032 アカリ、異世界の町へ行く
032 アカリ、異世界の町へ行く
タモン様のところから診療所の前に戻ったら、ちょうどアーサーさんも買い物かごを持って診療所から出てきたところだった。
顔には相変わらず「めんどくさい」って書いてあるけど。
「む、アーサー。お主も街へ行くのか? 奇遇じゃのう!」
ナマズ神がリコリスちゃんの腕の中から声をかけると、アーサーさんは地球の核まで届きそうな深ーいため息をついて頷いた。
やっぱりパーティーの買い出しらしい。
「"Apollo said, 'Money is mine, cooking is yours.' Damn that flashy god... He even gave me a ridiculously long shopping list! Does he think I'm his personal servant!?"」
(アポロンめ、「金は僕が出すから、料理は君が作ってね」だと。あのキラキラ外道神め…! しかも、アホみたいに長い買い物リストまで渡しやがって! 俺を召使いか何かと勘違いしてるんじゃないか!?)
("And he added, 'While you're at it, invite everyone in the neighborhood. The invitation is mine, the cooking is yours.' My clinic will be overrun...")
(おまけに、「ついでに近所の人たちも招待してね。招待状は僕が出すから、料理は君が作ってね」だと。)
アーサーさん、めっちゃ英語で悪態ついてる…。
なまず様が言うには、アポロン様、お金は出すけど料理はアーサーさん任せで、しかもパーティーには近所の人まで呼ぶって…それは大変だわ…。
同情する…。
(でもパーティーは楽しみ!)
結局、アーサーさんも一緒に行くことになった。
アーサーさん、リコリスちゃんや私には、たまーに優しい視線を送ってる気がする。
気のせいかもしれないけど。
ツンデレなのかな?
そうそう、虎子さんがアーサーさんに私の服について相談してくれた。
虎子さんも英語しゃべれたんだ!
すごい!
できる女って感じ!
しかも超美人だし!
アーサーさんは、またやれやれって感じでため息をついて、
「"I don't have any women's clothes... Well, you can borrow mine if you want."」
(女ものの服なんて持ってないぞ、まぁ、俺のでよければ貸すが)
って、ちょっとぶっきらぼうに自分の服を貸してくれた。
わーい! アーサーさんのシャツ!
ゲットだぜ!
体格が違いすぎて、ただのシャツなのに膝丈ワンピースみたいになっちゃったけど、これって、噂に聞く『彼シャツ』ってやつだよね!?
まだ彼氏じゃないけど!
いや、そもそも言葉通じないけど!
でも、なんかドキドキする!
アーサーさんに気付かれないように袖口をくんくんしてみた。
なんか、消毒液と…ハーブ? ミントみたいな爽やかな匂い? それに、ちょっとだけ危険な雄の匂いがした気がして、さらにドキドキする!
やばい、ちょっとクセになりそう…。
しばらく石畳の道を歩く。
道の脇には見たことない植物がいっぱい生えてて、「ピギャー!」とか「ケケケケ!」とかいう不気味な鳴き声の鳥が飛んでる。
異世界って感じ!
アーサーさんは薬草を見つけてはメモしてる。
さすが医者!
真剣な横顔もカッコいい…。
私とリコリスちゃんは、虎子さんの少し後ろを歩く。
アーサーさんのシャツ、ぶかぶかだけどガウンより全然マシ!
風が吹いても安心!
ちょっと袖が長すぎるけど…。
虎子さんが優しいから、だいぶ落ち着いてきた。
同じ日本人(?)ってことで、話しかけてみた。
「あの、虎子さん……でしたよね? 虎子さんって、日本のどの辺に住んでるんですか? 私、埼玉なんですけど! 」
「ええ……わたくしは、越後の国におりますわ」
えちご?
新潟とか?
なんか、すごい昔の言い方じゃない?
もしかして、歴女ってやつ?
「埼玉……でございますか? 申し訳ありません、そのような呼び名は存じ上げませんで……。わたくしの住まいは、春日山というお城の近くになりますのよ」
かすがやま城!?
お城の近くってすごい!
本物のお城!?
「へー、お城の近く! すごーい! 私のうちなんて近所にスーパーすらないんですよ!」
「まぁ、でも普通が一番と言いますし」
「好きな食べ物とか、なんですか? 私は断然、ラーメンと寿司! あ、あとかつ丼!」
「左様ですわね……やはり、白いご飯が一番好きですわ。あとは、質素なものでも、心のこもった手料理であれば何でも美味しくいただきますわ。食べられるということが、何よりの幸せですから」
白米ラブ! 一緒!
