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「白雪姫」中編




白雪姫が小人たちと暮らし始めて数日が過ぎました。

その頃お城では、鏡の前で王妃が高笑いをしていました。



「ふふ、猟師も姫の心臓を持ち帰ってきたことだし、これで私が世界一美しい女のはずよね。」

「お妃さま、棒読み。」

「…うん、ごめん。こういう自意識過剰な女は苦手だから、キャラがうまく作れないんだよね。未央さんとかが適役だと思うんだけど。」

「でもアレでしょ。彼女、前回散々やらかしたから出禁になったんでしょ?」

「あ、そうなの?知らなかった。」



…って、ちょっとそこ!

雑談始めてるんじゃないですよ!あと裏事情を勝手に話さないでください!


ほら、『王妃は意気揚々と鏡に向かって問いかけました』!!



「あーはいはい。鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだ「白雪姫だよ」



王妃がそう言うと、ちょい食い気味に鏡は即答しました。

王妃は驚き、鏡に掴みかかります。


「は?どういうこと?白雪姫は死んだんでしょう?」

「や、そんなこと俺に言われても…あーそんな揺らさないで、頭がガンガンすr」

「…あ、そうか、この鏡が壊れたのか。じゃあぶっ壊して新しいもの探さなきゃな…」

「ちょーっ!タンマタンマ!ハンマー振り上げないで!」


ニタリと不気味にほほ笑む王妃に、魔法の鏡は慌てて叫びました。

そして、『ちょっと待って』と言って何やら作業を始めました。


「…何してるの?」

「ん、白雪姫探し。あーいた。今、東の森の中にある小人たちの家に住んでるって。」


くるりと正面を向いて王妃と顔を合わせた魔法の鏡は、しばらく経った後、そう言います。

―白雪姫は生きていて、森の中に住んでいるですって?

王妃はまた目を丸くしました。


「え、場所分かったの?」

「ああ、GPSで検索かけて。」

「魔法はどうしたんだよ。」


王妃は思わずそうツッコミました。

確かに、魔法どこ行ったんだって感じですね。ハイテクなんですねー最近の魔法の鏡は。


しかし、こうして姫の居場所もわれたことです。

王妃は他人伝手では信用ならないと、今度は自分の手で白雪姫を殺すことにしました。

そうと決まれば早速準備の開始です。リボンやくし、毒りんごなどの小道具をいそいそ用意する王妃。

鏡はその様子を覗きながらのんびりとつぶやきました。


「あ、行くの?魔女になって?全く馬鹿なことするね、お妃さまも。ま、頑張ってねー」


しかし、その次の瞬間、魔法の鏡は絶句しました。



「何言ってんの、君も来るんだよ。」

「…は?」



魔法の鏡はつるりと磨かれ反射する表面の先の、透明の空間の中で目を丸くします。

聞き返すと、王妃は当然のように『是』と返しました。


「今からメイクするからその間に手鏡サイズになっといてよ。」

「え?いやメイクとか言っちゃだめでしょ……って、本気で?」


言い残してさっさと舞台袖に引っ込んだ王妃は鏡に向かって手を振るだけでした。

残された鏡は途方に暮れ――最後には諦めたかのように掌に乗るサイズの小さな手鏡に変身しました。

実は大きさチェンジも可能だったようです、この鏡。便利機能を兼ね備えていますねえ。


え?こんな改変はいいのかって?

うーん…ま、いいんじゃないですか?私、拓史くん個人的に嫌いですし(オイ

滅茶苦茶にならない程度に面白くなるなら別にいいですよ、ははは。

……ん?何か嫌な悪寒がしますね。風邪でもひいたんでしょうか?


まあそれはさておき。

魔法(物理)により、醜い老婆になった王妃は、

黒いローブを身にまとい、毒りんごその他をかごに入れて森の中を歩きます。

見た目は完全に気味の悪い老婆。これでは誰も彼女が王妃と気づきますまい。

歩きながら、王妃はニヤリと笑いました。


「ふふ、完璧だわ。これで白雪姫も…」

「ねーお妃さま。俺も連れていく必要あんの?」


―と、そこに銀色に光る手鏡が問いかけてきました。

王妃のお供に城から一緒にやってきた魔法の鏡です。

『俺、もう出番終わったはずなんだけど』『てか、持ち出し禁止でしょ、常識的に考えて』

など、お城を出てから今まで、何かにつけて文句を漏らすのでした。


「勿論。もしここに白雪姫がいなかった場合、責任とってもらおうと思って。」

「…責任?」

「うん。すぐさまたたき割る。」

「怖っ!?」


鏡はそれきり黙り、大人しくかごの中に収まってしました。



「ああいい天気。今日は絶好の洗濯日和ね。」


所変わって、ここは小人の家。

白雪姫もだいぶ小人たちとの生活に慣れ、今日も今日とて家事をこなしていました。

綺麗な歌声で歌を歌いながらシーツを干す白雪姫。

さながら森の妖精のようです。小鳥やりすなんかの小動物たちもうっとりと聞き惚れています。


「おやこんにちは、お嬢さん。」


そこに、現れた人影がひとつ。話しかけられた白雪姫は振り返りました。


立っていたのは一人の老婆でした。

腰がまがりローブの下から長い鼻としわしわの顔が覗いています。

この森の中で小人たち以外の人に会ったことがない白雪姫は、首を傾げました。


「あなたは誰?」

「私は通りすがりの行商人さ。可愛い娘さんにいいものをあげよう。」

「あら、本当?」


途端にパッと顔を明るくする姫。純粋な彼女は疑うことを知りません。

さっさと老婆の元へ近寄って行きました。

…それにしても那津さん、しゃがれ声も実に上手いですね。モノマネレパートリーがいくつあるのか、気になるところです。


「そうだね…じゃあこのリボンをあげよう。きっと娘さんに似合うだろうよ。」

「どれ?」

「これだよ、ほら綺麗だろう?」


老婆はかごの中をあさり、一本のリボンを取りだしました。

そう、毒が塗ってあるリボンです。これで姫の体を締め付けると、毒がまわって一瞬で死に至ることでしょう。

老婆はにんまりと笑みを作りました。

――しかし。


「いや、でもちょっと私の好みとは違うわ…ごめんなさい」

「そ、そうかい?ならこれはどうだい?」

「これも、少し色合いが…」

「なら…」


王妃の目論見はあえなく失敗。

そう、白雪姫は好みには色々とうるさい人だったのです。

以下、延々と色んなリボンを見せ続けましたが、結局白雪姫のお眼鏡にかなうリボンはなかったようです。

老婆は『そりゃないよ』と、その後もくしや他のアクセサリー(毒塗布済み)も見せましたが、

白雪姫は全てに首を振りました。


きっと、お嬢様故に目が肥えているのでしょう…まあ、我儘ととれなくもないですが。

とにかく、白雪姫は知らず知らずのうちに王妃の罠を回避したのでした。


「ごめんなさい、悪いけどやっぱりいいわ。別の所を当たってください。」

「ま、待って!」


予想外の結末に絶句する魔女。ちなみに、鏡はかごの奥で大爆笑中です。

魔法の鏡を恨めしげに見つつ、こうなれば、と王妃はかごから真っ赤なりんごを取り出しました。



「娘さん、りんごはいかがかな?」



老婆はそう言ってにっこりと笑います。

家に入りかけていた白雪姫はまた振り返り、老婆の方を見ました。






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