表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で喫茶なまずはじめました。  作者: カニスキー
第一章 始まりの物語
14/101

014 なまず、場所を移動する

014 なまず、場所を移動する


 ワシが呆れて見ておると、筋肉男――タモンが、気絶した金髪男――アポロンをゴミ袋でも扱うかのように軽々と担ぎ上げ、何か周囲に話しかけておる。

 黒鎧の男や鉄甲の男にも声をかけておるようじゃ。

 ワシには言葉は分からぬが、どうやら場所を移動する相談をしておるようじゃった。


 まあ、そうじゃろうな。

 こんな瓦礫の中でゆっくりする場所などありはせん。

 ワシのような高貴な神が、このような場所で長居するのは相応しくないからのう。


 話がまとまったのか、タモンがワシに向き直り、「少し移動しますので、少々お待ちを」と声をかけてきた。

  ワシは尊大に頷いて見せる。


 どうやら、少し離れたところにある鉄甲の男――アレクとか言ったか?――の建物は無事だったらしく、そこへ行くことになったようじゃ。

 しかし、当の鉄甲男は、何やら必死に首を横に振って拒否しておる。

 顔面蒼白じゃぞ? そんなに嫌なのか?


 いつのまにか復活しておった金髪男に馴れ馴れしく肩を組まれて何か説得され、最後にはガックリと肩を落として渋々頷いておったが……。

 そんなに自分の家(?)に行くのが嫌なのかのう?

 もしかして、よほど散らかっておるのか?

 それとも、何か隠し事でも?

 よく分からん奴じゃ。

 まあ、ワシには関係ないことじゃが。


 さて、移動しようか、というまさにその時じゃった。

 ドガァン! 少し離れた瓦礫の山が、突然爆発したかのように吹き飛び、中から小さな影が飛び出してきた!

 あれは……ぴょこぴょこ動く犬の耳とワシのような翼を持つ、不思議な少女ではないか!

 昨夜、ワシが助けた娘とはまた違うようじゃが……。


 その犬耳少女は、一直線に、気を失って横たえられている男――シモと呼ばれていた青年の元へ駆け寄ると、その体に泣きながらしがみついておる。

「シモー! シモー!」と叫んでおる。

 ふむ、よほど心配だったのじゃな。


 ワシが「おや?」という感じでそちらを見ていると、犬耳少女はワシの視線に気づき、ヒッと小さな悲鳴を上げて怯えたように後ずさった。

 そして、恐怖に顔をしかめながらも、その小さな体でシモと言う青年を隠す様に守る。

 まるで、ワシが何か悪さでもするかのように!


 む? ワシ、何かしたかのう?

 ただ見ておっただけじゃぞ?

 ワシは子供には優しい神なのじゃが?


 ワシは怖くないよぉーと、ヒレをピコピコと揺らして人畜無害なナマズだと伝えておるのだが、犬耳少女はこの世の終わりのような顔でがくがくと震え始めた。

 え?大丈夫か?ちょっと心配するくらい震えておるぞ?

 犬耳少女がわあわあと騒いでおったせいか、その声に反応して、黒い鎧の男と、ワシが助けた金髪の少女も、むくりと身を起こした。


 二人とも、まだ状況が飲み込めていないのか、キョロキョロと周囲の惨状を見回しておる。

 まあ、無理もない。

 ワシですら驚いたからのう。

 ふむ。

 黒い鎧の男はどうでもよいが、少女の方は元気そうで何よりじゃ。

 顔色も昨夜よりは良さそうじゃな。

 一瞬、少女と目が合ったが、今度は特に怖がられる様子はなかった。

 ふう、また気絶されたらどうしようかと思ってしもうたぞ。


 皆が目を覚ましたのを確認していると、今度は犬耳少女にしがみつかれていたシモという男が、「ん……」と小さく呻いてゆっくりと目を開けた。

 それを目にした犬耳少女は、今度は安堵からか、わっと大声で泣き出した。

 涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら、シモの胸に顔をうずめておる。

 子供は感情表現が豊かじゃのう。

 あの金髪阿呆とは違う意味で。


 シモという男は、まだ少し朦朧としているようじゃったが、そんな少女の頭を優しく撫で、慈愛に満ちた穏やかな瞳で少女を見つめていた。

  言葉は交わさずとも、深い繋がりがあるのじゃろうな。

 ふむ、なかなか良い雰囲気じゃ。


 ワシらが本格的に移動を始めようとすると、犬耳少女とシモという男は、さっと立ち上がり、互いを支え合うようにして、そそくさと瓦礫の向こうへと歩き去って行った。

 どうやら、彼らは自分たちの家へ帰るようじゃ。

 あっさりしたものじゃな。


 タモンがどこからか持ってきた大きなたらいに水を張り、ワシをそっとその中に入れた。

 おお、これは快適じゃ!

 なんかしっくりくるの!

 まあ、陸上をペタペタ歩くよりは楽じゃろう。

 タモンとやら、なかなか気が利くではないか。


「では、参りましょう」

 タモンがそう言うと、ワシの入った盥をまるで羽毛でも運ぶかのように軽々と持ち上げ、歩き始めた。

 その後ろを、また復活したアポロンに肩を貸された黒い鎧の男、そして死刑場に引かれていく罪人のような顔をした鉄甲男が続く。

 少女は少し不安げに周囲を見回しながら、タモンの後をついていく。


 しかし、鉄甲男の足取りは、やはり重そうじゃった。

 一歩進むごとに、深いため息をついておる。

 よほど自分の家(?)に皆を連れて行くのが嫌らしい。

 そんなに汚いのか?

 それとも、何かよほど恥ずかしいものでも隠してあるのか?

 例えば、大量の少女趣味のぬいぐるみとか…?


 くくく、想像すると面白いわい。

 そのあまりにも哀れな姿に、ワシは少しだけ同情した。

 よし、昨夜ワシに襲いかかってきた無礼は、許してやることにしよう。

 がんばれよ、鉄甲男。

 ワシは盥の中から、ぷるぷるとヒレを震わせながら、そっとエールを送ってやったのじゃった。



今日のまとめとか裏話

なまず、じつは子供にやさしい

タモン、毘沙門天=多聞天→タモン


世間への被害について、大規模戦闘に入る前、アポロンとタモンが遅れたのは、周囲に位相結界と言う燃費がシャレにならない結界を張っていた為です。

アポロンとタモンの神力貯金を犠牲に周辺の住民の安寧は守られたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