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第18話 初カノと ずっと一緒に いられれば

再開2話目です。よろしくお願いします!

鷹也&千鶴の服装が描写されてますので、再度画像を。

挿絵(By みてみん)



「まったく……これだから一流エンターテイナーは怖いわ。ほら、アタシみたいなのが非モテなのよ」


 そう言って胸を張り、自分の服装を見せつける千鶴。

 黒のライダース革ジャン・黒のロングブーツ・黒のレザータイトスカート・黒のストッキング。

 黒黒黒の黒ずくめ。唯一、中のロンTだけが赤系となっていた。


「うーん、千鶴ちゃんの方が攻めてる気するんだけど~。地味……かなぁ?」

「だから、派手とか地味とかじゃないの。こーんなロック気取った痛々しい女、みんなスルーするのよ。黒ずくめなんて『色彩センス無い』って自白してるようなもんだし」


 あくまで千鶴の理論だが、本人は自信満々でセンスの無さを誇る。


「普段はここまでじゃないんですけどね。千鶴はいつもカッコイイ系ではあるよな。小学生の頃はちゃんと女の子らしい服で可愛かったのに」


 鷹也は思い出を辿りながら、しみじみと言う。

 その新情報に、陽代乃は千鶴の手を握り、目をキラキラさせた。


「へぇ~、そうなんだ! 私、千鶴ちゃんの可愛いカッコも見てみたいなぁ~」

「ちょっ……おにー、余計なこと言うな! アタシは陽代乃ちゃんみたいに何でも似合うわけじゃないの。可愛い服なんて……どーでもいーわ」

「え~? 絶対似合うって! ねぇ、がおー氏?」

「知らん。どうせ俺はインテリヤクザだからな。女子の服などわかるわけなかろう」


 意外と根に持っているのか(元々つっけんどんだが)、雅桜は表情を変えず、ほうじ茶ラテに口を付ける。

 余談だが、キャラメルマキアート(ソイミルク変更&シナモンパウダー追加)の陽代乃以外はなぜか全員、ほうじ茶ラテだった。


「な~にマジになってんだか……ごめんね、こういう(ひと)で」

「ま、インテリヤクザ言ったのはアタシだしね。どーでもいーけど」


 実際、雅桜を華麗にスルーして、千鶴は鷹也に向き直る。


「で……最後はおにーだけど。『いつもと違うイメージで』って言ったのに、何も変えてなくない?」

「う……そんなこと言われても、違うタイプの服なんて持ってないし……」


 鷹也の装備は、ロンT・Gパン・ネルシャツを羽織ったスタンダード&ノーマル&普通スタイル。

 控え目な性格ではあるが、根暗とまではいかない鷹也。

 この中では間違いなく、最も一般に溶け込む地味ファッションセンスだ。いい意味で。


「持ってないのが問題なんでしょーよ。これから先、陽代乃ちゃんとふたり並んで歩くってこと、ほんとにわかってる?」

「うっ…………そ、それは」


(確かに……こんな可愛い先輩と付き合うことになって、努力もせず『今まで通りの自分で』っていうのは虫がよすぎる。今後はマジメにファッションと向き合うか……)


