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「ねむり姫」後編




夜になって、王女が塔の中で倒れているのを見た王様と王妃様は、嘆き悲しみました。

王女は12番目の魔女のおかげで死んではいませんでしたが、すうすうと眠るばかりで起きる様子はありません。

これからどうすべきか――困り果てた王は12番目の魔女を呼びつけました。

眠る王女を見た魔女は、王様に提案します。



「では、王女が目を覚ました時、一人きりで寂しくないように、お城全体に魔法をかけましょう。皆、百年のねむりにつくのです。」

「え!?それは困るな。僕、お店もあるし…明日コーヒー豆の入荷日…」

「はい、じゃ、魔法かけますよー」

「え、無視!?」


渋る王様を無視して、12番目の魔女は魔法をかけました。

すると、お城の人々は皆倒れ、寝息を立てはじめたではありませんか!

こうして、お城の中の時は止まり、全ての人が眠りにつきました。


やがて、お城の周りにはいつしか茨がツルを伸ばし、誰も入り込めない茨のお城となったのです。




魔女の呪いによって眠りについたお姫様の噂は瞬く間に近隣の国々へ広まりました。

そして、多くの若者たちが姫の呪いを解こうとして城を訪れました。


「おい、本当に行く気か?」

「ああ、面白そうじゃねぇか。お姫様が眠っているお城!それに、城の中にお宝があるかもしれねぇぜ?」

「そうだけどよ…」


血気盛んな若者がここにも一人。

笑い声を上げながら城を目指します。

しかし、茨に覆われたそこには簡単にはたどり着けません。

剣で一生懸命切って道を作ろうとしますが、茨はすぐに再生し、青年にまとわりつきます。



「くそっ、なんだこの鬱陶しいイバラはっ!……がっ!?」


そのうちに、まるで生きているかのように動く茨に体をからめとられ、青年は外壁の外へ放り出されてしまいました。

その後も、深い茨に行く手を阻まれ、誰もがお城の奥までたどり着くことはできませんでした。


そうして百年の年月が経ったのです。




「ここが、伝説に残る茨の城か…」



百年後のある日。

とある国の王子が、茨の城に眠るお姫様の噂を聞いてやってきました。

成る程、目の前には茨に取り囲まれた異様な城があります。

王子は険しい目でそれを見つめ、自身の剣を抜きました。


そして、茨に向かって剣を薙いだ――瞬間。

信じられないことが起こりました。


「え?」


王子も呆けたような声を出します。

なんと、あれほど固く茂っていた茨たちが自然にほどけて道を開け、王子を傷つける事なく通してくれたのです。

そう、それは丁度、百年の年月が流れて姫が目覚めるべき時でもあったのです。


ま、平たく言えば『時期がよかった』ってことですね。

童話的には、これを言っちゃ、身も蓋もありませんが。



そうして王子は戸惑いながらもお城の一番奥まで辿り着きました。

すると、寝台に横たわる美しい姫君を見つけたのです。

その美しさに、王子は一目で心を奪われました。



「ああ、なんて美しい姫だ…」



王子は寝台に腰をおろし、王女の柔らかな頬をそっと撫でます。


そして、その可憐な唇に口づけを落と――



「……チェンジーーーッ!!!」

「え?」


――そうとしたら、何者かにキスを遮られました。

邪魔をしたのは、なんとさっきまでねむりこけていた王女様本人。

鋭い目つきで王子様を睨みつけています。


「駄目、やっぱりお兄さんはダメだわ、生理的に!!色黒金髪、それにそのマッチョな身体は私の好みじゃないもの!」


…何言ってんだ、この(アマ)

いや、合うとか合わないとかじゃなくて、王子様のキスで目覚めてくれたらもう用済みなんですけど。

貴女も王子も。

何、今後のことも視野に入れてるんですか、合コンか、ここは。

てか、自力で起きれたんですね、ねむり姫。


歓迎されるはずだった王子も、これには困惑します。



「え、酷くね?俺への扱い。」

「お黙りなさい!貴方なんて、ただ運がよかっただけの王子じゃないの!」

「そんなこと言われても…」


わー、王子様、不憫です。

態々目を覚ましてやったと言うのに、このダメだし。

まあ、大体事実ですけど。


「どうした、王女…って、おお!呪いが解けている!」

「あら、本当だわ!」

「眠りから覚めた!やったー!」


王女と王子が揉めている間に、他の人たちも眠りから覚めて起きてきました。

城の者たちは皆、呪いが解けて喜んでいます。

しかし、そこに水をさすように王女は叫びました。


「お父様、お母様!のんびりしている暇はないわ!早く婚活を始めないと!」

「は?婚活?」

「そうよ!私、もう百年も嫁き遅れてるのよ!早速現在(いま)の流行をチェックして、お見合いしないと!」

「いや…そこにいる王子はどうするんだ?お前と結婚するのでは…」

「だーかーら、この人は好みじゃないのっ!チェンジよチェンジ!!」

「…傷つくんだけど。」


王女様は眠りから覚めたばかりとは思えないほどそう饒舌に話し、

お城は『王女の婚活』に向けて動き出しました。


そして、哀れ、救いに来た王子はというと…さっさと自国に戻されてしまいました。

ああ、可哀想な王子様。


その後、見事に復興した国で、復活記念大お見合いパーティという、訳のわからん宴が開かれたとかなんとか。

そこに王女の気にいる相手が出てきたかどうかは、神のみぞ知る、ですね。


まあ、魔女の呪いが解けて平和になったことだし、

一応めでたし、めでたし…で終わってしまっていい感じでしょうか。




…ああ、なんてオチだよ。

クッソ、途中までは順調にいってたのに…


…なんか、すみませんね、皆さん。

いきなり劇を中断したり、このクソ女のせいでとんだ結末に変わったり。


これに懲りずまたお越し下さると嬉しいです。

今度はキャストもちゃんと考えますし!ね!




END





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