第4章2
「私は自分をずいぶんと責めたよ」
克安は傍らに落ちている石を、泉に向かって投げた。石はぽちゃんと軽やかな音を立ててて沈んでいく。
「私が都を離れたなかったら……。もっと早くこの事態に気づいていたら……あと少しでも早くあの場所に着いていたら、そうしたら翠蓮は死なずに済んだかもしれない」
ずきん、と学然の心が痛む。
その感情を、自分は知っているような気がした。
自分のことを責めて、責めて――。
起こってしまったことは決して覆りはしない。
失ってしまったものは戻ってきやしない。
けれど、自分を責めずにはいられなかった。
この感情はいったいいつのものだろう。
だが、いくら考えても、学然には思い出せない。これもきっと抜け落ちてしまった過去の欠片なのかもしれない。
「私を責めてくれるのは、自分自身しかいない。いっそうのこと、誰かが私を責めてくれれば、楽だったかもしれない……」
「――バカ……だよな」
ぽつりと出た言葉。
自分自身に対して思わず出たものだったが、克安は己自身に対して言われたものだと思ったようだ。
悲しそうに笑うと、ひとこと、「そうだな」と言った。
そうして、話の続きを語り始めた。