謎とは
シュリセも礼家に従う以前の記憶が無いそうだ。これはきな臭い。一体何が行われているのか。ハルもこの事態は凄く重く受け止めているらしい。ハルは少し焦っているように見える。
「すごく大変なことになったね。リーベに相談しないと」
その後も色々情報を交換しあって、話を終えた。とにかく、リーベが帰って来ないことには話は始まらない。その日はこれで寝た。ちなみにお風呂に入る文化はなく、水で体を拭いただけだった。
そして、次の日リーベが帰ってきた。まず最初にシュリセの件について話す。刑罰とかの話ではなく、猫耳の特徴についてである。ハルとサミーと俺とシュリセとリーベ、主要な人物が全員集まって、緊張感が肌に漂っている。この重苦しい中、リーベが口開く。
「コウジ、2人で話したい」
いきなりそんな事言われたから驚いた。とりあえずその指示に従って、他の人は部屋から出て言った。
「お前が気になっとる事の答えを教えてあげよう」
気になっている事の答え?
「なぜ、猫耳の地位が低いのか。」
!!最初から気になっていたことである。こんなにも人に近くて、コミュニケーションが取れるのにと思っていた。
「それは……」
それは?
「今の思想の限界じゃ」
今の思想の限界?魔法的な何かかなぁって思ったりもしたんだが。
「というと?」
「今の思想には猫耳を受け入れられるほどの柔軟さを持ち合わせていないのだ」
えーと、つまり俺は猫耳を受け入れられる下地を持っていたってことか。言われてみれば、鳥獣戯画とかで割と昔から受けいられてきたのか。思想様々ってわけだ。
「お主の目を見てわかった。お主は猫耳を人として認識出来とる」
出来てます。てか、人としてしか認識出来ん。
「礼家は猫耳の重要性に気づいていながら、思想によって不合理的な判断をしてしまった。……この戦国の時代を終わらせるには今しかない!!争いなど何も生まぬのだ!!」
力強く、年齢を感じさせない物言いである。そして、争いの無い世の中というのも共感出来るものだ。だが、感情だけで動くのはナンセンス。争いを終わらせるのはめちゃくちゃ難しいと思う。現代においても戦争は始まってしまったのだ。
「具体的に何をするんだ?」
夢物語では終わらない何かを俺は期待している。
「それは……」
それは?さっきもこの流れみたな。
「世界統一じゃ!」
世界統一!?ちょっと待て飛躍しすぎてないか?まずは島の統一とかじゃないのか?
「島統一じゃないのか?」
「いや、世界じゃ」
てか、この世界ってどのくらい大きいのだろうか。平和のために世界統一を目指した国は前世でもたくさんあった。だが、統一はできても絶対に平和は訪れなかった。国連もその例の1つだろう。世界統一では、争いのない世の中の実現は不可能である。少し落ち込んでいるとリーベがそれを不思議がって見ていた。
「何か納得いかぬことでもあったか?」
正直に言うべきか。悩ましい。だが、間違った道にも進んで欲しくないと思った。
「統一による争いのない世界の実現は難しいと思う」
ほう?っとリーベは笑みを浮かべた。続けてみぃ、と話を促す。
「俺が転移する前の場所の歴史は長くて、統一したけど失敗したところ、そもそも統一出来なかったところしかなかった。国は大きすぎると制御が効かなくなるんだ」
なるほどのぉと未だに笑みを崩さない。
「なぜ、制御が効かなくなるのだ?」
統一しても失敗して終わる理由か、詳しく考えたこともないし、授業で教わった覚えもない。だから、憶測で語る。
「文化の違いとか、敵がいないとかかなぁ」
ふん、難しいなと言いながらリーベは笑みをつやさない。
「実は世界統一と言えば驚いてくれると思って言った側面があったんじゃ」
まさか、ここまで世界統一を否定されるとは思わなくてなと、手で頭をかく。
「この島にいる連中は皆、島の統一を目指しておる」
これは、ハルからも聞いたことがある。
「だが、島の統一程度で争いのない島は実現出来ないと考えている」
「どういうことだ?」
「さっきの話に戻るんだがの、世界統一をしなければ争いのない島を作れないということだ」
争いのない世界じゃなくて島?
