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異世界で喫茶なまずはじめました。  作者: カニスキー
第二章 新しいお友達
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034 アカリ、リコリスを探す

034 アカリ、リコリスを探す

 

「リコリスちゃん? どこー? 」

 お店の中を探してみるけど、やっぱりいない。

 さっきまで、すぐ後ろにいたはずなのに!

 試着室のカーテンを「失礼しまーす!」って言いながら片っ端から開けてみるけど、空っぽ。

 他のお客さんにぶつかりそうになりながら、隅から隅まで探したけど、リコリスちゃんの姿はどこにもなかった。


「ねえ! ナマズさま! リコリスちゃんがいないんだけど! どうしよう! 」

 頭の上で呑気に「ふむ、この店の天井はなかなか趣があるのう」とか言ってるナマズさまを引っ掴んで叫ぶ。


「む? いない? おかしいのぅ、確かにさっきまで気配はあったはずじゃが……どこぞの服の陰にでも隠れておるのでは?」

 ナマズ様もようやく焦ったようにヒゲをピクピクさせる。


「『はずじゃが』じゃないよ! 本当にいないの! 隠れてる場合じゃないでしょ! どっか行っちゃったのかな!? まさか、迷子とか!?」

 いや、それだけならまだいい。

 もしかして、何か事件に巻き込まれたとか……?

 誘拐!?

 人身売買!?

 異世界だよ?

 さっきだって、ちょっと怖そうな人もいたし……!


 どんどん悪い方に考えてしまって、心臓がバクバクしてくる。

 冷や汗が止まらない。

 涙が滲んできた。

 リコリスちゃん、無事でいて…!


「おおっ! そうじゃ! 閃いたぞ、アカリ! ワシとしたことが、すっかり忘れておったわい!」

 突然、頭の上でナマズ神がポンとヒレを打った。

 その効果音、自分で鳴らしてないか?

「な、何!? 何か分かったの!? 早く言って!」

 藁にもすがる思いでナマズ様を見る。


「うむ! リコリスが持っておる、あの鍵のロケット! あれはただのロケットではない! あれにワシが探知マーカーを仕掛けておいたんじゃ!これでどこにいるか分かるはずじゃ!」

  ナマズ様が、これ以上ないほどのドヤ顔で言った。

「え!? マジで!? すごいじゃんナマズ様! さっすがー! やればできる子! いや、できるナマズ!」

 思わずナマズ様を褒めちぎる!

 やるじゃん、このナマズ! ただの置物兼抱き枕じゃなかった!

 疑ってごめん!


「早く! リコリスちゃんを探して!」

 私は興奮してナマズ様を急かす。

「うむ! 任せておけ! ワシの索敵能力、見せてやろう! スイッチ、オンじゃ!」

 ナマズ神が目を閉じて集中し始めた。


 ヒゲがピクピクと激しく動く。

 なんか、ちょっとだけ神様っぽい…かも?

(ふむ……マーカーの反応は……近いな……。ん? 近すぎる……? まるで、ワシのすぐそば…? まさか……ここか?)

  ナマズ様が、自分の首元(?)を探り始めた。

 リコリスちゃんが作ってくれたという、例の可愛らしいポーチの中から、ごそごそと何かを取り出す。

 ……それは、古びたロケット。

 リコリスちゃんが大事そうに首にかけていた、あのロケットだった。


「……」

「……」


 しーーーーーーーーーーーーん。


 沈黙。

 時が止まった。


「……ねえ、ナマズ」

「……なんじゃ、アカリ」

「そのロケット……なんでナマズがドヤ顔で持ってるの?」

「……ああ、そういえば。リコリスに『ちょっと貸してくれ』と言って鍵にマーカーをつけるからと預かったまま、返すのをすっかり忘れとったわい。いやー、うっかりうっかり。このポーチもリコリスが作ってくれたんじゃ。可愛かろう?」


 可愛かろう? じゃねーーーーーー!!!!!!!!

