月の加護
しばらく、ランテルナとオリバーはその集団に混じって、待っていると、バチンと音がなって女性が扉の前に現れた。
「これから、みなさんを星辰の間に案内します。私が先導するので、一年生の皆さんはついてきてください」
そうして、扉が開かれ入った場所は真っ暗なのに前が見えるという不思議な空間で、天井は半球体で、この季節に見える星々が描かれており、中央の床には太陽を中心に八つの惑星と冥王星、それから小さく月が描いてあるのだが、これらはどうもゆっくりと動き、今の夜空と天体の位置を正確に記録しているようだった。
ランテルナとオリバーはきょろきょろしながらもしっかりとこどもたちについていき、一年生全員が星辰の間に入ったところで先頭が立ち止まったため、ランテルナたちもその場に立ち止まった。
「これより、入学式を始めます」
一年生を先導していた女性が口を開き、静かな声でそう言ったため、少しざわついていた一年生は緊張で身を固くした。重たい空気が空間を満たし、星々の輝きがより一層際立つ。
「まず初めに、寮の組み分けをします。名前を呼ばれた者は前に出なさい」
フクロウ学園には、十個の寮が存在する。八つの惑星と冥王星、それから月を讃えた十の寮は、それぞれの星の特徴に見合った生徒を選び、組み分けされる。 最初の生徒が名前を呼ばれ、前に出た。中央の床に描かれた太陽の上に立つように言われ、そして魔法杖を床にコンとついた。すると、太陽の回りを回っていた火星が輝きだし、赤い光の玉が生まれ、生徒の周りを一周すると、ぶわりと男性の幻影が現れ、その男性は二匹の蛇が巻かれた羽の生えた杖を持っていた、それと同時に生徒の着ていた黒いワンピースが、黒い煙をはらうように裾から徐々に赤く染まっていき、最後は全身を赤に変えていた。
その幻想的な光景にランテルナは目を奪われた。他の生徒も同様に、太陽の上に立ち、杖を突き立て、そして星が応える。黒かったワンピースやタキシードは、寮に合わせて紫や黄に変わっていった。オリバーの番になり、彼は震えながら杖を太陽についた。すると、冥王星が光りだし、水色の光の玉が宙に浮かび、オリバーの周りをゆったりと回転すると、幻影が現れ、その姿は細身で髪の長い男性だったのだが、彼が現れると、オリバーのタキシードは闇をはらうように鮮やかな水色になっていった。
「素敵…」
ランテルナは思わずつぶやいて、オリバーのタキシードに見惚れた。それから、何人も儀式を行い、色を変えるたびに、ランテルナの心臓はドキドキと高鳴っていた。
「ランテルナ・ハッブル」
いよいよ、ランテルナの名前が呼ばれた。ランテルナはゆっくりと足を進め、コツコツと靴の裏が地面をける音が静寂の中に響いた。ランテルナは太陽の上に立った。その灼熱の星の上からエネルギーが流れ込んでくるような錯覚さえ覚えるほど、ランテルナは高揚していた。自分はどの寮に組み分けされるのだろう、どの寮のワンピースも素敵な色だったわ。水星寮の青色は灼熱の青い炎のようでかっこいいし、金星寮の紫色は美の結晶のようで輝いていたの。地球寮の緑色は青々とした自然で包み込むような温かさがあって、火星寮の赤色は勇ましさを感じて元気になるし、木星寮の橙色は明るい未来を予感させる輝きを放っていたわ。土星寮の黄色は癒しの力を秘めていて、天王星の桃色は一等星になれる可能性の道を示していた。海王星寮の紺色は深海の神秘を宿していて、冥王星寮の水色は静かな情熱を魅せていた。月の寮は、まだ、見たことないけれど、それでもきっと素敵だと思う。
だから、私のお星さま、大好きになるから、私を選んで。
ランテルナは杖をコツンと、太陽に突き立てた。すると、ちかちかと地球が光りだし、しかし、光の玉は出ず、地球は光るのをやめた。星辰の間がにわかに騒めきだす。ランテルナがどういうことかしらと首を傾げると、突然地球の傍で公転していた月が光りだし、白い光の玉が生まれた。それはランテルナにじゃれるようにくるくるとその周りを浮遊した後、白い幻影が現れ、その美しい女性の幻影は、ランテルナをうしろから抱きしめ、穢れをはらうようにワンピースを白く染め上げていった。そうして、ランテルナのワンピースがすっかり白くなったあと、女性は微笑んで、ランテルナの額にキスを落とし、消えていった。




