047 アカリ、パーティーを楽しむ
047 アカリ、パーティーを楽しむ
あの後、私たちのために開かれた歓迎パーティーは、本当に、本当に物凄く楽しかった!
異世界の料理はどれもこれも見たことないものばかりだったけど、アーサーさんやアレクさんが作ってくれたものは全部絶品!
特にアーサーさん特製の、あのスパイシーな香りの煮込み料理!お肉はホロホロだし、野菜はトロトロだし、何杯でもいけちゃいそうだった。
アポロンリングのおかげで、今まで話せなかったみんなともいっぱいお話できたのも嬉しかったな。リコリスちゃんとは、言葉が通じるってこんなに楽しいんだねって、二人で顔を見合わせて笑っちゃったくらい。
会場の飾りつけも、手書きのポスターとか折り紙で作った輪っかのチェーン、それからキラキラ光る不思議な植物の蔓が壁や天井に飾られていて、なんか友達の誕生会に来たみたいな手作り感あふれる温かい雰囲気だった。
存在感がゴージャスなアポロン様とヘベ様が若干浮いている気もするけど、もしかしたら、私たちが緊張しないようにわざとそういう雰囲気にしてくれたのかもしれない。
虎子さんに聞いたら、タモン様とグラちゃんとシモさんが紙飾りを作ってくれたらしい。
ミサイルが飛んできても爆風の中からノシノシ歩いてきそうなタモン様が、かわいいグラちゃんと並んで一生懸命、折り紙で輪っかを作っているのを想像すると、なんだか微笑ましくて、つい笑ってしまった。
後でタモン様にお礼を言いに行ったら、「うむ、喜んでくれるなら何より。実はな、手先は器用な方で、時折、木彫りで仏像なども彫るのだ」と、少し照れくさそうに教えてくれた。
毘沙門天様が彫る木彫りの仏像って、それを祀るためにお寺を建てるレベルの国宝級なんじゃ……と思ったけど、深く考えることはやめにした。
ふとカウンターの方を見ると、ヘベ様となまず様が何やら楽しそうにお話ししている。どうやらヘベ様がなまず様にお酒をごちそうしているみたい。
カウンターの向こうではアレクさんがシェイカーを振っていて、出来上がったカクテルをなまず様が一口飲むと、お髭をピンっと跳ねさせて、何か得意げにヘベ様に話しかけていた。
ヘベ様は嬉しそうに、なまず様のぷにぷにしたほっぺを指でちょんちょんつつきながら笑っていて、なんだか意外な組み合わせだけど、すごく和む光景だった。
別の方向を見ると、アポロン様とグラちゃんがリコリスちゃんを真ん中に座らせて、あーでもないこーでもないと何か難しい顔で話し込んでいる。
リコリスちゃんは時折困ったように眉を下げながらも、二人の話を一生懸命聞いているみたいで、その健気な姿にキュンとしちゃう。
ただ、ちょっと気になったのは、私のアポロンリングを見た時のアーサーさんの反応。
私の手首でキラリと光る腕輪に気づいた瞬間、目をカッ!と見開いて、それから眉間に深~い、深~いシワを刻んで、何かを絞り出すように「……まぁ、がんばれ」って、ぽつりと言ったんだよね。
え、なにその反応!?「がんばれ」って、何を?アポロンリングって、もしかして何かヤバいアイテムだったりするの!?
アポロン様はあんなにサラッと説明してたけど……。
アーサーさんのあの深刻そうな顔、絶対何か知ってるよね?うーん、気になる!
それからもう一つ不思議だったのは、パーティーなのに、虎子さんとヘベ様以外、誰もお酒を飲んでいなかったこと。
アレクさんが作ってくれるカクテルは全部ノンアルコールだったし、タモンさんなんて、あんなに豪快な見た目なのに、ずっとフルーツジュースを飲んでた。
不思議に思って、「皆さん、お酒は飲まないんですか?」って聞いてみたら、アポロン様はおろか、タモン様まで、なんだか遠~い目をして、「うーん、まあ、色々あってね。しばらくは禁酒してるんだ」って、歯切れの悪い返事。
アレクさんにもこっそり聞いてみたら「あー、まあ、その……ヘベ様のご機嫌を損ねたとだけ言っておく。せっかくのパーティーなのに俺たちが滅私奉公している事から、どうか察してくれ」と、遠い目で言われてしまった。
え、神様たちがお酒飲めないって、一体何があったの!?ヘベ様、どんだけ怖いの!?これも気になる!
でも、そんな気になることも吹き飛ぶくらい楽しかったのが、食事が一段落した頃にどこからか出てきたカードゲーム!
トランプと違ってかわいい鳥と数字が書いてあるカードで、ルールがちょっと変わってて、配られた手札を交換できない「大富豪」みたいな感じだった。
神様相手に勝てるわけないじゃんって思ったけど、神様同士の高度な(?)駆け引き、ブラフの応酬、一瞬の同盟と華麗な裏切りが渦巻く中、そんな激戦の戦場をうまく潜り抜け優勝したのはなんと、意外や意外、リコリスちゃん!
最後の一枚を場に出した瞬間、リコリスちゃん、ぴょんぴょん跳ねて喜んでて、それがもう、めちゃくちゃ可愛かった!
言葉は話せないけど、全身で喜びを表現してるリコリスちゃんを見て、私もなんだか嬉しくなっちゃった。
そんな感じでワイワイ盛り上がっているうちに、いつの間にかグラちゃんがシモさんの隣で目をショボショボさせて、小さくあくびを始めた。
それを見て、なんとなくお開きの雰囲気になった。
虎子さんは、最初こそタモンさんと楽しそうに話していたけど、後半はなんだか静かだったな。
もしかして、お酒を飲みすぎちゃったのかな?
帰り際にちらっと見えた横顔が、ほんのり赤く染まっていて、なんだかゾクッとするほど綺麗だったのを、私は見逃さなかった。
ドキドキしちゃった。
ヘベ様は、パーティーが終わって帰ろうとした時に、そっと私のそばに来て、「アカリ、今度、私のお店にいらっしゃい。美味しいカクテル、ごちそうするわ」って、ウインクしながら誘ってくれた。
うわー!社交辞令かもしれないけど、嬉しい!絶対行く!
みんながそれぞれ「またねー!」とか「おやすみー」とか言いながら会場を後にして、残ったのはアーサーさんとアレクさん、そして私たち三人。
リコリスちゃんは片づけを手伝いたそうだったけど、アーサーさんが「パーティーの主役に片づけは絶対させない、早く帰って寝ろ」と頑として譲ってくれそうになかった。
リコリスちゃんは後ろ髪をひかれる顔をしていたけど、なまず様が「うむ、リコリスよ、心配はいらん。次回、今回の分も上乗せして手伝えばチャラじゃ。」みたいなことを言った。
リコリスちゃんは納得したのか、アーサーさんに深いお辞儀をしてたみたい。
私は、どうしても一つ確認しておきたいことがあったから、なまず様とリコリスちゃんに「ちょっと先に帰っておいて!」とお願いして、先に喫茶店に戻ってもらった。
パーティーの後片付けをしているアレクさんの元へ、私は駆け寄った。
アレクさんは、壁に貼ってあった「WELCOME なまず御一行様」みたいな、手作り感あふれるボードを剥がしている最中だった。 その背中に向かって、私は、ほとんど確信に近い、でもやっぱり少しだけ不安な気持ちを込めて、質問を投げかけた。
「アレクさんって、もしかして……アレクシ大統領、ですよね?」




