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星のありか  作者: ゆきもち
第一章
7/8

才能

 朝食が終わったため、ランテルナはリュカと別れて、寮に戻り身支度を済ませてから、杖をもって校庭へ向かう。初めての授業は学舎の外で行われるようで、一年生が集まっていた。ランテルナはオリバーと合流し、二人で「最初の授業は何するんだろうね」と話していると、突然水星寮の生徒が現れ、鋭い目つきでランテルナを見て、


「おまえにはぜったい負けないからな!」


と、喧嘩を売ってきた。それにランテルナは驚きながら、どうしていいか分からず困った顔をしていると、喧嘩を売ってきた水星寮生徒は宣言して満足したのか、その場から去っていった。


「な、なんだったんだろうね」


おろおろしながら、オリバーはランテルナに尋ねたが、ランテルナにも心当たりはなかった。でも、もしかしたら、朝の新聞が原因かもしれないと思いながら、根拠もなく疑うのは良くないわと、あたまをふった。


「静粛に」


学舎からゆっくりと校庭にでてきた女性が、生徒たちを静かにさせた。


「これより、一年生最初の授業を行います」


一年生は緊張から、静かに女性の話を聞いた。


「まず、私の名前はアリス・ローゼンベルク。一年生の魔法学を担当する先生です」


ローゼンベルク先生は杖を一振りすると、生徒たちの頭上にキラキラとした光を降り注いだ。生徒たちから感嘆の声が上がる。


「これは私からの祝福です。ささやかながらお祝いさせていただきます」


生徒たちはみな、この先生のことが好きになりそうだと予感した。


「さて、授業を始めます。重要な話をしますので聞き洩らさないように」


ローゼンベルク先生は、記念すべき最初の授業を始める。


「皆さんには、まず、自分の探査領域の把握から始めてもらいます。探査領域とは、通称

『エリア』と呼ばれるもので、あなたが現在いる場所からどれほどの距離の星々を感知できるか、と言う能力です。このエリアが大きければ大きいほど、規模が大きい魔法が使えます」


エリアの距離は人によって違う。また、年代を重ねるごとにどんどんその距離を伸ばしてきている。そして、エリアの大きさは魔法使いにとって重要な才能だった。


「エリアを把握するのはそう難しくありません。自分の感知できる最も遠い星と最も近い星を結び呪文を唱えるのです。では、二人ずつ、前に出て魔法を唱えていきましょう」


やる気のある生徒が、すすんでまえにでた。


「では、私に続いて呪文を唱えなさい。『星の位のままにあらわれよ』」

「「『星の位のままにあらわれよ!』」」


生徒たちの目の前に手のひらサイズの火が生まれる。生徒たちから、おーっと感動の声が上がった。


「これが原初の魔法、『火』です」


ローゼンベルク先生は魔法の説明をはじめ、生徒たちは慌てて気を引き締める。


「人類の文明は『火』から始まり、発展してきました。そのため、文明レベルが高い魔法ほど発動するのは容易であり、例えば、剣を創造する、分身を作るといった魔法はさほど難しくありません。しかし、草花を生やす、岩を変形する、といった人知を超えた超常的な力ほど魔法として使うのは大変難しいのです。『火』は、我々魔法使いが最初に習得する上位魔法であり、人類の発展を実感する貴重な体験です。それでは、みなさん、順番に『火』を扱っていきましょう」


生徒たちは、はーい、と返事をして「火」の魔法を唱えていった。発動した火は生徒によって大きさがまちまちであり、指先の小さな火から、全身を覆えるくらいの大きな火まで様々であった。オリバーは指先サイズの火で、それでも、火が生まれたことに嬉しそうにしていた。

ランテルナの番がやってきたのだが、一緒に魔法を唱えるのは、さっき喧嘩を売ってきた水星寮の生徒だった。


「おまえの火より俺の火の方が大きかったら、俺の方がすごい魔法使いだ!」


とみんなの前で宣言するものだから、ランテルナは困ってしまった。ランテルナは勝負なんて好きではないし、相手を負かすのも好きじゃない。手加減した方がいいのかしら、と頬に手を当てて、悩んでいると、


「ランテルナ・ハッブル。これは授業です、手を抜くことは許しませんよ」


と、ローゼンベルク先生が言ったので、ランテルナはハッとして魔法に集中した。

 隣の水星寮の生徒が人の大きさほどの火を生み出してはしゃいでいたが、ランテルナは集中していたのでそれに気が付かなかった。

 一番近い星はきっとみんな同じ。ランテルナは意識を集中させて遠く遠く、その先を見る。おおぐま座のわずかな範囲の中をじっと見つめ続け、たくさんの銀河のなかで最も遠いものをランテルナはつかんだ。


「『星の位のままにあらわれよ』」


その瞬間、灼熱の炎が学園上空に現れた。それはあまりに大きすぎる炎で、山一つ消し飛ぶくらいの熱量を持っていた。

水星寮の生徒はあまりの迫力に膝が震え、しりもちをついた。


「ルナ!」


オリバーの声が聞こえ、集中していた意識が現実に戻される、と同時に頭上の炎の塊も散っていった。


「すごい!すごいよルナ!いったいどれほど遠い距離の星をむすんだの?」


はしゃぐオリバーの声にランテルナは嬉しくなり、誇らしい気持ちになった。


「残念だけど、星ではなくて銀河をぼんやりととらえただけなの。たぶん、百十七億光年以上は遠いんじゃないかしら」

「百十七億?!すごいや!僕なんて五百四十八光年のベテルギウスだったよ。でも、悪い奴じゃないんだ」


周りのざわめきをものともせず、ふたりはふたりだけではしゃいでいた。後ろに下がったランテルナの次に前に出てきた生徒は、やりにくさを感じながら、魔法を唱えた。

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