「そうじゃ」
ん〜、分からん。どゆことだっぴよ。
「ここからは機密情報なのだがな」
ん?機密情報?いや、機密情報なら言っちゃダメだろ。
「待ってくれ、俺に機密情報を渡していいのか?」
「もちろん」
リーベは力強く頷いた。
「なんでそこまで俺の事を信用してるんだ?」
ハルとサミーもリーベによって俺に全面的信頼をおいていた。こんな格好のやつを。あっ、そういえば、あの時から服変えてないや。クッサ!!
「ひとつ質問いいか?」
リーベが俺に問いかける。
「なんだ?」
リーベは深呼吸をした。え、シリアスな展開かこれって?
「人は死んだらどうなると思う?」
めちゃくちゃいきなりだな。人は死んだらどうなるって誰もが考えたことあることなんじゃないかな。これで何を測ろうとしてんだ?
「天国か無か生まれ変わり?」
まぁ、好きなのを選んでって感じだな。
リーベはめちゃくちゃ首を捻ってる。正解の答えでは無いが、外れてもいないってことなのかね。
「この世界の住民は例外無く、輪廻転生、つまり生まれ変わると信じておる」
リーベは語る。
「天国やら無やらは全く発想したこと無いものじゃ。輪廻転生の考えは昔からあるものでの。真の思想家となったものは必ず生まれ変わると言われとる。実際に生まれ変わった思想家はいると聞く。」
リーベは何かを確信したようだ。
「お主は生まれ変わりじゃな?」
いや、違うと思う。
「生まれ変わってることに気づかないこともしばしばらしい。お主の考え思想は全くなにか新しい可能性を秘めてるとみた」
まぁ、俺が生まれ変わりの可能性も否定できないか。悪魔の証明ってやつだね。話を戻そうとリーベが言う。
「最初会った時、困惑こそしてたが嫌がらず敬語を辞めるその姿勢から、猫耳に対するその姿勢から」
貯めて言った。
「お主は十分に信用に足る人物であり、この戦国の時代を終わらす者と見た!」
「いや、絶対違うと思いますそれは」
空気が読めない男かもしれないが。そんな重大な任務を負うわけにはいかん。
「まぁ、またこの話は後できっちりしようじゃないか。さっきから話が飛んでばっかだったな。機密情報の話に戻ろう」
後できっちり話さなきゃならんのか。大変だなぁ。
「お主は知らぬかもしれぬが、この戦国の時代は割と長いこと渡って行われておるのじゃ」
「何年ぐらいだ」
「200年じゃ」
「200!?」
長すぎだろ!少しは安定期があってもいいんじゃないか?
「前の代からずっと戦ってるのだ。だが、実は2、3年前、火家という国が、この島を統一出来そうなくらいには武力と権力と思想を持っていたんだ。この島は統一されると誰もが思っていたが火家は内部から崩壊して、軍家と制家に別れたんだ。他にも火家程力を持ってた国はなかったが、ことごとく統一は失敗している。」
なるほど、言いたい事は何となく分かった。つまり、統一を邪魔する何かがあるといいたいんだろう。統一を邪魔する何かとは、
「お主もだいたい分かってきたかの?もうひとつ情報を付け加えるなら、家が崩壊する度に魔法の種類が増えるってことだ」
前世でも、似たようなことは歴史で習ったかもしれない。
「他の島が干渉してるのか」
やはり見込んだどうりだとリーベは喜んでいる。だが少し気になる点が。
「そのことに気づいてるなら、家同士で協力すりゃいいんじゃないか?」
「確かにその通り。実に合理的だ」
なんか含みが。ん?含み?
「もしかして」
俺気づいたかも。サミーが言ってた意味も理解した。リーベがニヤリと笑う。
「そう、この島は他の島より優れているという独自の選民思想を持っておる」