「このド低能ポンコツ役立たずぬるぬるヒゲ魚がああああああああああああああああっ!!!!!」


 私の中で、最後の理性とか、神様への最低限の敬意とか、そういうものが完全に、粉々に砕け散った音がした。

「忘れんなばかなまず! マーカー仕掛けた本人が持っててどうすんのよ! 返さなきゃ意味ないでしょ!」

「わ、忘れとったわけではない! 戦略的保持じゃ! 思い出すのに時間を要しただけじゃ! 神の思考は凡俗とは違うのじゃ!」

「うるさい! このぬるぬるヒゲ! アンタのせいでリコリスちゃんが!」

「ぬるぬるは関係なかろうが! ヒゲもじゃ!」


 私はナマズ神の口元(?)をむにーっと限界まで伸ばし、ナマズ神は私の脇腹あたりを尻尾でペチペチ叩いてくる。

 異世界のおしゃれな服屋さんのど真ん中で、彼シャツ姿の女子高生とナマズの史上最低レベルの取っ組み合いが始まった。

 周りの異世界人たちがドン引きしてる視線が痛い!


「はっ! 喧嘩してる場合じゃなかった!」

 我に返る。

 そうだ、リコリスちゃんを探さないと!


「ねえ、ナマズ! なんかこう、もっとすごいレーダーみたいなのできないの!? GPSとか! サーモグラフィーとか! 神様なんでしょ!」

「むぅ……まあ、できんこともないが……。ワシ、お主の召喚でだいぶ疲れとる空の。あまり使いたくないんじゃが……仕方あるまい。リコリスのためじゃ…」


 ナマズはぶつぶつ言いながらも、再び目を閉じて集中し始めた。

 今度はさっきより真剣な顔つき(に見える)。

 ヒゲの動きもさっきより激しい!


(ふむ、店内には……店員の気配が一つ、ワシら以外の客が六つ。奥の倉庫に二つ……。どれもリコリスではないな……探知範囲を広げるぞ……。半径100……いや、500……うぬぬぬ……もっと広範囲か…? 1キロ…! むむ……反応がないな……。少なくとも、この半径1キロ圏内にはリコリスの気配はないぞ。)

  「1キロ以内にいないって……そんな!?」

  じゃあ、どこ行っちゃったの!?

 そんな短時間で!?


「店員さんに聞いてみよう!」

 私は近くにいた店員さん(ふわふわのウサギの耳が生えてる)に駆け寄って、リコリスちゃんのことを聞いてみる。

 身振り手振り、「金髪!」「天使!」「美少女!」「ソーキュート!」

 ナマズに通訳(?)してもらいながら必死に説明したけど、店員さんは困った顔で首を横に振るだけ。

「Sorry, I haven't seen a girl like that.(そんな娘さんは見ていない)」って。

 やっぱり英語かーい!


 どうしよう……。

 本当にどこ行っちゃったの……?

 もうダメかも……。

 その時だった。


「アカリさん? なまず様? どうかされましたか?」

  虎子さんとアーサーさんが、大量の買い物袋と巨大な木材を抱えてお店に戻ってきた。

 虎子さんの隣で、アーサーさんが大きな木材の束を抱えている。

 お帰りなさい!

 待ってた!


「虎子さーん! アーサーさーん!」

 私は泣きながら二人に駆け寄って、リコリスちゃんがいなくなったことを必死で説明した。

 私の話を聞いて、虎子さんの顔からさっと血の気が引き、アーサーさんも「何!?」って感じで目を見開いて息をのんだ。

「まあ! 大変! リコリスさんが!? すぐに探しに行きましょう!」

 虎子さんが買い物袋を放り出してお店を飛び出そうとする。

 その時、アーサーさんが、珍しく大きな声で私たちを呼び止めた。


「"Wait! Rushing out blindly is dangerous!"」

(待て! 闇雲に飛び出すのは危険だ!) って感じ?


 アーサーさん、意外と冷静!

 アーサーさんは、すごくすごく面倒くさそうな、でも決意を秘めたような顔をして、自分の腕につけているシンプルな銀色の腕輪にそっと触れた。

 そして、深いため息をつきながら、呟いた。


「"...Apollo, I'll owe you one. ...Need your help." 」

(…アポロン、貸し一つだ。…助けてくれ)



今日のまとめ

リコリス、?

アカリ、慌てる

なまず、慌てる

虎子、買い物後、慌てる

アーサー、冷静に慌ててアポロンに連絡する

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