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丁寧な接客

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2026/02/19



 呪い殺したい人がいる。

 お客さんがそういった。

 俺は、丁寧に藁人形の使い方を教える。





 俺は呪いの道具の販売店で働いている。

 どうしてそんなことをしているのかというと、そういう能力があったからだ。

 呪いの道具を作る力が。


 好きでやっているわけではないけれど、むいていたからやった。それだけ。

 理由は、それ以外はなにもない。


 だから、お客さんの事情には首を突っ込まないし、感情移入もしない。

 というか、他人のこととか世の中の事自体、俺には興味ないし、関係がないからな。


 ただ、仕事は丁寧にやらないとという、仕事にかけるプロ意識みたいなものはあった。


 目を合わせて、相手の顔色や言葉、何気ないしぐさに気を配りながら、接客をこなす。


 人を殺したいだなんて考えるやつらだ。きちんとその手の人間に対応しないと、恨まれそうだという理由もある。


 俺は人とは少し違った精神性をしているが、しょうもないことで命を落としたくはないという価値観は普通だと思っている。

 自分が売りつけた道具で、呪い殺されるのはさすがに勘弁したい。


 だから、お客さんのためを思うでもなく、たんたんと仕事をする毎日だった。


 親切心でもなく、善意でもなく、ただのプロ意識で丁寧に呪いの藁人形の使い方を教えていく。






「というわけで、上手に呪殺したければ、時間に気を付けるのが一番です。あと、使うときは誰にも見られないように。集中するのも大切ですね」


 今日も、仕事をきちんとやり終えた。

 明日も同じようにやるだろう。


 俺は、その日も接客を終えて、店を閉める。

 しかし、閉店作業を終えてしばらくたってから、俺は胸を押さえた。


 これは、やられた。

 本能なのか、勘が働いたのか。


 心臓発作などの病気ではなく、呪いによるものだと分かった。

 自分で作ったものの道具でやられているのだと。


 しかし、何をミスったのだろう。


 きょうもきちんと接客したはずなのだが。


 とくにやりたいことのない人生だったが、自分の死の理由がわからないのは少しばかりの未練だ。





 藁人形を使い終わった俺は、つい先ほど訪れた店の人間を思い出す。


 本当はほかに殺したい人間がいたが、気が変わった。


 それは、嘘を言う人間が俺は嫌いだからだ、


 俺が殺したいやつは、冗談で俺を傷つけた。


 最初は殺してやりたいほど憎んだし、嫌っていた。


 まったく人の気持ちを考えていなかったが、敵意や悪意はなかったのだなと思い直した。


 人を笑わそうとしていたのを思い出した。


 だから人を傷つけていいというわけではないが、まだましな方だった。


 あの店の人間と比べて。


 丁寧に藁人形を教えてくれはしたが、敵意も悪意もあったのだ。


 嘘の善意と親切心で、客にせっするなんて、許せない。





 それに、人と目を合わせて話すなんて、ありえない。


 つい数年前にあった凶悪事件をきっかけに、人と目を離して会話をするやつが少なくなった。


 目があった。たったそれだけの理由で多くの人間が命を落としたのだから。


 それ以来目を合わせて話すことは、相手を害したり脅す時に行われるようになった。


 ニュースを見ている人間なら、だれでも知っていることだ。


 まさか知らないわけはあるまい。



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