愛とは
人によって愛し方を変えると戦争が起こるとはどういうことなのだろうか?風が吹けば桶屋が儲かる的なことか?素直に聞いてみるか。
「どうしてだ?」
「礼家や軍家は自治領の人間だけを愛して、他国の人間は愛さないでしょ?もし、他国の人間も同じように愛せたら、戦争なんてするわけなくない?」
思ったより単純な理論だ。だが、理想論だ。平等に愛を与えるのは相当難しいだろう。メイドは話を進める。
「だから、愛家は人全員を愛すんだよ。」
そう語る彼女は美しかった。思想も美しい。
「で、私たちは人全員を愛してるから、絶対に国を攻めない事を誓ってる」
攻めないとか、まじで日本やん。まぁ、動機の違いはあるだろうが。でも、戦争しないとなれば、国を維持するのに相当力が必要だろう。
「戦争しないで、どうやって3番目に大きくなれたんだ?」
簡単なことだよとにっこり微笑む。
「思想に共感してくれたんだ」
ん?分からない。
「元々少し大きかったんだけど、他の小さな国たちが思想に共感して合併されていって更に大きくなっていったんだ。」
思想の共感だけで国を手放すもんなのか?
「今は激動の時代。だいたいの思想家達はこの島をひとつに統一することを目標としている」
「それはまたなんで?」
「自分の思想が正しいことを証明するため、経済的に成長したいため、ただ統一したいため、など様々だと思うよ」
「なのになんで国を手放す思想家がいるんだ?」
「そりゃ、そっちの思想が正しいと思ったらその思想の国の1部になるでしょ?」
さも、当然かのように言ってくる。理解出来ない価値観だな。
その後も色々話して、自分なりにこの世界の常識を叩き込んだ。
まず、愛家は人全員を愛す。そのため身分格差がなく、敬語を使わない。また、戦争をしない訳ではなく、非攻であり、防衛のためには普通に戦うらしい。だが、少し日本と違う点がある。それは、戦争をふっかけられた国の援助をするところにある。おばちゃんが水家に向かったのはほんとに助けに行くためだったのだ。すごく活発である。
で、ここら辺は聞き流してくれればいいのだが、水家は領土が5番目に大きい国らしい。思想としては、人工的なものは出来るだけ減らして、国を最小限にし、農業を営むことが幸せであるという考え方らしい。これも礼家批判から来ているとこことだ。
話していたら夜遅くになっていたため、また明日ということでお開きとなった。今日はぐっすり眠ろうと思う。おやすみ〜。あっ、ちなみにメイドの名前はハルらしい。
窓から光が入ってきて、目が覚めた。今日は快晴である。光で目が覚めるなんて、なんて気持ちいことしているんだ〜と思いつつ、朝飯を母に頼もうとした。手を2回鳴らす。パン、パン。……もちろん冗談である。母がいないことも分かってるし、そんなお坊ちゃまみたいなことはしたことが無い。突然だが、俺は朝食を食べようと思ったら重大なことに気づいた。夕飯を食っていなかった。そのため非常にお腹がすいている。何か食べたい。朝食についての指示を貰っていないので、とりあえずドアを開けて廊下へ出た。
廊下はそこまで長くはなく、登る階段を見つけた。だが、登る階段がめちゃくちゃ急だった。感覚的には75度ぐらい角度がある気がする。年寄りは登れないよなーっと思っていると、
「君、何してるの?」
俺の胸あたりの背の猫耳少女が話しかけてきた。ネコ、ミミ……!異世界と言えばである。髪は水色でキュートな耳を持ってる。現実では絶対に出会えなかった人種である!となると、エルフやらドワーフやらがいるのかもしれない。めちゃくちゃ興奮してきた。叫んでもいいか?うぉぉぉぉぉぉー!心の中で叫んだ。だが、心と体は意外と繋がってるようで、めちゃくちゃガッツポーズしてた。
「どしたの?」
猫耳少女はそう言いながら、頭にはてなマークを浮かべながら首を傾げている。
「いや、神は生きてたなって。ニーチェは間違ってた。」
やっぱりよく分かんなかったので、猫耳少女は最初の話に戻した。
「で、何してんの?」
「いや、お腹がすきすぎてさまよってるんだよね」
「……もしかして、無許可でこの城に侵入しちゃったりした?」
「いや、許可は出てると思うぞ、って城!?」
え、城!?世界観がバグってやがるぜ!!城にメイド?そそるぜこやぁ!俺は気分がたかぶってるが、猫耳少女は哀れみの表情を浮かべてる。
「ん〜ここ結構重要な建物なんだよね。普通の人は立ち入り出来ないんだよ」
「へぇ〜、まぁ城だもんな」
「よく分かってるね。そんな所によく分からん人がいたらどうする?」
「そりゃとっ捕まえるな」
「理解が早くて助かるよ」
報連相はどうなってるんだ?どっちにしろ抵抗する方が良くないから、動かないでおくか。後でハル助けてな。
「抵抗しないのか」
不思議そうに俺の事を眺める。まぁいいやと左右に顔を振り、両手を黒く輝き初めさせた。そういえば、魔法について聞いてなかったな。俺も使えんのかな?
