感謝とは
食材に感謝する理由が分からないときたか。食材に感謝するって普通のことだよな?もしかして、普通じゃないのか?
「ん〜と、だって食材がなかったら今こうやって食べれてないわけだし。必ず食事にありつけるって訳じゃないだろ?」
2人の様子を見るにやっぱり分かって無さそうだ。自分が育てた鶏を食べなきゃならない授業光景を見たら、絶対に感謝するようになると思うんだけどなぁ〜。
「なるほど、それはあなたの故郷の習慣なんだね?」
「よく分からないけど、食材に重きを置いてるってことだ!」
あんま伝わってないようである。まぁ、分からんもんはわからんか。とりあえず、パンを食べてみることにした。持っただけで分かる。硬い。食べてみた。硬い。まぁ、食えるからよし!牛乳を飲む。うん、上手い!日本のよりちょっと濃いかもしれない。もぐもぐ食べる。そうしてたら、魔法について聞きたかったことを思い出した。
「ところで、あの黒く光るヤツってなんなんだ?」
「愛家で代々伝わる魔法だよ」
「サミーも、教わって使えるようになったんだ!お前の魔法はどんな感じのなんだ?」
おっとっと、使えることが前提じゃないですか〜、やだ〜。お前、魔法使えんのかって質問じゃなくて、魔法を使えること前提にしてるもんなぁ〜。今まで文化の違いを全く考慮せずに発言してきたから、もうちょっと慎重になってみるか。
「まぁまぁ、魔法使えないやつっているの?」
我ながら避け方が絶望的に下手だぁぁ!なんだよ、まぁまぁって。もうちょっとマシに回避する方法あっただろう!!だが、ハルもサミーも俺を警戒している様子は無い。今考えれば、俺信用されすぎじゃね?それだけおばちゃんの影響力が大きいってことなのか?恐ろしいぜあのおばちゃん。まぁ、とりあえず、返事を聞くか。
「たまに相当不器用な人はいるね」
「でも、大なり小なりみんな魔法は使えるよな。」
魔法を使えないやつはいないみたいだ。だが、これで人生が詰んだわけじゃない。俺は知っている。なんだか知らんが、異世界に行く主人公はだいたい魔法を使える。どんなにそれがちゃっちいものでも持ってる。てことわよ、俺も持ってる可能性があるわけだ。だから、俺の返答はこうとしか言いようがないよな。
「まだ見せれないんだよね」
魔法が使えないと言っても安全が確認できるまでは隠しとこう。どこの世界でも、常識とかけ離れてたら嫌われるものよ。サミーはめちゃくちゃ残念そうにする。
「まぁ、無理もないよな。いつか教えてくれよ!」
サミーがなんか悲しそうな顔してる。ハルもだ。またなんかやっちゃいました?……このセリフをネガティブに使い回てるの俺だけだろ。ん〜、非常に難しい、価値観の違いやら常識の欠如やらで。少しずつでも常識を知っていかないとな。いつか地雷を踏み抜いてしまうかもしれない。
雑談(俺にとっては割と重要なこと)をしながら飯を食べ終えた。さて、また選択が迫られる。ご馳走様を言うべきか。さっきはいただきますを言ってシラケた雰囲気にしちまった。でも、ご馳走様は作ってくれた人への感謝の言葉だ。これなら理解してくれるのではないか?っと悩んでいると、2人が口を揃えて言った。
「ご馳走様〜」
……ズコー!コテコテに心の中で転んでしまった。いや、言ってるやんお主ら。なんで最初はなくて終わりはあるねん。
「えっと、ご馳走様って?」
「作ってくれた人への感謝の言葉だよ」
「まぁ、これは愛家の習慣というよりは、昔から伝わってる習慣っぽいぞ。現に礼家や軍家も使ってる」
サミーがドヤ顔で教えてくれる。可愛い。そうじゃなくて、
「俺の故郷でもご馳走様の習慣はあるよ」
「……なるほど」
ハルは顎に手を当てながら言った。
「思ったよりコウジの故郷は近くにあるのかもね」
そんな訳ないのだが、とりあえず頷いておく。いつになったら帰れるのやらと不安になってたら、今後の予定が全くないことに気づいたので尋ねることにする。
「ちなみに、今後の予定とかってどうなってるんだ?」
そうですね、と言いながら皿を片付け始めた。
「コウジには、ここのことを詳しく教えるようにとリーベが言ってたから、街を出歩いてみよっか」
おっ、ついに街並みを見れるって訳だ。これである程度の時代を推測できそうだからありがたい。
「2人が着いてきてくれるのか?」
「……?2人?」
ハルがどゆことって顔してた。つまりだ。サミーを人として数えてねぇんだ。めっちゃ殺意わいてきたんだが。まぁ、落ち着け。価値観の違いだ。だが、許せん。俺の矜恃がNoと言っているんだ!!この強く根付いている価値観を物色しなければと、コウジは思った。素直に言ってみるか。
「ハルとサミーのことだよ」
ハルとサミーが顔を見合わせ、首を傾げた。見事な連携である。サミーもそんな感じなら別に大した問題じゃないのかもな。まぁ、街へ行こう。
「とりま気にしないで。一緒に行こうぜ!」
指をグッドにして言った。そうだねとハルが頷いて、私は皿を持ってぐから、サミーは外まで案内してねと指示を出した。
「じゃあ、行こ!」
サミーが元気よく言って、俺の手を掴んできた。可愛い!
