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異世界で喫茶なまずはじめました。  作者: カニスキー
第二章 新しいお友達
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025 アカリ、お風呂に入る

025 アカリ、お風呂に入る


 ふぅぅぅぅ……。生き返る……。


 診療所の奥にある、意外なほど広くて清潔なお風呂。

 いい香りのする泡々ソープで体を洗い、温かいお湯が、粘液まみれだった体を優しく包んでくれる。

 ようやく人心地ついた……。

 あのぬるぬるから解放されただけでも、天国だわ…。


 昨日から怒涛の展開すぎる。

 失恋の怒りからの神社で呪詛、ナマズ神との怪しげな出会い、掃除機もびっくりの謎の空間移動、粘液まみれの全裸ダイブ、そしてバスタオル一枚での羞恥プレイ……。

 ゆっくり考える暇なんて、全くなかった。

 私の人生、ジェットコースターすぎない?


 でも、こうしてお風呂に浸かっていると、ようやく実感が湧いてくる。

 私、本当に異世界に来ちゃったんだ……。

 今のところ、異世界っぽい要素は喋るポンコツナマズ神くらいだけど、外はどんな世界なんだろう?

 魔法とか、ドラゴンとか、本当にいるのかな?


 それに……。

 ナマズ神が言ってた『報酬の超絶イケメン』って、もしかしてさっきの診療所の先生のことなのかな?

 黒髪で長身、ミステリアスな雰囲気……確かに、かなりのイケメン! あの低くて落ち着いた声も素敵だったし!

 白衣ってのもポイント高い!

 診療所のお医者さんって安定してそうだし!

 ポイントも高いし!

 ぐへへ……。

 これはワンチャンあるのでは…?


 でも、英語なんだよなぁ……。

 言葉の壁は厚いぞ……。

 ジェスチャーで愛は語れる…?

 いや、無理か…。


 はっ! そうだ! ナマズ、私を召喚する時「もう二度とやらん」とか言って、すごい消耗してたみたいだったけど……。

 私、ちゃんと元の世界に帰れるの……?

 さっきまでのワクワク感が、急に冷たい不安に変わる。

 イケメンゲットしても、帰れなかったら意味ないじゃん!

 家族とか友達とか、学校とか…どうなるの?

 これ、もしかして結構ヤバい状況?

 期待で赤くなったり、不安で青くなったり。

 湯気の中で一人、百面相をしていると、そっと扉が開く音がした。


 そこに立っていたのは、さっきの天使みたいな美少女リコリスちゃんだった。

 手に畳まれた服を持っている。

 着替えを持ってきてくれたんだ!

 天使!

 女神!

 ありがとう!

「あ……」 なんて言えばいいんだろう。英語、通じるかな?

「えっと……さんきゅー? ベリー、サンキュー? あい……うぃる、ごー、すーん? ぷりーず、くろーず?」

 中学レベルの、しかも赤点ギリギリだった私のけなげな英語。

 これで伝わるのか……?

 文法とかめちゃくちゃだけど!

 すると、美少女ちゃんは私のしどろもどろな言葉を聞いて、ふわりと花が咲くように微笑んだ。

 青い瞳が優しく細められて……。


 うわ……。

 あまりの可愛さに、思わずポーッとしてしまう。

 同じ人間(?)とは思えない。

 天使だ……。

 ここに天使がいた……。

 女子だけど、惚れてしまいそうだ…。


「……って、いけないいけない!」

 慌てて気を取り直す。

 美少女に見とれてる場合じゃない!

「えっと、服、ありがとう!」

 今度は日本語で言ってみたけど、やっぱり美少女ちゃんはにっこり笑うだけだった。(やっぱり通じてないかー)


 差し出された着替えを受け取る。

 どんな服かな? 異世界の服ってどんなデザインなんだろう?

 ファンタジーな感じ?

 それとも意外と普通?

 ちょっとドキドキ……。

 ……って、これ、どう見ても病院とかで着る、あの、診察用のガウンじゃん!!

 しかも、ご丁寧に後ろじゃなくて前開きタイプ!