「ふりかけとか、納豆とかかけます? あ、生卵とか最強じゃないですか! TKG!」
「たまごを、火を通さずにいただくのですか? それは、少し……わたくしの知る限りでは、あまり一般的ではないように思いますけれど……食あたりなどは大丈夫なのでしょうか? 食べ物には気をつけねばなりませんから」
食あたりって…まあ、そうだけど…。
えー! TKG知らないの!?
人生損してる!
「今度教えてあげます! あ、スマホ持ってます? インスタやってます? LINE交換しません?」
「すまほ…? いんすた…? らいん…? わたくしは、そのような物に詳しくなくて…」
本当に詳しくないみたい、虎子さん、完全にフリーズしてる。
スマホしらないなんて、そんな事ってある?ってリコリスちゃんを見てみたら、なぜかモジモジしながら私たちを眺めてた。
リコリスちゃんは言葉を話せないから会話に参加できなかったのかな?
そっか!
虎子さんが通訳してくれれば、リコリスちゃんと女子トークできるじゃん!!
そうと決まれば女子会だぁ!
私はリコリスちゃんからなまず様を取り上げて、アーサーさんに押し付けた。
二人?とも嫌そうにしていたけど、女子会に男子は禁制なのだ!
それからの道中、虎子さんの通訳でリコリスちゃんといっぱい話せた。
ちなみにリコリスちゃんは15歳、虎子さんは21歳らしい。
そうかぁ・・・15歳か・・・なぜだかリコリスちゃんの胸から目が離せないでいた。
そうこうしてるうちに、周りに怪しげな露店とか建物が増えてきて、人も増えてきた。なんか、空気の匂いが変わってきた。街の中心に近づいてるんだ! そして、大きな通りに出た瞬間―――
「うわあああああああっ!!! な、な、な、何これぇぇぇぇぇっ!?!? ファンタジーが渋滞してるぅぅぅぅ!!」
思わず叫んじゃった! だって、目の前の光景がすごすぎるんだもん!
獣の耳とか尻尾が生えてる人!
二足歩行の猫みたいな人?!
トカゲみたいな顔の人もいる!
いろんな人が普通に歩いてる!
空には掃除機みたいなのに乗って人が飛んでるし!
街灯はキラキラ光る水晶だし!
建物は石とか木だけじゃなくて、巨大キノコとか動く植物とかもある!
パンとかスパイスとか花の匂いとか、変な匂いもいっぱい混ざってる!
いろんな声や音も聞こえる!
知らない言語ばっかり!
カオス!
でも、すごい活気!
「す、すごい……! 何これ! マジ異世界じゃん……!! ファンタジー! ラノベの世界だ! やばい! 超テンション上がる!! あ、見て! エルフ耳の人! イケメン! 本物!? うわー! こっちには猫耳! 可愛い! もふもふしたい! あっちにはゴーレム!? デカっ! 動くんだ! 写真撮りたい! スマホスマホ…って、ないんだった! 最悪! こんな時に限って! 」
もう、ぶかぶかの彼シャツ(仮)姿の恥ずかしさなんて吹っ飛んだ!
目がキラキラしちゃう!
キョロキョロしちゃう!
ここが異世界! 私の新しい生活が始まる場所なんだ!
やれやれ、って感じでアーサーさんは人混みを歩いてるけど、
「"Alright girls, stick close now. This area seems a bit... unsafe." "And keep an eye on your surroundings, okay? Don't want anything happening to you."」
(よし、おまえたち、近くにいろよ。この辺りは少し…物騒なようだ。周りにも気をつけるんだぞ? 何かあっては困るからな)
とか(たぶん英語で)注意しながら、ちゃんと私たちからはぐれないように距離を保って歩いてくれていた。
意外と面倒見いいのかも?
私はもう大興奮! 早く服を買って、この街を探検したい!
虎子さん、どこに連れてってくれるのかな?
ワクワク!
できれば、可愛い服がいいな!
彼シャツもいいけど、やっぱり自分の服が欲しい!
今日のまとめとか
アーサー、アポロンのお使いに出される
虎子、スマホ持ってない
アカリ、異世界に感動
リコリス、しゃべれないけど虎子の通訳で女子会する
自動投稿できてなかったので今投稿、お詫びに奥様と伊勢馬場を投稿してきます。
なまず、今回大人しい




