駆け抜ける真紅
楽しんでください
開け放たれた城門から数百騎もの騎兵が溢れ出した。騎馬はユニコーンやペガサス、普通の馬ではない。中には巨大な狼、獅子に跨っている者さえいる。そして、乗っている者達は須らく十代後半の若者達だ。
「……」
城壁の上、一人の少年が無言で門から飛び出していく仲間達の姿を見ていた。月、星一つ無い星空のように黒い髪を風に遊ばせながら視線を持ち上げ、凝縮させた炎の如き真紅の目を前に向ける。
「……来た」
少年がボソリと囁いたその時だ。出撃し、城の前にある草原を駆け抜けていこうとする騎兵達の足並みが乱れ始めた。まるで、目の前から津波を連想させる威圧感を放つ何かが迫ってるかのように。そして、それは突然現れた。
蒼空を疾走する一筋の紅き流星。草を薙ぐのも、騎兵たちを吹き飛ばしそうになるのもお構い無しに力強く羽ばたく両翼。疾風よりも速く天を駆け抜けるその者の名はドラゴン、レッドドラゴン。レッドドラゴンは城壁の上にいる少年の姿を認めると、歓喜の咆哮を上げ加速した。城壁に正面衝突する直前、レッドドラゴンは翼を一閃させ完全停止、その場で方向転換する。
レッドドラゴンが背を向けたと同時、少年は城壁から飛び降りた。少しの浮遊感を感じ、レッドドラゴンの背に着地するように跨る。翼が風を切り、レッドドラゴンの巨体を持ち上げる。太陽に向けて急上昇していくのを感じながら少年は大きく両腕を広げる。耳元で風が唸る。だが、恐怖は微塵も無い。何せ、自分が乗っているのは彼女なのだから。
上昇を止め、漸くレッドドラゴンは前に進み始めた。眼下に広がる草原を走っていく、豆粒くらいの大きさにしか見えない騎兵達を気に留めることもなく、背に乗せた少年と共に蒼空を駆けていった。
次回は少年とレッドドラゴンの出会いでっす。
レッドドラゴンの名前どうしよ?
自分的には凛々の薔薇なんてのを考えてるんですが…