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短編

正義の人 その名は魔王!

作者: マンムート

ピンチに陥った姫様をヒーローが救うお話です。

あと、いろいろ成敗しますし、救います。

ハッピーエンドです。



実は、3月1日くらいに投稿した短編です。

内容はほぼ同じままです。


人があんまり見ない時間に投稿したので(午後6時14分くらいだったと思う)、改めて投稿し直しました。


以前、投稿した時に読んでいただいた読者の方々、ブック-マークやポイントを入れてくれた読者の方々、本当にありがとうございました。


「オレたち暗黒ギルドをさんざん手こずらせた義賊虹色仮面!

 その活躍もこれで年貢の納め時だな! 全身を締めあげる荒縄の感触はどうだ!?」


「くぅっっ……こっこんなのなんでもないわ!」


「ふっふっふ。その強がりもどこまで続くやら。

 義賊虹色仮面!

 いや、たったひとりで巨悪に立ち向かうピエロ! 第二王女キャロライン!」


「!」


「失敬失敬、王女殿下がこんなところにいるわけがねぇか。

 つまりお前は、単なるドロボウ。

 いや、成敗とか吹いて罪もない人間をボコってたんだから凶悪犯だな!!」


「こうなったらお上に差し出して公開処刑にしてやるか。

 それとも、このまま闇から闇へ葬ろうがオレ達の思うがまま!

 まずは、そのカラダでここにいるオレ達全員を相手にして貰おうか!」


「くっ」


「おっと、自害したら死体を素っ裸にして王都の広場にさらしてやるぜ!

 その脇にてきとうに見繕ったヤツの死体も一緒にな!

 王女様が叶わぬ恋に絶望して無理心中ってわけだ!」


「あなたがたには人間の心がないのですか!」


「心があるから金も女もうまい食い物も酒も欲しいんじゃん!

 だから、お前の体つきにも大いにそそられるぜ!

 お前だってそんな膝上15㎝のミニスカートをひらひらさせて真っ白いパンツまで見せつけてたんだ。本当はオレ達に、こうされたかったんだろ?」

「またぐらに食い込む荒縄に興奮してるんじゃねぇのか? ぎっひっひっひ」


「たっ例えこのカラダが例え辱められても! 心は屈しません!

 万が一私の正義がここで終わったとしても、勇者様がお前達を!」


「ひひひ。

 一月たっぷり女の喜びを教え込まれたあとでも、その台詞を口に出せるか楽しみだぜ。

 せいぜい楽しませてくれよ。虹色仮面さんよっ――」



「ふはははははははははは!」



「と、突然どうした下っ端12号! 悪いもんでも食ったか?」


「醜い悪どもよ! お前らの悪行三昧もそこまでだっっ!」



 ババッッ!



「な、なんだと!? 戦闘員の仮面の下からクールなイケメン顔が!?」

「さてはお前下っ端12号じゃねぇな!?」


「あの男なら、いまごろ酒場のトイレでおねんねさ!」


「な、なにやつ!」



「成敗!」



「つ、強い!? 強すぎるぅ!!」

「ひぃっっ。いっいつのまにかオレ達全裸!? しかも縛り上げられてるじゃねぇかぁ!?」


「お前らは動かぬ証拠とともに王都の広場で全員そろってお腹にマジックペンで名前及び表の職業も明記した上で仲良くさらしものだ!

 しかもっ。全員全裸の大股開きでなっ!」


「や、やめろっ。やめてくれっっ。か、金ならいくらでも!」


「悪の報いを受けるがいい!」



 ぱちん。



「勇敢なお嬢さん。おけがはありませんか?」


「あ、あいつら消えたけど、なっ、なにをしたの!?」


「魔法で広場へ飛ばしてやったのさ。ついでにお嬢さんの肌についた縄跡も消しておいたぞ」


「あ、ほ、ほんとうだ……。

 な、なんて人なの!? こんな強い剣士みたことがない!

 しかも指を鳴らしただけで集団転移なんて……魔法使いとしても超一流だわ……」


「それほどでもありませんよお嬢さん」


「か、かっこいい……ぽっ……ちっ、ちがう、わたしは勇者様ひとすじ……。

 あの日! 心の中で誓ったはずよ!

