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異世界で喫茶なまずはじめました。  作者: カニスキー
第一章 始まりの物語
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010 アーサー、アポロンに助けられる

010 アーサー、アポロンに助けられる


 内心で悪態をつきながらも、その神々しいまでの姿に、安堵と、そしてほんの少しだけ、自分の無力さを突きつけられるような悔しい気持ちが湧き上がるのを、オレは感じていた。


「さあ、行こうか、タモン君!」  

 アポロンが、あの筋骨隆々の男――タモン様に声をかける。

 タモン様もアポロンと同じ、毘沙門天という神様らしい。  


 タモン様は無言で、しかし大地に根を張る大樹のように力強く頷くと、アポロンと共に再び龍へと向き直った。

 その背中には、揺るぎない自信が満ち溢れている。

 まるで嵐の前の静けさのようだ。


「■■■■■■■■■ッッ!!」

 光の矢に焼かれ、タモン様に殴られた龍は、完全に理性を失い、怒りのままに狂ったように暴れ始めた!

 その巨大な口から、雷とも水ともつかない禍々しいエネルギーの弾丸が、文字通り雨霰あめあられと放たれる!  

 周囲の建物が紙細工のように抉られ、石畳の地面が砕け散り、爆風と粉塵が渦巻く凄まじい破壊の嵐が吹き荒れる!


 だが、アポロンとタモン様は、その猛攻をまるで優雅な舞踏でも踊るかのように、軽やかに、そして華麗にいなしていく。

 アポロンは指先一つで黄金の障壁を展開し、雷撃をこともなげに弾き返しては「やれやれ、品がないねぇ」などと呟き、タモン様は最小限の動きで水の弾丸を避け、時にはその剛腕で衝撃波ごと薙ぎ払い、叩き落とす!


 これが、神の力…! 次元が違いすぎる! オレやアレクが束になっても掠り傷一つ負わせられなかった相手を、こうも容易く…!

 これが、神話の世界の戦いか……!


 二人は着実に龍を追い詰めていく。  

 アポロンの放つ光の矢が龍の硬い鱗を砕き、タモン様の重い拳がその巨体を揺るがす。

 龍は必死に抵抗するが、その動きは明らかに鈍り、消耗しているのが見て取れた。


「よし、タモン君、そろそろフィナーレと行こうか!」

 アポロンが芝居がかった口調で言うと、タモン様は大きく頷き、両の拳に凄まじいエネルギーを集中させ始めた。

 空気がビリビリと震え、地面が唸りを上げる!

 大技を仕掛ける気だ!

 龍もそれを感じ取ったのか、最後の抵抗とばかりに、再び口内に巨大なエネルギーを溜め込もうとする!


「させないよ」  


 アポロンが優雅に微笑むと、パチン、と軽やかに指を鳴らした。

 その瞬間、天から降り注ぐかのように、先程よりもさらに巨大な、太陽そのものを凝縮したかのような光の矢が現れ、龍の喉元から胴体にかけて深々と突き刺さった!


「■■■■■ッッ!!」  

 龍は動きを封じられ、苦悶の絶叫を上げる!

「今だ、タモン君! 派手に決めてくれたまえ!」

 アポロンの合図と共に、タモン様の拳が解き放たれた!

 その拳から放たれたのは、もはや単なるエネルギーではない。

 世界そのものを浄化するかのような、眩いばかりの光の柱だった!


 光の柱は、身動きの取れない龍を完全に飲み込み、天へと昇っていく。

 凄まじい光と衝撃波に、オレとアレクは思わず腕で顔を覆った。

 視界が真っ白に染まる。

 やがて光が収まると、そこにはもう龍の姿はなかった。

 完全に消滅したのか……?


「やれやれ、思ったより手こずらせてくれたね。まあ、私の敵ではなかったけれど」

 アポロンがやれやれと肩をすくめ、ふわりと金髪をかき上げるような仕草を見せる。

 …少しイラッとするのはなぜだろうか。

 タモン様は黙って拳の埃を払っている。

 そして二人は、まるで散歩でも終えたかのように、優雅な足取りで、消耗しきったオレとアレクの方へ歩いてくる。


「大丈夫かい? アーサー君、アレク君。まあ、私たちが来たからにはもう安……」  

 アポロンがキザな仕草で手を差し伸べようとした、その時だった。


ゴゴゴゴゴ……

 先ほど光の柱が昇っていった空間が、不気味に歪み始めた。**まるで空間そのものが悲鳴を上げているようだ。

 そして、その中心から……


「……へ?」

 アポロンが、今まで聞いたこともないような、間の抜けた声を出した。

その完璧な表情が、初めて崩れる。


 光の柱の残滓の中から、ぬらり、と現れたのは、先程よりもさらに巨大化した……二つの頭を持つ龍だった!

 一つの首が消滅した代わりに、二つの首が生えてきやがった!?

 しかも、その体から放たれる邪気と圧力は、先程の比ではない!

 肌が粟立つ!

 呼吸すらままならない!


「嘘だろ……!?」

 アレクが呻く。

 オレも言葉を失う。

 悪夢だ。

 悪夢以外の何物でもない。


 二つの頭を持つ龍は、それぞれの口を大きく開き、凝縮された破壊のエネルギーを同時に吐き出した!   

 二条の極太の閃光が、オレたち目掛けて迸る!


「くっ!」

「まずい!」

 アポロンとタモン様が咄嗟に前に出て、巨大な黄金色のバリアを展開する!

 凄まじいエネルギーがバリアに衝突し、空間全体が軋むような轟音が響き渡る!

 バリアはなんとか持ち堪えているが、細かくヒビが入り、今にも砕け散りそうだ!

 そして、そのバリアを維持しているアポロンとタモンの顔が、初めて見るほどに真っ青になっている! 額には滝のような汗が滲んでいる!

 神であるはずの彼らですら、防ぎきるのがやっとだというのか!?


「な、なんなんだい、これは!? さっき倒したはずだろう!? なんで二つ首になってパワーアップしてるんだい!? まるで怪獣映画じゃないか! ちょっと非現実的すぎるよ!」

 アポロンが、バリアを必死に維持しながら、半ばパニック気味に叫ぶ!

「アーサー君!!」

 アポロンが、必死の形相でオレを見る!

「花屋だ! すぐそこの角にある、いつもの花屋! グラ嬢を呼ん来てくれ! 彼女ならなんとかできるかもしれない! 早く!!」


 いつもの花屋のグラ嬢!? あの、ぴょこぴょこ動く犬のような耳と背中に小さな翼を生やした、まだ10歳くらいの女の子か!

 ただ者ではないとは感じていたが……まさか、この神々すら手こずる状況を打開できるというのか!?

 アポロンが頼るほどの存在だというのか!?

 疑問は尽きないが、アポロンのあの必死な形相を見れば、一刻を争う事態なのは明らかだ!


「わ、分かった! グラ嬢だな! すぐに呼んでくる!」

 オレは最後の力を振り絞って立ち上がり、よろめきながらも駆け出した!

 目指すは、角の花屋!  背後では、神々がギリギリの攻防を繰り広げている!

バリアが軋む音が聞こえる!

 なんだかよく分からんが、今はアポロンの言葉を信じるしかない!

 頼む、グラ嬢!

 あんたがどれほどの力を持っているのかは知らんが、この状況をなんとかしてくれ!


 そして、間に合ってくれ!

きょうのまとめとか

アポロンは、アポロンの分霊

タモンは、毘沙門天の分霊

なまず、第三形態

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