「あんまりはしゃぎすぎないでね〜」
手を振りながらハルは見送った。まるで母みたいだ。この感覚はここの人たちに通じないのだろう。
城の外に出た。正面には階段、右を見るともっと高い建物、左を見ると小さな建物があった。まぁ、そんなことより、せっかくサミー1人だけになったので、サミーに質問をしてみよう。
「サミーっていつ頃からここにいるんだ?」
うーんそうだなぁ〜っと頭を捻って
「5ヶ月前ぐらいかな」
ん?
「5ヶ月前?」
「そんぐらいだと思う!」
え、めっちゃ最近やん。扱い方から勝手に3年ぐらいは一緒にいるもんと思ってたぞ。
「どういう経緯でここにいるんだ?」
「なんか、道の上に捨てられてたんだよね」
え、
「誰に捨てられたんだ?」
「捨てられる前の記憶がなくて、それもわかんないんだよね」
重ぉ
「そして、リーベに拾われたって感じか?」
「そう!めちゃくちゃ助かった!」
嬉しそうにしてるサミー、かわよ。なんで記憶がないのかは分からないが、割と捨てられがちなのかな?
「サミーみたいなやつは捨てられがちなのか?」
首を横に振る。
「捨てられがち程ではないよ。ただ、捨てられちゃうこともあるらしい。そもそも、猫耳が現れ始めたのはここ2、3年の話ってことだから、あんまり数がいないんだよね。」
まて、現れ始めた?
「もともと生息してた訳じゃないのか?」
「そういう訳じゃないっぽいんだよね」
「そもそも猫ってここら辺いる?」
「別の島にはたくさんいるって話だよ。別の島に行くには相当の労力が必要となるから、実際に見た人はほとんどいないんじゃないかな〜。でも、一応この島にも猫はいるらしいよ」
猫が外来種!?てことは、猫耳も外来種なのか?
「じゃあ別の島に猫耳は生息しているのか?」
「いや、猫耳が確認されてるのはこの島だけらしい。」
謎が謎を呼ぶパラダイスだな。
「動物が突然変異することってあるのか?」
「突然変異?が急に見た目を変えること指すなら、そんなことなかなかないと思うぞ!」
猫耳を動物として扱ってることに憤ってたが、割と最近現れ始めたから仕方の無いことなのか。俺が猫耳を受け入れてるのは、何年も猫耳を見続けていたことにあるのだろう。
「なんか、魔法で猫が人間みたいになっちゃった〜とかはないの?」
「幻影ならできなくもないと思うが、全く別物に変えるほどここら辺の魔法は強くないんだ」
「別の島?の魔法はどうなんだ?」
「ん〜、詳しくはわかんないんだよね。行ったことないから。でも、言い伝えとか、伝統的にはこっちの島の方が強いって話。みんな、この島の方が強いって確信してる。」
少し悔しそうな感じがした。気の所為かも。でも、なんか含みのある言い方である。とりあえず、魔法は万能では無いことは分かった。……含みの部分を聞いてみるか。
「てことは、実際に……」
「ごめん、待たせちゃった」
ちょっど運悪く、ハルが来た。まぁ、あんま聞かない方がいい事なのかもな。
「うし、じゃあ行こ!」
サミーが元気よく言う。かわよ。