 王都から出発する彼の背中を見つめながら

 彼が魔族と戦っているあいだ、わたしは王都に救う魑魅魍魎どもと戦うって……」


「勇敢なお嬢さん。覚えて置いて欲しいことがある。

 貴女は一人じゃない。貴女の正義は、人々に希望を与えている。

 あきらめるな!

 だが一人で悪と戦うような無謀はこれきりにしてほしい」


「あ、あなたの名は!?」


「我が名は魔王! さらばっ!」



「ええええっっっっっ!? き、消えた!?」




     ※    ※    ※





「くっくっく。戦争はもうかりまんなー」

「まったく笑いがとまりませんな! 貧乏人どもだけが死ぬ戦争はサイコーですな!」

「いつまでもいつまでも続いてほしいものですな。

 魔族は生かさず殺さず。

 勇者様にはなるべく苦戦していただきたい」

「ですが、たまには変化が欲しいもの。今宵はちょっとした出し物を用意しておりましてな」

「もしかして……こうるさい第二王女殿下もとい虹色仮面を」

「愚民どものガス抜きとして泳がせてましたが、もう頃合いかと」

「こよいこそ、あの賊も生意気な殿下も、最後ですか」

「楽しみですな。くくく。王女と生まれながら後半生は最底辺のメス奴隷とは。

 いやはや一寸先は闇とはこのことですな」

「最近は自称魔王とかも現れたとかで、そろそろ正義の味方も交代というわけです」

「ああ、あの暗黒ギルドを倒したとかいう賊ですか」

「なに、あいつら暗黒ギルドは、我が王国の裏の4大組織の中で最弱!

 脳筋揃いの力押し、まったくちんけな奴等でしたからな。

 あの程度ならいくらでも代わりはおりますし」

「くっくっく。はっはっはっは」



「そこまでよ!

 親衛隊! こいつらをとらえなさい!」



「これはこれは第二王女殿下、我らがパーティ会場へようこそ。

 姫騎士の純白なお姿も大層凜々しくていらっしゃる」


「そうやって余裕してられるのも今のうちよ!」


「ひっひっひ。それはこちらの台詞ですぞ。親衛隊の皆さんその女を捕らえてくださいな!」


「な、なにをするのっ!? くっ。離しなさい! あなたがたは王家の親衛隊なのよ!」


「くくく。

 我々の集会の場所と日時、どうやって知ったのですかな?

 しかも今は真夜中、王都から少し離れたこの廃城。

 何があっても目撃者はおらんでしょうな」


「ま、まさか!」


「そのまさかですよ。

 王家の密偵達など、とっくに我が裏委員会の手のもので固めておりましてね。

 暗黒ギルドを潰す程度のおままごとで満足していればよかっったものを」

「今日のお召し物では、膝下までしっかり隠れていて、男に見せたがりの殿下はご不満でしょう。

 ですから」



 びりびりびりびりっっ。



「きゃぁぁぁぁぁぁ!」


「おやおやかわいらしい悲鳴だ。いさましく剣などふりまわしているから、筋肉ムキムキの色気のないカラダかと思っていたら、これはなかなか、すぐにでも男を喜ばせることができそうですな」

「どんな色気のない下着をつけてるかと思ったら、上も下もレースがあしらわれた可愛らしい下着ではないですか」

「くく。王女と言っても、裸に剥けば所詮は男に媚びを売るしかない哀れなメスよの」


「し、下着くらい見られても平気よ!

 それに、このカラダが例え辱められても! 心は屈しません!

