とある貴族の受難 〜殿下の最愛は私らしい〜
「アリソン・テレストレー!貴様は王太子である私の婚約者にふさわしくない!よって貴様との婚約を破棄する!」
広間の中央では発言者であろう男と、男と腕を組んでしなだれかかっている女、そしてその対面にいる令嬢が対峙していた。
「貴女は公爵令嬢という立場を利用して、こちらにいるマリア嬢に対し罵詈雑言を浴びせたり悪質な嫌がらせを行っています」
「それだけでは飽き足らずつい先日階段から突き落とすという暴挙をしただろ!」
男の後ろからメガネをかけた男と小太りの男が令嬢に対して罪を述べながら表れる。そしてその4人の後ろにもう1人男が控えていた。
あっどうも。「もう1人の男」であるクリスです。騎士団長の息子です。現在王城にてパーティー中です。
周囲のパーティーの参加者が遠巻きに見ている傍、王子と宰相の息子、そして財務省の息子がテレストレー公爵令嬢に対して罪状を述べています。
そして、その中心で守られているマリア嬢が悲しそうな顔をしながら、涙ながらにテレストレー公爵令嬢にされた仕打ちを述べています。
「私、この事を誰かに、言ったら、もっと酷いこと、されるんじゃないかって、思って」
「大丈夫だ、マリア!この私がいる限りいくらでも守ってみせよう!」
涙を流すマリア嬢を抱きしめる王子様。
「私、アリソンさんにいっぱい酷いことされたけど、一言謝ってくれたら許せるんです!」
「マリアはなんて優しいんだ!それに比べて貴様はなんて醜いんだ!誰かこの女を牢に連れて行け!」
おっと、ひと段落ついたかな。さてと………
「せいっ!」
「ぐはっ!」
とりあえず王子を殴っておいた。
「「「「「「……………………えっ???」」」」」」
「エスタフ第二王子、ただいまをもってあなたの王位継承権と王族籍を剥奪いたします」
衝撃的(物理)な行動の後に続いた暴挙とも言える宣言。おそらく現状を理解できるのは今この空間に2人しかいないだろう。
「き、き、貴様!この私を殴ってただで済むと、そ、それに!私から王位継承権を剥奪するだと!」
「そ、そうよ!一介の騎士風情が王子様に命令できるわけがないじゃない!それよりも………」
「そこから先は私から説明いたします」
沈黙から真っ先に立ち直った王子に続いたマリア嬢の言葉をテレストレー公爵令嬢が遮る。
「まず、皆さんが気になるであろうことから説明させていただきます」
そう彼女が言うと周囲を見回して発言する。
「まず、そこにいる方は私の婚約者である第一王子殿下ではございません」
その言葉に周囲の人達はざわついた。
「なっ!?!?そんな出鱈目なことをいうな!!私は本物の王太子だぞ!」
「そ、そうですよ!そんな出鱈目なことを言っても騙されないですよ!」
「そ、そうだ!どうせ貴様が婚約破棄されたくないためだけの虚言だろ!」
テレストレー公爵令嬢の………やっぱアリソン嬢って省略していい?いいよね。
というわけでアリソン嬢の言葉に反発する王子達…
「これは陛下もご存知のことです。そしてこれが陛下からの勅命の証です」
そう言って彼女は懐から一枚の紙を取り出す。そしてついでに俺も取り出す。一応俺も共犯者だからね。
「これには、あなたが今日問題を起こしたら廃嫡をするなどのことが書いております」
そしてその紙を周囲に見せていくアリシア嬢。見せられた人達の顔には驚愕が浮かんでいた。
「そ、そんなもの偽物だろ!貴様の作りものに違いない!」
喚く王子に向かってそっと紙を差し出す俺。そこにはしっかり陛下が判を押した証が残っていた。
とたんに顔を青ざめる第二……元第二王子。
「そういうことだエスタフ。いい夢は見れたか?」
断罪の間に変わったパーティー会場に入って来たのは、本物の第一王子であった。
「私になりすました1ヶ月、散々私を貶すようなことをしてきたみたいだな。連れてけ。」
「「はっ」」
第一王子と共に入って来た騎士が元第二王子を拘束する。
あっ親父もいるや。やっほ〜。
「放せっ!俺に触るな!俺を王太子だぞ!貴様らごときが触れるんじゃない!
騎士達に拘束されながらもまだ喚いている。
そこに第一王子が声をかける。
「まだ私になりすましている気分か。そもそも私は王太子じゃないぞ」
「「「「「「はっ???」」」」」」
第一王子の発言に騎士達と俺達以外の声が重なる。
「だから私になりすましても王にはなれないぞ?」
「はっ?そ、それじゃあ、俺のしたことは……」
「普通に問題を起こさなければ第二王子であるお前が王太子になれたはずだったが……」
「そ、そんな………」
第一王子の発言に絶望する元第二王子。そのまま連れていかれ退場していった。
「あっ、ついでにマリア嬢。君も公爵令嬢に対する侮辱罪もろもろで投獄ね」
大したことじゃないと言わんばかりの口調で罪人になったマリア嬢。
あっそういえば俺も忘れてた。拘束拘束っと。
「えっ、えっ、えっ?なんで?」
わけがわからないといった様子の彼女を拘束する俺。騎士としての初仕事がこれか………
「えっ!ちょっ、ちょっとまってください!た、助けてください王子様!」
拘束されながら第一王子に助けを求めるマリア嬢。
それに対し第一王子は………
「ごめん、女に興味ないんだ」
そう答え俺に近づいて来て………
俺 の 尻 を 揉 ん だ。
「「「「「「「「……….はっ?」」」」」」」」
「すみません。俺ノーマルなので」
そう言いながら殿下の手をどかす。
「そうか、とりあえず後で私の部屋に来てくれ」
その言葉に返事して俺も部屋を出ていく。
その後、当然パーティーが続けられるはずもなく、現在俺は殿下の私室にいる。
一応1人じゃないぞ?アリシア嬢もいるよ。だから無理矢理、なんてことはないはず………
「それにしても、やっぱり問題を起こしたなあいつ」
「逆にあれだけガバガバでいけると思ったんですかね、俺たちがお膳立てしてたのに」
「そうですわね。少々おつむが足りないのでしょう。それはそうと、陛下の予想通り、第3王子殿下を王太子にするでしょうね」
第3王子殿下は上に比べると少し能力は落ちるが、問題あることは起こさないだろう。
「しかし、納得いかないことが一つだけございます」
「ん?どうしたアリシア?」
「なぜ入れ替わりに最初に気づいたのが私ではなく、クリス、あなたなのでしょう」
そう。実は入れ替わりに最初に気づいたのは俺なのだ。その理由とは……
「まさか、俺に尻を揉まれなくなったからだって誰が思うんだか」
「殿下の男好きさえなければ歴史に名を残す賢王になれたかもしれないのに。はぁ」
理由が馬鹿げているだろ?しかし、この気づきがなければ入れ替わりはもう少し気づかなかっただろうことを思えば少し微妙だ。
「まあいいじゃないか。もともと私は弟を支えるつもりだったし」
そう言いながら俺の尻に手を伸ばす殿下。
そしてはたき落とす俺。
苦笑いのアリシア嬢。
どうしてこうなったんだろな……
私の初めての作品となります。
初めて書いてみましたが……なんでこうなったんでしょう(遠い目)