゃよ? チートじゃよ? この世の全ての汚れを浄化できるのじゃ。ほれ、ほれほれ!」
やめろ。やめてください。その汚ならしいブツを俺の顔に近づけるな。
いくら神様のでも、生理的に無理だよ。いくらすごかろうと、トイレ用だもん。
そんなのの勇者になってみろ、そんでまかり間違って向こうで歴史書なんかにのってみろ。
誰っ一人得しないから。トイレ用ブラシの勇者とか真面目に編集するやつらのことも考えてやれよ。
可哀想だろ。いや主に可哀想なのは俺だけどさ。
「ありじゃな」
なしだよ馬鹿。
「じゃあ、お主は何がいいのじゃ。妾はオススメと言われたからトイレブラシを出したのじゃぞ?」
「リフィの感性がおかしいということがわかった」
「むぅ……いいのになあ、コレ……」
流石は神だ。人間には早すぎる。
リフィはブラシをぽいっと放る。床に落ちた瞬間、ふっと掻き消えるブラシ。おお、ファンタスティック。
「何か持っていきたいものでもいいから、言ってみるのじゃ。最強の剣とか、最強の盾とか」
持っていきたいものか……スタンダードに考えるなら、勇者といえば剣のイメージがある。が、しばし待ってほしい。安易な考えで自らのチートを決めてしまって本当にいいのだろうか。
例を一つ出そう。仮にここで俺が、『戦車を持っていきたい』と言ったとする。それも特別グレートなやつだ。剣と戦車と、どちらが強いかと言われればまあ戦車だろう。馬鹿でもわかる。俺でもわかる。そもそも比較するようなものでも無いとも言う。実際は使用するシチュエーションとか、そもそも俺が戦車なんて扱える訳ねぇだろとかいろいろな問題があるが、戦車があれば異世界の戦場はいろいろ捗ること間違いなしだろう。
とにかく俺が言いたいのは、勇者イコール剣とか、そういう安易なイメージは選択肢を狭めるということだ。自由な発想が大事だ。メガ粒子砲とかもありかもしれない。世界観大丈夫だろうか。
なんなら武器じゃなくても構わないというのは、さっきのトイレブラシで確信している。ならば……。
「そうだな……異世界……異世界か。あっ」
「なんじゃ、何か浮かんだかの?」
「リフィ」
「却下」
「三行」
「妾は
神だから
物理的に無理」
「把握」
……いや把握じゃねぇよ。物理的にも何も無いだろ。むしろお前物理法則とかガン無視出来る存在だろ。そしてなぜこのネタが通じる。
「いやぁ、照れるのぅ。まさかお主が、そこまで妾の事を好いておったとは……」
再び身をくねらせていやいやするリフィ。その目はちらちらと俺を見ている。
「くっ。神様を持っていけたらいろいろ便利だと思ったのに……あ、リフィさん世界一可愛いです」
殺気を感じたので、台詞の軌道修正も忘れない。完璧だ。
この神様はとりあえず褒めとけば何とかなりそうな雰囲気がびんびんする。まるで俺の元カノのようだ。……まあ、あいつは表面上では機嫌直しても、裏ではねちねちと根に持つタイプだったけど。ホントに、別れ際にプリンの話とか持ち出さないでほしい。
「よっ、神様! リフィさんの可愛さで世界がヤバい! 全方位愛され系スーパー美少女!」
「にゅむふふ……そ、そうじゃろそうじゃろ! ……おほん。し、仕方ないのぅ。そこまで言われてしまってはこちらもそれなりの態度を取らねばならんのじゃ。せ、世界一可愛い妾が欲しくて辛抱堪らんとは、まったく、妾も罪な女じゃのう……。本当はあんまりやっちゃいけないんじゃけど、よしわかった。お主の願い、聞きとどけようぞ!」
「……え、まじで!?」
神様ちょろすぎだろ! なんかちらちらしてるからもしかしてとは思ってたけど!
えぇ……つか、本当に神様もらえんの? いいの? 物理法則超えちゃうの? 光が中空で180度折り返して戻ってくんの? 衝撃だわ。
むっふっふ……これはもう異世界攻略済みといってもいいな。やったね、まさにチートだよ! 他の勇者どもとか相手にならねーわー。いっちょ異世界行って、鼻で笑ってきてやりますか。ぷふー、お前のチートだっせぇ! 想像するだけでユカイツーカイ。ふはははは。
「じゃ、じゃあそんな訳でお主……夏村散暇は今から、『アーデルリフィケイティカを司る勇者』じゃ! よ、よろしくの?」
「ああ! よろしくな、リフィ!」
待ってろ、バラ色の異世界生活!
まずはリフィにでっかい家を立てて貰って、美味しい食べ物と快適に眠れるベッドを用意して貰って、毎日食っちゃ寝して偶に外にでて異世界観光をして、んで気が向いたらリフィに魔王倒してもらおう。
うむ、完璧だ。我ながら自分の頭の冴えが恐ろしい。
「じゃ、じゃあサンカ! 妾の手を握るのじゃ!」
「仰せのままに、マイプリンセス」
「にゅっ……うぅ。サンカの、ばか」
ははは、赤くなる君も素敵さベイベー。
「しかしサンカ……本当に妾なんかで良かったのかの?」
上目遣いで尋ねてくるリフィ。
大きな翡翠の瞳は、星屑を散りばめたような輝きを放っていて、なるほど確かに神様だ。でなければこれほどまでの美は生まれ得ないだろう。
「何言ってんだリフィ……俺は、お前じゃなきゃ駄目なんだよ」
嘘は言って無い。断じて。
「はぅう……」
そっと頬に手を添えると、リフィは俯いてサラサラと流れる金髪に顔を隠してしまう。金髪ストレートロングとかむしろ狙いすぎな気もするが、鉄板に可愛いので許す。
そして同時に、俺達の周囲からはキラキラとした青い光が漂い始めていた。少女漫画的演出だ。いや、違う。足元にはどっかで見たような魔法陣。
「……ありがとうなのじゃ、サンカ。妾、頑張るからの!」
「おう! 頑張ってくれ! 色々とな!」
「下界に降りるために神力を全て失って、ただの人間の少女程度まで能力を制限されてしまうが、頑張るからの!」
「おう! がんば……、あれ?」
おう、ちょっと待て。セイセイセイ。
今すごーく聞き捨てならない言葉が聞こえたような……
「妾、こう見えても料理だけは自信があるのじゃ! サンカにも妾特製味噌汁をご馳走するから、楽しみにしておれ!」
「あれ、……あっれぇぇー!?」
魔法陣が一際大きく輝き、俺達の身体は足元から光へと変わっていく。
あれこれもしかして、選択ミスった? 初期装備が
E:ただのロリ
で異世界生活になっちゃうよ? ねぇ、あっれ!?
「ちょい待ち! ストップ! やり直しを要求する――――!」
ブゥンッ
俺の悲痛な叫びも虚しく、魔法陣は俺達を異世界へと送りこむ。
こうして俺とリフィは異世界でなんやかんやして、なんやかんや魔王に立ち向かうのだが、それはまた別のお話。
続……くかも。