 万が一私の正義がここで終わったとしても、勇者様がお前達を!」


「ひひひ。

 暗黒ギルドは所詮、荒事専門の脳筋粗暴集団。

 奴等なら一月かかったかもしれぬが、我ら裏の代表委員会には科学部門なんていうのもあってね。

 科学の力で効率がよいのですよ。奴等が一ヶ月なら我々は一週間ですよ」

「せいぜい今のうちにイキがっておくことですな。

 一週間もたたぬうちに、王女様は上からも下からも嬉し涙を垂れ流すメス犬になりさがるのですから。そうでしょう博士?」

「ひっひっひ。今日の試験体は、意志が強そうなお嬢さんかい。

 まずは、こいつをたっぷりと注射してやりましょうね。

 打てばたちまちカラダが熱くなりましてね。

 今までの女達は一時間と経たずに自分から服を脱ぎましたよ」

「だ、そうですよ。

 殿下は何分もちますことやら」



「ふはははははははははは!」



「と、突然どうした博士!? 悪いものでも食べたのですか?」


「醜い悪どもよ! お前らの悪行三昧もそこまでだっっ!」



 ババッッ!



「な、なんだと!? マッドサイエンティストの白衣と分厚いメガネをとったら、クールなイケメン顔と鍛え上げられた肉体が出てきた!」

「さてはお前、博士じゃないな!?」


「あの男なら、いまごろ自分が開発した媚薬でのたうちまわりながら、王都の広場さ!」


「な、なにやつ! ま、まさかお前は最近売り出し中の自称魔王!」

「ええい、うろたえるな! こちらには親衛隊の皆様までいるんだ!

 みなさまこの身の程知らずをやっやってください!」



「成敗!」



「つ、強い!? 強すぎる!! 親衛隊の皆様も手下どもも瞬殺!?」

「ひぃっっ。いっいつのまにかワシら全裸!? しかも縛り上げられてるぅっっ!?

 し、しかも、か、カラダが熱いぃぃ! ま、まさかあの媚薬をををを」


「お前らは動かぬ証拠とともに王都の広場で以下略」


「や、やめろっ。やめてくれっっ。しゃ、社会的にも終わってしまう!

 暗黒ギルドの連中とちがって、ワシらは皆表向きはまっとうな商売人なんじゃ!

 か、金ならいくらでも!」


「安心しろ。以下略にプラスして、尻にアレを突っ込んだ体勢で数珠つなぎで輪になってもらう!」


「しょ、しょんな!」


「悪の報いを受けるがいい!」



 ぱちん。



「またも会いましたね勇敢なお嬢さん。おけがはありませんか?

 淑女にこんな辱めをするなんて、人間の風上にもおけませんな。

 とりあえず俺のマントを羽織っていてください」



 ふわさっ。



「あたたかい……このかたの心のように感じる」



 どきん。



「ま、まさか、これが恋!?

 大胆不敵な紳士。ステキな物腰。女への扱いも心得ているイケメンなんて……。

 で、でもわ、私には勇者様の背中に誓った思いがっ、そ、それにこの人は魔王なのよ!」


「貴女はこの王家の人間とは思えない、まっすぐな方だ。

 どうかその心を失わず。王道を歩んでいただきたい」


「で、でも、貴方は魔王なんでしょう!?

 だったら、私はいつか貴方と戦わなければならなくなってしまうわ!」


「その心配は無用だお嬢さん。

 闇と光はともにあるものなのだからな」


「え……それはどういう意味なの!?」


「では、また会うこともあろうが、今はさらば!」



「あ……また去っていってしまわれた……。

 魔王……す、すてきすぎるわ……わ、わたしどうすれば……」




   ※   ※   ※




「今や魔王は王国中で絶大な人気です!

 特に、王都では虹色仮面グッズを抜いて、魔王グッズがバカ売れです。

 うちの系列組織でも売り出したいんですが……」

「で、できるかっ!

 お、おのれ魔王! おのれアバズレキャサリン!

 王太子である私の妹なんだから、せいぜい男に媚びを売って尻でもふっていればよいのだ!

 しかも、なんで魔王が正義の味方などしておるのだ! あいつこそ悪の中の悪ではないか!」

「お怒りは判りますが落ち着いてください王太子殿下!

 もとい良い子の貴族大商人連合総帥!」

「これが怒らずにいられるか! 被害を受けた裏委員会の方が悪あつかいだぞ!

 残された家族は犯罪者の一族として大変だと言うのに……」

「しかもその家族に、王女殿下が救いの手を差し伸べたから、なんと慈悲深いと人気もうなぎ登り。

 このままでは総帥の王位継承にも影響が……」

「まぁ……証拠まで揃えた上での公開処刑だからな……。愚民どもが拍手を送るのもしかたない」


「仕方ないだとっ!? 何を共感しておるのだ! 貴族の自覚が欠けているぞ!

