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異世界で喫茶なまずはじめました。  作者: カニスキー
第二章 新しいお友達
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024 アカリ、マッパで異世界デビューする

024 アカリ、マッパで異世界デビューする


「そして、私、裸なんですけどぉおおおおおおおおおおおおおっっ!?!?」

 思わずほとばしった私の魂からの叫びに、目の前の天使みたいな美少女がびくりと肩を揺らした。


 あ、やば。

 驚かせちゃった。

 でも、これは不可抗力! 全身ぬるぬるの謎粘液まみれな上に、生まれたままの姿なんだから! 女子高生がこんな姿、人様に見せるなんて、あってはならないことなんだから!


 ふと見ると、さっきまで床でピクピクしていた巨大ナマズが、いつの間にかちゃっかり美少女の膝の上に移動してエグエグ泣いていた。

「もう二度とやらん……もう二度とやらん……。」

 ぶつぶつと弱々しい声で呟いている。


 ……って、あれ?

 さっき私、光の穴からぶちゅるるるって出てきたよね?

 で、目の前にこのナマズがひっくり返ってたってことは……。

 まさか、私、このナマズの……口から……?

 ゲロみたいに吐き出されたってこと!?


 ぞわわわわわわっっっ!!!

 全身に生理的な悪寒が走った。

 じゃあ、この全身にまとわりつく、ぬるぬるの粘液って……まさか……ナマズのヨダレとか、胃液とか、そういうバイオハザード的な液体じゃないでしょうね!?


 いやあああああ!

 最悪すぎる!

 文字通り、吐き気がする!

 おえええええ……!


 そんな私の内心の絶叫を知ってか知らずか、美少女は私の悲惨な姿を見て、すぐにハッとしたように頷くと、てきぱきと動き出した。

 どこからか大きな、ふわふわの高級そうなバスタオルを持ってきて、そっと私の肩にかけてくれる。

 うぅ……優しい……。

 天使だ、やっぱり天使だこの子!

 言葉は通じないみたいだけど、すごく気が利く子だ。友達になりたいタイプ!


「あの……(げほっ)」

  粘液のせいで声が変だ。

 とにかく、この不快感と羞恥心を一刻も早くなんとかしないと。


 膝の上でまだうなされているナマズ様?に声をかける。

「説明は後でいいから、まず服! 服をどうにかして! 女子高生がタオル一枚とか、事案発生レベルだから!」

 「む? 服とな? そういえば、お主、裸じゃったな。すっかり忘れとったわい」

 ナマズ神がかろうじて顔を上げる。

「すまんが娘よ、ここにはお主の着れるような服はないんじゃ……。なにせ、ワシとこの娘しか普段はおらんからのぅ。」


 はぁ!?

 ないってどういうこと!?

 じゃあ私、このタオル一枚で過ごせって言うの!?

 しかもナマズの粘液まみれで!

 冗談じゃない!

 風邪ひく!

 ていうか、精神的に死ぬ!あと社会的にも死ぬ!


 すると、私の鬼のような剣幕に気づいたのか、美少女が心配そうな顔で私を見て、おもむろに自分の着ているエプロンと、その下の簡素なワンピースを脱ごうとし始めた!

 えええええ!?

「ちょ、ちょ、ちょ! ストップ! いいって! 大丈夫だから! その優しさは嬉しいけど、さすがにそれはダメ!」

 慌てて手を掴んで止める。

 いやいやいや、いくらなんでも、この子にそんなことさせられない!

  優しすぎるにもほどがある!

 この世界、まともな子、この子だけなんじゃないの?


「うーむ、困ったのう……」

 ナマズ神がうーん、と唸る。

「……そうだ! 向かいに診療所があるんじゃ。そこの主に頼んで、風呂と着替えを借りてはどうじゃろうか? あそこの主なら、人間用の服も持っておるじゃろう」

「診療所?」

 向かいって……外に出るってこと?

 このタオル一枚で?

 しかも粘液まみれで!?

 変質者じゃん!

 通報される!


「まあ、そうなるのう……ほんの数メートルじゃ、気にするな)」

「絶対イヤ!」

 即答した。

 そんな格好で外に出るなんて、羞恥心で死ねる!

 ナマズには人間の羞恥心は分からんのか!