「いや~……いつもと変わらないかもしれないけど、私はまだ鷹也君の私服見てないしなぁ。マジメそうだし、清潔感あるし、いいと思うなぁ~!」


 陽代乃はニコニコ笑顔で、ウンウンとひとり頷く。

 そのぽやぽやした顔に、千鶴は深く溜息をついた。


「陽代乃ちゃん、デレデレ甘やかさないで」

「デ、デレデレなんて……してないし」


 鷹也のことを何でも肯定してしまいそうなベタ惚れ具合をあらためて確認し、我が兄のことながら『陽代乃ちゃんは声による洗脳を受けているのでは?』とまで思う。


「まぁ、とにかく服が必要なのはこのバカップルなわけで。陽代乃ちゃんはもっと一般人っぽく……おにーはどーするか……」


 スマホで検索をかけ、画像と(たかや)を交互に見る。

 ブツクサ言いつつも真剣な千鶴を微笑ましく眺めながら、陽代乃は隣の鷹也に耳打ち。


「千鶴ちゃん、ほんと、おにーのこと大好きなんだね。私もこんな妹が欲しかったなぁ」

「そうですかね……なんか遊ばれてないですか?」

「どんな服着せられるか楽しみ! まぁ……なんか面白いコーデあっても、動画のネタにならないのは残念だけど」

「はは……変装のし方を動画で紹介するわけにはいかないですもんね」


 和やかに笑い合うふたり。

 バカップルと言われたが、他人の目など気にしなければ、何の問題もなさそうなおだやかな関係スタートである。


「ね、ね、撮らせてもらってもいい?」


 陽代乃はモジモジと胸の前でスマホをアピールしながら、上目遣い(少し猫背)で鷹也にお願いする。


「え? あ、写真ですか?」

「だって……私は動画で顔出してるけどさ、鷹也君の映像は無いんだもん」

「そ、そうですよね。それはもちろん……どうぞ」

「えへへ、やった! あと、ツーショも欲しいな……」

「は、はい。俺も……」


 今度は、お互いにツーショットを撮り合う。

 どこまでも幸せ。だが、鷹也は少し複雑な気分で。


(やっぱり、(ちづる)の前でこういうのを見せるって……恥ずいぞ! しかも、カノジョの方の兄もいる。家族同伴はデートとは言わないよな……)


「まったく……おにーは初カノだから舞い上がってんねー。『初』が陽代乃ちゃんじゃ、まぁ仕方ないか」

「ま、舞い上がってなんか……ないことないけどさ。これでも、かなり気をつけてるつもりだよ」


 千鶴の兄イジリに、陽代乃は少し不満そうに体を入れてきた。


「ちょっとちょっと千鶴ちゃん! 『初』が陽代乃ちゃん……って言うと、別れるみたいじゃん!」

「そんな意味で言ったわけじゃないよ。って言っても……アンタ達だって、これから何があるかわかんないっしょ」

「そ、それはそうかもだけど……」


 陽代乃はわかりやすくションボリし、チラリと隣の鷹也へ目線を送る。


「う、えっと……何があるかわからないけど、それでも初カノとずっと一緒にいられれば……って思います」

「鷹也君……!」


 耳までカーッと真っ赤にした鷹也は、誤魔化すようにほうじ茶ラテを一気飲み。

 うっとりと鷹也を見つめる陽代乃を指差し、千鶴は雅桜に問うた。


「雅桜さん、おたくの妹さんはあんな感じで大丈夫っすか?」

「ううむ……大丈夫、とは言い切れん。動画ではカットしているが、元々、抜けたところはあるからな……」

「お互い、手のかかる身内がいると苦労しますなー。ま、これからも見張っていきますか」


 雅桜の返事を聞く気もない顔で、千鶴は立ち上がった。


「ほら、そろそろ行くよ。まだ飲んでない人、飲んで飲んで」

「わ、待って待って! 遅刻はごめんだけど、もうちょっと待って!」


 陽代乃はマスクをずり下げ、ストローでグルグルとカップ内かき回した後、一気に残りを吸い始める。


「ひよの先輩、キャラメルマキアートは層になってる味の違いを楽しみながら飲む……でしたよね。急がせちゃって、なんかすみません」

「ぶふっ!」


 思わぬ解説が入り、陽代乃は口に含んだものを噴き出しそうになる。


「ちょ、ちょっと鷹也くん! 恥ずかしいから、動画で言ってるこだわりを説明しないで?」

「す、すみません! つい……」

「小埜鷹也……過去動画を網羅していそうだな。侮れん奴よ」


(うっ……ぴよ子オタクであることを自ら晒してしまった。は、恥ずかしい……!)


「ち、千鶴! これから行く店って、どういうところなんだ?」


 あからさまに誤魔化すような、わざとらしい口調。また違う恥ずかしさが湧き上がる。

 そんな兄を面白がるように、千鶴はニヤリと笑みを浮かべた。


「ふっふっふ……楽しみにしときなよ、おにー」


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