 国は我々王族とそなたら貴族と大商人のもの! 我々のものは我々のもの!

 であるから利権ではない! 当然の権利を行使しているだけだ!」

「そうだ! 我々あっての国! 我々生まれた時から勝ち組のためにだけ国はあるのだ!」

「愚民どもめ! 我々の国にお情けで住まわせてやっている分際で……」

「10割とらないだけで、感涙にむせぶべきだ!」

「そうよそうよ! 我々は全くもって愛国的人道的よ!」

「我々こそがこの国の良心だというのに……愚かな者達はそれがわからんのだ」


「……奴等はそうは見てくれんだろうよ」


「つ、次は我々だと言うのかっ!?」

「おっ落ち着け! しょ、しょせん暗黒と裏委員会がやられただけだ!

 やつらは我が国の裏の四大組織の中で、下から一番目と二番目!」

「そ、そうだ上から二番目の我々良い子の貴族大商人連合にははははは歯が立つまい」

「といっても、それは下から数えて3番目ってことですが」

「……ってことは次はやっぱりわたくしたち!?

 淑女であるわたくしがあんな姿でさらされるのっ!?」

「そういえば……卿は家族を隣国へバカンスに行かせたそうだが……逃がしたのか?」

「お、お前こそ! 財産を貴金属と他国の土地にかえているそうではないか!」


「まぁまぁみなさん落ち着いて下さい。手は打ってあるのですよ」

「おぬしは先月加入が認められた新入り!」

「で、具体的にはどうしたのだ」

「ふっふっふ。実はすでにあの生意気なアバズレ王女の身柄、おさえております」

「な、なんと!」

「ほれ、このとおり!」



 がらがらがらがら



「おお! カートの上に乗せられているのは、あのじゃじゃ馬!」

「しかも、すでに生まれたままの姿とは! 新入り気が利くではないか!

 して、どうやったのだ?」

「野外訓練している時に、飲み物に眠り薬を混ぜましてね。

 こうなってしまえばじゃじゃ馬もうまそうな肉料理ですよ」

「出るところはしっかり出て、引っ込むところは引っ込んでおりますな。

 しかも鍛えているだけあって引き締まっておる。

 これは具合が良さそうだ」

「男勝りなだけあって、あまり処理しておりませんな。それもまた野性味があってじゅるるる」

「もともと、短いスカートで下着を見せびらかして戦っていた淫乱ですよ。

 こうなって喜んでいるんじゃないです――ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ」



 ぐさっ。ぐさぐさっっ。



「ふはははは、と笑い出すまえにやってやったぞ」

「王太子殿下……い、いや、総帥……ど、どうして……」

「お前が魔王だということは判っているのだ新入り。

 王女である我が妹をそんな簡単に捕まえられるわけがなかろう。

 大方、二人で示し合わせてここへ潜入してきたのだろう」

「飛んで火に入る夏の虫だったな。ここは強力な魔力封じがしてあるのだ。

 いくら魔王とはいえ発動できまい」

「ち、ちが……」



 ずばっザシュッ!



「ぎゃぁぁぁ」



 がくっ。



「処分しておけ」

「王女はどうします?」

「じゃじゃ馬だ。何か武器を隠し持っているかも知れぬ。

 ここは、総帥である私自らが、カラダの隅から隅まで穴という穴の奥まで調べるぞ。

 そのあとは、女としての具合も確かめねばな!」



「ふはははははははは!」



「ひ、ひぃっっ。こ、この声は!?」

「ま、まさか!?」

「ま、魔王!?」



どろん、ぱっ。



「お、王女がむきむきタイツのクールガイにっ!?」

「さてはお前、王女じゃないな!?」


「あのお嬢さんなら、いまごろ睡眠時間を削ってお前らの悪事の証拠固めに奔走中さ!」


「ま、まさかお前は最近大人気の自称魔王!」

「ええい、うろたえるな! この部屋の外には王家の影と魔術部隊の精鋭が待機している!

