どうしても言いたかった、どうでもいいこと。
「おかしいと思わない?」
「何が」
「桃太郎の話!!」
「あんなの作り話なんだから、おかしくて当たり前だろ」
「だけどどうしても言いたいのよ!!桃太郎の冒頭、どんなのか言える?」
「むかーしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。
ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました」
「…。」
「まだ言うの?」
「言って」
「…おばあさんが川で洗濯をしていると川上から、どんぶらこ~どんぶらこ~と大きな桃が流れてきました。『立派な桃じゃ!持って帰ったらおじいさんも喜ぶに違いない』。おばあさんはその大きな桃を、家へと持って帰りました」
「そう、そこ!!」
「なに?どこか変だった?」
「ね、『おばあさん』ってどういうイメージ?」
「え?そりゃ、白髪でしわだらけで、腰が曲がってて足腰弱くて…」
「でしょ!?」
「う、うん…」
「だけどこの童話のおばあさんは、でっかい桃を自力で持って帰るのよ?」
「まあそうだな…」
「赤ちゃんって、だいたい3キロくらいあるでしょう?」
「昔はどうだったのか知らないけど、そのくらいかな」
「それにでっかい桃も合わせたら、全部で何キロあると思う?」
「…まあ、重いだろうな」
「つまり」
「つまり?」
「この桃太郎に出てくるおばあさんは、マッチョだったということよ!!」
「…。」
「…じゃなきゃつじつまが合わない」
「どうでもよくね?」
「だけどどうしても言いたかったの!!ということで言い直して!!初めから!!」
むかーしむかし。あるところにおじいさんと、ムキムキマッチョなおばあさんがいました。
ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、ムキムキマッチョなおばあさんは川へ洗濯に行きました。
マッチョなおばあさんが洗濯をしていると、どんぶらこ~どんぶらこ~と大きな桃が流れてきました。
「なんて大きな桃じゃ!持って帰ったらおじいさんも喜ぶに違いない!」
おばあさんは喜び勇んで桃に近づき、
「そいやあ!!」
その筋力を活かして大きな桃を持ち上げ、持ち帰りました。
「…これで満足か」
「うん」
「それはよかった」