「まあまあ、落ち着け。それに……」

 ナマズ神は、にやり、と悪戯っぽくヒゲを揺らして言う。

「約束の超絶イケメンがおるかもしれんぞ?」

「……!」


 報酬の……超絶イケメン……!

 イケメンという単語に心臓がトクンと跳ね上がる、が、冷静に考えるとダメダメダメ、どんなイケメンでも初対面が粘液まみれのバスタオル女は引くでしょ!

 ドン引きでしょ!


 うーん、と唸って考えていると、私の頭から白いモヤが立ち込めてきた。

 え?

 なにこの煙?

「あっ、その粘液、もしかしたら皮膚とか溶かしちゃうかもしれん!まぁ、大丈夫じゃ、直ちに影響は無い!」

 馬鹿野郎!

 何が直ちに影響は無いだ!

 げんに煙が出てるじゃない!


「わわわわわ!もう、分かったから!早く!お風呂借りに行こう!!」 (もうどうにでもなれ!)

(うむ、話が早くて助かるわい。さすがワシが見込んだ娘じゃ!)

 こうして、私、美少女、美少女に抱っこされたナマズ神の奇妙な一行は、いろんな意味で覚悟を決めて、喫茶店を出て、向かいの診療所へと向かうことになった。


 粘液のぬるぬる感と、タオル一枚の心許なさ。

 風が吹くたびにスースーする!

 ヤバい!

  道行く人の視線が怖い……と思ったけど、幸い、外には誰もいなかった。


(この世界、人通り少ないの? それとも、たまたま?)

 それでも、背中に突き刺さるような(気がする)視線に、落ち着かないことこの上ない!

  早く建物の中に入りたい!

 ようやく診療所らしき、ちょっと古風な木の扉の前に着く。

(なんか、雰囲気ある建物だな…)

  美少女ちゃんが、こんこん、と控えめにノックした。

 少しの間があって、ぎぃ、と重い音を立てて扉が開く。 そこに立っていたのは―――


 すらりと背の高い、黒髪で、少し癖のある髪を無造作に流した、彫りの深い顔立ちの外国人の男性だった。

 白衣を着ている。切れ長の目が、じっとこちらを見据えている。

 うわ……。

 なんか、すごい威圧感……。

 そして、イケメン!!

 え、この人が、もしかして……!?

 すると、美少女の腕の中のナマズ神が、すっと前に出て、その男性に向かって話し始めた。


("Sorry, Arthur. Could you lend us your bath and some clothes for this girl? She's naked because I just summoned her.")

(すまない、アーサー。この娘の為にお風呂と服を貸してくれないか? 召喚したばっかりなんで裸なんじゃ)


 ……え? えええええええ!?

 いま、なんて? 英語!?

 しかも、めっちゃ流暢!

 ネイティブスピーカーもびっくりなレベル!

 ナマズのくせに!?

  あんた、さっきまで日本語だったじゃん!

 なんで急に!?


 目の前の男性は、私たちの姿(特に粘液まみれでタオル一枚の私)と、流暢な英語を話すナマズを交互に見て、ふぅ、と諦観に満ちた深いため息をついた。

 そして、面倒くさそうに、しかし静かに英語で答えた。


("...Alright. Come on in. Don't make a mess.")

(…分かった。入れ。汚すなよ)


 ……やっぱり英語だ!

 え、嘘でしょ?

 この世界って、もしかして英語が公用語なの!?

 私、英語なんて中学レベルで止まってるんですけど!

 赤点ギリギリだったんですけど!

 リスニングなんて壊滅的だったんですけど!

 顔がさーっと青ざめていくのが自分でも分かった。

 イケメンどころじゃない!

 言葉が通じないんじゃ、コミュニケーション取れないじゃん!

 恋も始まらないじゃん!

 ナマズの言ってた「引き合わせる」って、ただ会わせるだけってこと!?

 サポートゼロ!?

 ポンコツナマズめぇぇぇぇ!


 絶望に打ちひしがれる私をよそに、男性は「中へどうぞ」とでも言うように、顎で診療所の内部を示し、私たちを招き入れた。

 私の異世界ライフ、開始10分で詰んだかもしれない……。


今日のまとめとか

アカリ、マッパ+粘液まみれ+バスタオルでスタート

喫茶店が再生してから三日くらいたっています。

簡単な日常品はアーサーが差し入れしてくれてます。

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