 であえであえ! このふらちものを処分するのだ!」



「成敗!」



「つ、強い!? 強すぎる!! 王家の影も魔術部隊も瞬殺!?」

「ひぃっっ。いっいつのまにかわたくしたちも全裸!? しかも縛り上げられてるぅっっ!?」



「お前らは以下略!」


「や、やめろっ。やめてくれっっ。しゃ、社会的にも終わってしまう!

 わしらは皆、由緒正しい貴族なんじゃ!

 か、金ならいくらでも! 爵位も好きなのをくれてやる!」

「う、うちにある宝石ならぜ、ぜんぶあげますわ!」

「わ、私は王太子だぞ! えらいんだぞ! 私だけは助けろ!」


「安心しろ。以下略プラスの上に女にはアレをはやしてやるから仲間はずれの心配はしなくていいぞ! あと、オマケで裏の委員会から没収したスーパー媚薬も注射だ!」


「しょ、しょんな!」

「余計な親切ですわ!」


「それと、さっきからこの部屋での様子は、会話から表情まで全て、王都中に生中継した!

 あの程度の結界、魔王には効かぬのだ!」


「ひぃぃぃぃぃ」


「悪の報いを受けるがいい!」



 ぱちん。



  ※   ※   ※



「嗚呼……魔王様って……なんてステキなの……

 証拠は完璧ですし、罪人どもには傷一つつけてない。

 しかも、貴方が変身した姿だったとは言え、

 私のカラダにはモザイクをかけてくれるさりげない優しさ……。


 嗚呼。なんで貴方は魔王なの……


 心のドキドキが止まらない……これが恋……?


 でも、勇者様のことを考えても同じように……。

 私、どうすればいいのっ!? 自分で自分がわからないわ……」



   ※   ※   ※



「良い子の貴族大商人連合が壊滅してしまうとは……」

「奴には血も涙もないというのか!

 古く高貴な血筋の方々を愚民の前でさらしものにするとは!

 人間のすることではない! あ。魔王か」

「もしや、ヤツは女だけでなく、どんな姿にも化けられるのでは?」

「では、我ら裏の賢人会議メンバーの姿にも……」

「この中にいつのまにか潜入されているというのかっ!?」

「ただでさえ我らは巨大な紅い三角ズキンをかぶっておるから誰が誰やらわからんと言うのに!」

「ひぃっ。以下略はいやだぁぁぁ」


「うろたえるな! それはない!」


「こ、国王陛下! じゃなかった、裏の賢人会議総統!」

「流石は総統! ご子息である王太子を尻尾切りしたのに、動揺一つ無いぞ!」

「して、我々が以下略をされないという御根拠は!?」

「ふっ。

 そこもとら、ない知恵を絞って考えてみよ。

 3組織が壊滅させられる前に何が起こっていたかをな」


「……」


「あの小娘ですか!」

「そうだ。我々はあの小娘の身柄を手に入れてないのだ!

 あのテンドンイベントが起こらぬ限り成敗はされぬ!」

「なるほど! それなら安全ですな!」

「さすがは4大組織最強!」

「惜しいが仕方在るまい。

 毎回ちょっとずつえっちなシーンが進行していて楽しみにしていたのだがな。

 この前がモザイクつきの全裸だったから、次はモザイクが外れるはず」


「「「ごくり」」」


「って、陛下! じゃなかった総統閣下!

 あんなじゃじゃうまでもアンタの娘でしょう!」

「何を今更。

 我々は悪なのだろう? 悪であればなんでも許されるのだ!

 悪はふりーだむなのだ」

「で、では、王女殿下にあんなことやこんなことも」

「もちろん」

「で、では、もっとアダルトなことも!?」

「もちろん! 当然モザイクはなしだ!

 実はな、この部屋の隣に撮影機材とダブルベッドを用意してあるのだ!」

「な、なんと近親相姦AVで一儲けですか!」

「あーゆめがひろがりますな! どりーむかむとぅるー」



「諸君! 現実逃避はそこまでにしましょう!」


「いやだいやだぁ、現実みたくないぃぃぃぃ! 宰相のイケズ!」

「閣下、副総統とお呼び下さい」

「だって現実はもう詰んでるんだもん!