「黒よ、」
割と定型文なのか?魔法と言えば、ファイアーストーム!!とかイメージするけど。
「縛っ!」
とか余計な事考えてたら、いつの間にか猫耳少女の口に人差し指1本をくっつけてるハルがいた。
「サミー、この人がコウジだよ」
この猫耳少女の名前はサミーというらしい。そして、事前に俺の名前は知られていたのか。なんで拘束しようとしてたんや。
「いやぁ〜、知らない人だからちょっと焦ってて、コウジって子がいること忘れてたわ」
手で頭かいてる。かわよ。
「で、コウジはどうしてここにいるの?」
ハルが話しかけてきた。もう名前呼びとは嬉しいな。ここでは俺の距離感がバグってるだけか。
「腹がすきすぎて朝食を探しにここまで来たんだよ。勝手に出てごめんよ」
正直に話して謝る。1番大切なことよね。
「分かった。じゃあ着いてきて。サミーも食べる?」
「食べる!」
サミーはニコニコしている。
個室に案内されて、サミーと俺は椅子に座るよう指示された。ハルは食事を持って来ると言って出ていってしまった。てか、なんでこんなに歓迎されてるんだ俺って?城は重要施設らしいし。サミーに聞いてみるか。ん?サミーって何もんなんだ?それも聞くか。
「俺ってなんでこんな歓迎されてるか知ってる?」
少し考える素振りをしてサミーは答える。
「リーベが気に入ったからじゃないか?」
「具体的にどことか分かるか?」
「どこがとは分からないけど、今は戦国の時代。どこも優秀な人材や気に入る人材を取り入れようと必死なんだよ」
サミーは意外と物知りなのか。関心である。
「なるほどなぁ〜、ってことはサミーも気に入られた、もしくは優秀だからここにいるってこと?」
「サミーはペットだからね。優秀より気に入られたの方が正しいのかな」
ペット?え、同じ人間として扱ってないのかこの世界。人種差別とかはよくある異世界ものだが、ペット扱いは初めて見た。
「ペットというのは、どういうことだ?」
サミーは思い出した。コウジは自然災害によって知らない地に転移したため、常識に疎いんだった。
「ペットっていうのは、飼い主が趣味で飼っている動物のことだぞ」
懇切丁寧に説明してやったのに、コウジは口を開けたまま動かなかった。なので、サミーはコウジの元に駆け寄り、脇腹をつんつんした。はっと目が覚める。
「ちなみに、人間じゃなくて動物なのか?サミーは」
恐る恐る聞くと、元気な声で返事が返ってきた。
「うん!」
助けてやりたい母性本能が今、最大限働いた。多分、人間の見た目をしているのに、動物扱いするのが許せないのだろう。別に全動物をバカにしてるわけじゃない。こんなにコミュニケーション取れているのに、ペット扱いというのが納得出来ない。だが、その現状に満足してそうな様子である、サミーは。サミーの今までを見ていないから断定は出来ないが。幸せそうなのに、助けるってどういうことだ?それでいいじゃん。けど、やっぱり俺の倫理観的には、猫耳少女をペットとすることはおかしいと思う。でも、サミーはそれで満足している。難しい。まぁ、満足してるならいいのかな〜って思ってたらドアが開いた。
「待たせちゃったね、私は既に食べてるから気にしないでね」
ハルはそう言いながら、 パンと牛乳を持ってきた。俺とサミーの分を。どうやら、食事の面では同等に扱っているみたいだ。あと、思ったより異世界っぽい食事ではなかった。でも、変なものが出てくるよりかは嬉しい。じゃあ、
「いただきます」
そう言ったら、ハルとサミーはキョトンとしてしまった。また、やっちまった。文化の違いとは中々難しいものである。とりあえず、説明するか。
「あぁ、ごめん。俺の故郷の言葉だ。意味は、全ての食材に感謝しようってこと」
ハルとサミーは顔を見合わせる。え、なんか俺やっちゃいました?2人の意見をハルが代表して言ってくれた。
「なんで食材に感謝するの?」
価値観の違いが上限突破してた。




