人生はクソゲー
目の前に広がる民衆の喝采、熱気。皆が皆、期待と尊敬と渇望のまなざしを向けている。美しい装飾が付いたこの日のために作られた馬車に乗り、この日のために整備された城までの道を通る。美貌の女神は生まれた時に祝福を送り、戦の神は幾度となく力を貸した。知恵の神は彼に知恵を授け、医神は何にも負けない強靭な体を与えた。みな口々に英雄と、そう呼んだ。
あぁ懐かしい。きっとあの時の仲間が今の私の姿を見たら、驚愕するだろうな。人類の中で、いや少なくともあの世界のなかで、世界を平和にしたという最高難易度の偉業を達成したのだから。
私はいま、日本という国にいる。目が覚めたらそこにいたのだ。毎日電車を使ってそこそこのでかさの女子高に通っている女子高校生になった。制服は可憐で美しい。少しのしわもないように毎日整えている。髪もうねり毛、後れ毛を出さぬようきれいなポニーテールを1日維持している。化粧品にも気を使い、肌荒れ一つも体にはない。完璧な状態。だが、私は周りの人間から嫌われている。なぜかがよくわからない。
学校の廊下を歩いていると、すぐそばの階段から1人の少女が落ちてきた。きっと足を滑らせたんだろう。私はとっさに少女を抱きとめ、一緒に落ちてきたかばんもキャッチした。
「お怪我はありませんか。」
「え……うん。ありがと……。」
私の手を振り払い、かばんを奪うように取って少女は足早に過ぎだっていく。周りの人間は怪訝そうな目でこちらを見ている。以前なら、黄色い声が飛び交うであろうに、おかしな話だ。
教室につき、自分の席に座り授業を受ける。授業中は質問や解答を毎度するようにしている。そのほうが周りのためになるからだ。授業が終わり、放課後になった。教室の清掃を完ぺきにこなす私のもとに、クラスの委員長と呼ばれる役割を持つ少女がやってきた。
「えっと、来月の文化祭の準備なんだけど、どこ担当したいとかあったりする?」
「あぁ、担当は基本的にどこでもいいよ。そちらの都合がいいところに適当に入れてくれるかい?」
「……わかった。」
またもやそそくさと少女は去っていく。私はみんなに何か迷惑をかけてしまったのだろうか。わからない。そんな私にできることは清掃を完ぺきにこなし教室を過ごしやすいところにすることだ。よし。頑張るぞ。
「まじであいつきもいよね。」
「わかる。なんていうの?すましてるっていうかさ。」
「中二病をこじらせてるよなぁ。なんか自分は何でもできると思い込んでそう。」
「めっちゃわかる~!この前も先生にいい子アピしたいのか人助けしてたよ。」
「あと授業中めっちゃ止めてくるじゃん?黙れよな~!」
「「わかるぅ~!」」
「めっちゃ顔ブスなのに自分は美人だとでも思ってんのかな?」
「まじ死んだほうがいいくらいブスだよね。私なら耐え切れないわ~。」
「醜悪すぎて近寄りたくないもん。」
「それな~?」