 愚民どもは今や魔王に拍手喝采!

 魔族との戦争は必要ないという声まででかくなってて兵士どももヤル気レス状態!

 今では最前線で魔族どもと優雅にティタイムを楽しんだり、キャンプファイアーをしてる始末!

 炎のまわりで楽しくジェンガを踊ったりまでしておるそうだぞ!

 なのに親衛隊も、軍隊も、我らの息がかかった奴等はみんな失脚!

 あいつら3大裏組織がいなきゃわしら無力!

 わしら高貴すぎて戦うとかできんもの!

 もういやだぁぁぁぁぁ! あぶあぶあばぁぁぁぁぁぁ」


「陛下が赤ん坊がえりなさったぁぁぁ!」

「もうだめだぁぁぁ!」



「ふっ副総統! そもそも、こ、ここは大丈夫なのか?

 王宮地下300メートルの地下とはいえ、相手は魔王だぞ!」

「いくら魔王とはいえ、この秘匿結界は感知できぬはずです。

 魔力の波動を起こさない特殊な力場で囲まれておりますから。

 食料の備蓄も3ヶ月はありますし」

「つ、つまり、こうして隠れてても3ヶ月後には飢え死にってことですか!?」

「しかも! 王太子があのじゃじゃ馬凌辱を企んで廃嫡処刑されてしまった以上、

 あのいまいましい小娘が次代の王!

 即位したら我らはみな処断されるのは明白!」

「ってか総統!

 どうしてあの小娘だけ教育に失敗したのですか!

 他の奴等はみんな腐りきったミカンだったのに!」


「だってだってワシ育ててないもん!

 先妻に似てかわいくないんだもん。

 先妻がああいうふうに勝手に教育したんだもん!

 ワシ悪くないもん!」


「見つからなくても飢え死に!

 見つかったら相手は魔王! わ、我々そんじょそこらの人間では対抗できない!

 オワタ!」


「いや、待て……唯一魔王に対抗できる駒があるではないですか!

 勇者ですよ勇者!」


「ゆ、勇者を、今こそ勇者を!

 ってか総統! どうしてさっさと連絡しなかったんですか!」


「だ、だって、勇者には一銭も払ってないから……」


「なんですと!?」


「勇者は魔王を倒すのが義務で存在意義なんだから!

 義務でやることにお金を払ってやることはないって、皆も賛成したであろうが!」


「「「「「あー………」」」」」


「それ以来、いくら『さっさと魔王を倒せ』と連絡してもナシのつぶて。

 ここんところ、どうも通信具の範囲外に出てるらしいし」


「……中継局の建設費をネコババしてたのが、こんなところに響くとは……」


「ってか、お前かよ副総統!」


「まったく、勇者にくっつけた第一王女と聖女はナニをしてしているんだ!

 あいつらが色仕掛けに成功していればこんなことには!」

「確か、勇者からハナもひっかけられなかったうえに、途中の宿屋で美男にはまってはめられて、腹ボテになって捨てられたとか」


「……とりあえず、勇者には今までの必要経費を払うと連絡するしか」

「え、払うんですか?」

「あんな平民出身者に金を払うのはイヤだイヤだ!

 わしは王様! 勇者はわしの命令を素直に聞けばいいんじゃぁぁぁぁぁ!」

「背に腹は代えられません。

 総統、今までの分の金は払うから魔王を倒してくれ、と連絡お願いします」

「仕方ないか……だが、つながるか……お、つながった! 返信キタ!」

「なんと即レスとは!」

「勇者が雇った弁護士立ち会いのもので契約を結びたいそうだ。

 口約束は信頼できないと」

「ぐ……足元を見てくるか! だが仕方あるまい!

 まぁ契約書なんぞ、あとでどうにでもなるしな!

