「白雪姫」前編
今回の童話で完結です
-CAST-
白雪姫――高宮麗奈
王妃/老婆――本城那津
魔法の鏡――新井山拓史
狩人――本城唯月
七人の小人――国崎聖悟
乾悠十
水谷信二
乾圭太朗
マスター
エキストラA
エキストラB
王子様――斎藤宏樹
ナレーター――天の声(?)
「確かにさー、私、悪役がいいとは言ったけど…それより休憩欲しかっ(ry」
「あらまあ、私が白雪姫?主役なんてできるかしら…」
「大丈夫だよ!麗奈なら超ハマリ役だって!俺が保証するっ!」
「ねー、七人の小人の中にオッサンまじってんだけど。」
「うるさいな、君らも十年後にはこうなるんだよ?それに、僕、まだ若いつもりだけど?」
「卑屈になるなよ、マスター。」
「…おい、那津。これは何の茶番だ。」
「あ、兄ちゃん。衣裳似合うね。」
「お前が緊急事態だって言うから、わざわざ仕事休んできたのに…劇だって?何考えてんだ。」
「それは私も最初から思ってる。」
始まるよ~☆
**********
えー、今回で6回目となりますか。早いものですね。
本日もようこそお越しくださいました。司会の私です。
今回の童話は「白雪姫」です。王道ですね。
しかし、今回はキャストにも気を配りましたから、きっと普通のエンディングにたどり着けるはずです。…きっと。
それでは、はじまり、はじまり。
ある王国に、白雪姫と呼ばれるとても美しい娘がいました。
その肌はまさしく白雪のように白く、頬は赤く、髪は黒檀のような黒。
しかも、そんな素晴らしい容姿に加え、心優しく思いやりのある娘でした。
さて、そんな白雪姫には継母である王妃がいまして、
彼女は自分こそが世界一美しいと思いこん…いえ、信じていました。
王妃は毎日、彼女の魔法の鏡に向かって問いかけます。
「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰?」
「…ねえ、その質問何回目?」
「私だって好きで聞いてるわけじゃないし。で、どーなの。」
「はいはい、お妃さまが一番美しいよ。」
「よし、じゃ、寝ようっと。」
「…日課?」
…本来はこんなゆるい感じではないでしょうが。
このように王妃は世界一の美しさに酔いしれていたわけです。
しかし、それも白雪姫が15歳になるときまででした。
「君の時代は終わったよ」
魔法の鏡はそう言い捨てました。
王妃はぴくりと眉を上げ、彼に問いかけます。
「…どういうこと?」
「残念ながら、君は最も美しい女性ではなくなってしまったってこと。」
「では、誰が?」
魔法の鏡はニヤリと口をゆがめました。
「世界一美しいのは、君の娘。白雪姫さ。」
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「お母様、どうしたのかしら…」
所は変わって、お城の外。
白雪姫は継母から用事を言いつかって、森の中に入っていました。
てくてくと歩きながら可愛らしく首をかしげます。
疑問がいくつかありました。
今までろくに城から出たことがなかったのに、何故いきなり外に出されたのかということと、
用事を言い渡した時の王妃の怖い顔。そして――
「……。」
白雪姫はちらりと後ろを覗きます。
背後からは一定の距離を保ちながら、一人の猟師がついてきていました。
――護衛に、と付けられたこの大柄な男。パッと見、強面でガタイのいいお兄ちゃんです。
白雪姫には男が不審なことこの上なく…というか、誰にとってもそうでしょうが。
びくびくしながら顔を正面に戻し、白雪姫はさらに奥へと進みました。
「……姫。」
「!はいっ!?」
しばらくして、猟師が突然話しかけてきました。
姫はびくっと体を強張らせながらも、返事をします。
「…そんなに驚くことないだろう。」
「だ、だって!貴方のお顔が怖いんですもの…!」
「まあ、よく言われるけどな…それよりも、アンタ、逃げた方がいいぜ。」
「へ?」
ぶっきらぼうな猟師からの提案。白雪姫は理解不能、とばかりに瞬きをします。
猟師は面倒くさそうに頭をかきながら答えました。
「実は俺、アンタのお妃さまからアンタを殺せって言われてんだ。」
「え!?」
驚きに目を見開く白雪姫。
それはそうでしょう。自分の継母から暗殺者を仕向けられたのですから。
混乱したまま、腕を組んでいる猟師に向かって叫びました。
「な、何故!?」
「何故かは知らんがそう言われた。ま、俺は別に殺してもいいんだけどよ。」
「え!?」
「女子供を殺るのって寝ざめ悪ぃんだよな。できれば避けたいというか。」
「な…」
しかし、猟師は全く普通の様子。まるで今日の天気を話しているかの如くです。
…あの、唯月さん。それ実体験、ではないですよね?
