第28話 シックス・シルバー・ガーディアンズ
【活動報告】の方では書きましたが、この『フニャひよ』の更新、中2日になっております。
リアルタイムで更新を見てくださってる方には、毎日更新じゃなくなってすみませんでした。
現在のストックが無くなるまで、変わらず応援いただければ嬉しいです!
* *
たかひよチームの隣の部屋、がおちづチームはマイクなどそっちのけで、ふたり壁にピッタリ耳をつけていた。
「おい……『脱がせて』とか何とか言ったか?」
「まさか……カメラもあるだろうし、そんなヤバいことしないと思うけど」
聞き間違いだとして、何と言ったか想像してみるが、千鶴にもいい回答は出てこない。
「一度認めた付き合いではあるし、口出しはせんつもりだが……一般的な恥じらいは持ってもらわんと困る。そこまで貞操観念が崩壊しているとは思えんが……とりあえず乗り込むか」
「待った待った。まだそうと決まったわけじゃないっすよ。まったく……思い込み激しい人は怖いわ」
溜息をつき、千鶴はあらためて壁に耳をつける。
雅桜も仕方なく、深く息を吐いてから同じく壁に張り付いた。
* *
「せ、先輩? どういうこと……ですか?」
「若王子さんが言ってたでしょ。男子のシルエットに見せるため、胸つぶしインナーってのを入れてるって……」
「確かに、そんなこと言ってましたね。もしかして……それが苦しいんですか?」
「い、いぐざくとりー……」
ブラの代わりに、胸を押しつぶして固定する男装用のコルセット的アイテム。
その締め付けられた状態のままノリノリで歌ったため、突然、限界を超えてしまったのだった。
「ど、どうすればいいですか?」
「パーカーをめくって……ファスナーを下ろしてから……ホックを……」
(マ、マジすか!? 男子としては、ブラジャー外すのと何も変わらないんすけど……!)
カアッと燃えるように首から上が熱くなる。
頭の中が真っ白になり、迷いに迷う。
が、辛そうな陽代乃の息づかいに、鷹也は決心した。
「し、失礼します!」
陽代乃の腕を上げ、パーカーとキャミソールを順にずり上げる。
と、クリーム色のチューブトップのような下着が現れた。
(確かに、胸は平らに見えるし、ブラジャーには見えない。けど、脇腹の肌色と合わせて見たら……ちゃんと下着に触っちゃってる気分フルスロットルですよぉぉぉ!!)
目眩がしそうになるのを堪え、サイドについたファスナーをなんとか下ろす。
と、その下から頑強な6体のシルバー・ガーディアン(ホック)が現れた。
(うっ……めちゃめちゃテンションがかかった状態で、簡単には外せなさそう。こんなの、どこを持てばいいんですか!)
頭も目もグルグルと空回り。
フリーズする鷹也に、陽代乃は艶めかしい喘ぎ声で指示する。
「パッツパツになってるから……両側をしっかり持ってグッと寄せて……」
「は……はははいっ!」
意を決して陽代乃の上半身を手のひらで挟み込み、力を入れてホックを中心へ引き寄せる。
陽代乃の口から『ふぐっ』と苦しそうな息が漏れ、慌てて手を離しそうになる。
(ダ、ダメだ! ここで手を離したら先輩がマジでもたない! 先輩のためなん……だぁあッ!!)
気合を入れ直し、1体ずつガーディアンを倒す。
そのたび、封印されたキングプリンが解放されていく。
(これで終わり……ッ!!)
最後の1体を打ち破る。
パン! 弾けるような音とともに門が開き、横乳が鷹也の目に飛び込んできた。
「ぐわっ…………目が、目がッ!!」
「えっ、ウソッ? な、何か金具とか飛んだ!?」
「い、いや、大丈夫です。どうですか? 楽になりました?」
突っ伏したままだった陽代乃は一度大きく深呼吸。
その後、ようやく元の席に座り直し、ゆっくり伸びをした。
「は~……ありがと~! いや、こんなことさせちゃって……マジ申し訳ない」
「いえ、こちらこそ、また安っぽいラッキースケベみたいなアレがソレで……ほんとすみません」
「謝んないで! 悪いのは、あの若王子ツグミなんだから……」
唇を尖らせる陽代乃はパーカーの中に腕を引っ込め、モゾモゾやっていたかと思えば、ズルリ、胸つぶしインナーを引きずり出した。
(うわー! うわー! 『ブラじゃないから』って油断しないで? やっぱ先輩、ちょこちょこ抜けてるよなぁ……!)
「あ~……苦しかった。男装コスプレする人は慣れてるらしいけど、こんなに痛くて苦しいとは……」
「た、大変なんですね。コスプレも素人が知らない苦労があるんだなぁ……」
(てか、それって『ひよの先輩の胸が大きめだから』ってことなんだろうか? あの日、この手で掴んだ感触を思い出してしまう……!)
鷹也の興奮も冷めない中、飲み物などを補給しながら、ようやくふたりとも少しずつ落ち着きを取り戻してきた。
「はしたないところ見せて、ほんと恥ずかしいよ……。なんか流れを壊しちゃってごめんね」
「いえいえ! 俺は全然……」
(てか……男子としては、ありがたすぎて怖いんですけどね。今もノーブラなわけだし……もしかして先輩って、天然無自覚ラキスケ製造機ですか?)
脳内で『煩悩退散』と念じつつ、鷹也はあらためてドリンクで喉を湿らせた。
「それじゃ、次は俺が歌いますね」
「うっ……か、覚悟はできてるよ。来なさい!」
ファイティングポーズをとる陽代乃に、鷹也は今さらハッとする。
(ああ、そうか。俺の歌を聴いて、フニャらせられる覚悟……ってことか。色々ありすぎて、そこまで頭が回ってなかった)
覚悟完了の顔で待ち構える陽代乃を意識し、必要以上に緊張してしまう鷹也。
(別に上手くなくたっていいんだ。これから何度も来る機会はあるだろうし、自然にのびのびと歌えば……!)