 ボタンじゃなくて紐で結ぶ、一番心もとないやつ!

 下着は……もちろん、ない!!

 ですよねー!!

 がーーーーん……。

 私の異世界ファッション、まさかのガウンスタイルからスタート…。

 どうやら、私、アカリの羞恥プレイは、まだまだ終わりそうにないみたいだった……。

 ナマズめ、覚えてろよ…。


 ……はぁ。結局、この薄くてペラペラの、防御力ゼロのガウン一枚でお風呂場を出る羽目になった。

 前がはだけないように、紐を固く結び、さらに手で押さえながら、みんながいるであろう気配の方へ、そろりそろりとカニ歩きのように歩く。壁伝いに進む不審者みたいだ…。

 廊下を進むと、一つの部屋から話し声……

 というか、あの間の抜けたナマズ神の声が聞こえてきた。


 ここかな?

  意を決して部屋に入ると、そこは食卓のあるダイニングキッチンみたいな空間だった。

 木の温もりがある、落ち着いた雰囲気。

 でも今はそれどころじゃない!

 丸いテーブルでは、あの診療所の主人の男の人と、天使のリコリスちゃん、そしてリコリスちゃんの膝の上のナマズ神が、カップを片手にお茶を飲んでいた。

 なんか和んでるし! ナマズなのにカップ持ってるんですけど?


「あ……」

 三人の視線が一斉に私に集まる。

 うぅ……やっぱりこの格好、恥ずかしい……!

 特にアーサーさんの視線が痛い!

 見ないで! でも見て! いや、見ないで!


  少し後ずさりしそうになった私に、診療所の主人アーサーさんが、静かにもう一つのカップを差し出してくれた。

 私の分も用意してくれてたみたい。

 …優しい。

 やっぱりイケメンは心もイケメンなのか…?

「あ、どうも……すみません…」

 促されるままに席につく。

 ガウンの裾が気になって仕方ない。

 差し出されたのは、綺麗な琥珀色をした温かい飲み物。

 紅茶かな?

 いい香り…。

 そっと口をつけると、ふわっと花のようないい香りが鼻に抜けた。

 美味しい……。

 なんだこれ、めちゃくちゃ美味しい!

 心が洗われるようだ…。

 これが異世界のお茶かぁ……。

 なんだか感慨深い。

 少しだけ、恥ずかしさも和らいだ気がする。(ガウン姿だけど)


 ほっと一息ついた、その時だった。

  突然、診療所の主人アーサーさんが、何かに気づいたようにピクリと眉をひそめ、持っていたカップをカタンと置いて顔を上げた。

 え? 何かあったの?

("Damn it! He wasn't supposed to come today!")

(ちくしょう! 今日は来ないはずだったのに!)

 え? なに?

 すごい流暢な英語で悪態ついてる?

 誰のこと?

 何かマズいことでも?

 そう思った瞬間、廊下に続く別の扉が、カチャリと音を立てて開いた。


 そして、そこから現れたのは―――

 後光が差しているのかと思うほど眩しいくらいの金髪をさらりとかきあげ、太陽みたいな明るい笑顔を浮かべた、とんでもなく整った顔立ちの男性だった。

 背も高くて、スタイルも抜群。なんかキラキラしたオーラが出てる!

 まるで、少女漫画から抜け出してきた王子様みたい。

 それも、一番人気のメインヒーロー的な!

 ……え? えええええええええええ!?

  超絶イケメン!!!!!!!!!

 ナマズ神が言ってたの、こっち!?

  アーサーさんじゃなくて!?

 いや、アーサーさんもイケメンだけど、こっちはなんか、こう、王子様感がすごい!

 キラキラしてる!

 私の理想のタイプにドンピシャなんですけど!?

 え、嘘!? マジで!?

 しかも、なんかこっち見て微笑んでる!?

  私に!?

 このガウン姿の私に!?

 どどどどど、どうしよう!?!?


今日のまとめとか

アカリ、全裸→粘液→バスタオル→診察用ガウン

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