「このまま撃たれて死ぬよか、森の中で飢え死にの方がマシだろ。とっとと行けよ。」
最後に猟師はそう言って、去りました。
そのまま森の中に残された白雪姫は途方にくれました。
「ど、どうしたらいいの…」
ぽつりと呟いたひとことは暗い森の奥に消えました。
薄暗い森の中は今が昼か夜かも分かりません。
じめじめしているし、時折がさっと何かが動く気配もします。
白雪姫はそんな森の様子におびえながらも先に進みましたが、闇が深くなるばかり。
不安に押しつぶされそうな白雪姫は、とうとう泣きだしてしまいました。
さめざめと泣くかわいそうな白雪姫。
すると、そこに――
「麗奈―!泣くな、俺がいる…ぐほぉ!?」
……。
…何だったんでしょうね、今のは。
何か現れたような気がしたようなしていないような。そしてすぐに引っこんでいったような。
ま、多分気のせいですね。とりあえず先に進みましょう。
あ、スタッフ。棍棒は所定の位置に戻しておいてください。
「…あら?これは……」
白雪姫が目にしたのは、小さな家でした。
入口は小さく天井も低く、満足に人も住めないような奇妙な家。
白雪姫は不審に思いながらも、ドアを開けて中に入りました。
すると、中には小さな人が合計7人、ちょうどテーブルを囲んで食事を始めるところでした。
小人たちは揃って目を丸くしました。
「わー!誰だ、お前は!?」
「なんだかでかいやつが来たぞ!」
小人A,Bが白雪姫に向かって指をさして叫びました。
白雪姫は慌てて弁解しようと口を開きます。
…しかし
「あー、ねみぃ。俺、今回那津と絡みねぇし、とっとと抜けだそうかな。」
「てか、信二って子が血ぃ流して動かないんだけど、大丈夫なの?これ。」
「お、お嬢さん美人だね!コーヒー飲む?」
「小人って7人もいります?俺、もう帰りたいんですけど。」
その他の小人がわいわいと勝手に口走り、白雪姫の言葉は遮られてしまいました。
…いいから台詞読めよ、テメェら。
「へー、君、白雪姫って言うの?家を追い出されてこの森に迷い込んだのか。」
「はい…そうです。」
数十分後。
小人の一人が白雪姫の話をまとめ、非常に説明的な台詞を言いました。
他の小人たちもそれに便乗し、話します。
「家ないの?大変だねー」
「どうするの?」
「ここ住めばいいんじゃない?」
「でも仕事は?働かざる者食うべからず、じゃん?」
「いいんんだよ!麗奈はここにいるだけでいい!」
「ちょっと黙ろうね、信二。」
やいやい言いながらも白雪姫を興味津々に見る七人の小人たち。
結局、皆白雪姫を可哀そうに思い、彼女を家に住ませてやることにしました。
「よろしくお願いします、小人さんたち。」
白雪姫はそう言い、花のように笑いました。本当に素直ないい娘さんですねえ、彼女は。
さあ、ここから劇も終盤戦です。
今のところ、すこぶる順調な話の流れになっていますよ。ふふふ。