 わしは王様じゃもの! ぐははははははは!」



   ※   ※   ※



「呼ばれてきたぜー。おっす、オレ勇者!」


「か、かるっ」


「金さえ払ってもらえればなんでもやるぜー。

 勇者だしな! まっかせなさいっ」


「なんと!」

「最初からこうすればよかった。隣の影のうすい男は何者だ?」


「あ、こいつオレの弁護士」


「ども、弁護士です」


「これ契約書。これにサインしてもらえれば魔王をさくっとやってきますぜ」


「ぬぐぐ……かなりぼったくりだが……。

 だがこれくらい金に汚いヤツのほうが悪的には信頼できるか……」


「ちなみに、孤児院に寄付するように書いてあるが、それってオレのトンネル企業だから」


「な、なんという悪!」

「だが頼もしいぞ! つまり悪ということは我らの仲間!

 ほらサインだ!」


「へっへっへ。

 話が早くて助かりますぜ。

 んじゃ、お近づきのしるしに、こちらからささやかなプレゼントをさせてもらうぜ!」



 じゃーん。



「ほら、王女だ!

 連れてくる前に、あんたの部下達がたーーーーっぷりと検査したから安全だぜ。

 ちなみに処女だってさ」


「なんと仕事が早い! さすが勇者!」

「しかもすでに全裸! モザイクなし!」


「ほら、起きな王女様」


「う……うぅぅ……お、お父様!

 お父様が裏の賢人会議の総統だというのは本当だったのね……

 信じたくなかった……」


「お前の目が節穴だったんじゃよ!」


「お父様! 皆様! 目をおさましになって!

 罪を認めてくだされば、命まではとりませんから!」


「くっくっく。立場が判っておらぬようだな。

 虹色仮面などという卑しい賊が、尊くて高貴なワシを父親呼ばわりとは無礼にもほどがある!

 今すぐベッドで成敗してくれるわ!」

「総統に加勢しますぞ!」

「「「「私も!」」」」


「お父様! あ、あなたには人間の心がないのですか!」


「心があるから金も女も美食も酒も楽しいのだ!

 だから、虹色仮面、おぬしの体つきにも大いにそそられるのだ!

 さっそく、親娘でたっぷりと親睦を深めようではないか!」



「ふははははははははハ!」



「こ、この高笑いは!?」

「ひぃっ。まさか」


「やーごめんごめん。驚かせた?」


「ゆ、勇者か……驚かせるんじゃない」


「いやー、オレも一度あれやってみたかったんだよなー。な。心の友よ」


「うむ。いい高笑いだったぞ。さすがは俺の心の友!

 ふはははははははははは!」


「この高笑いは!? お、お前はまさかっ!?」

「べ、弁護士じゃなかったのか!?」


 べりりり。


「印象のうっすい弁護士の顔の下から、クールなイケメン顔が!?」

「こ、このパターンは最悪だぁぁぁ」


「我が名は魔王!」


「そしてその無二の友! 勇者だぜ!」


「ひぃぃぃぃ! 事態は最悪をこえているっ!」

「ど、どういうことだ!?」


「実は、オレらダチなんだよなー」


「あ、ありえん! だってま、魔王と勇者だぞ!」


「だってなー。

 オレたちは戦場で苦労してるのに、お前ら王都でぶくぶく太ってるだけだもんなー。

 しかも戦いでは役に立たないうえに、妙に色気ムンムンで股がゆるゆるで性病にかかってそうな気色の悪い聖女もどきと王女もどきまで押しつけてきてよ! やってられなかったぜ!」


「その頃は俺も、かわいい魔族達をどう守るかで悩みまくって、抜け毛がひどくて。

 もうストレスたまりまくり!」


「そんなわけで酒場とかにいってストレス発散してるうちにバッタリ。

 最初はよー、お互いの正体とか知らないで同席してさー。

 愚痴をこぼしあってるうちに意気投合!」


「だから互いの正体知った時にはびっくりしたものさ」


「んで三日三晩、荒野でガチでやりあったぜ!」


「お互い、守りたいものがあったからな。

 せっかく得た心の友と殺し合いする羽目になって、運命をのろったものさ」


「魔法と拳が飛び交って、山が次々ふっとぶわ、湖は干上がるわで、

 ありゃすごかったぜ。

 流石はオレの心の友!」


「いやいや、そういう君だって、谷は埋めるわ、昼を夜にしてみせるわ、すごかったじゃないか。

 流石は俺の心の友!」


「でもよー。

 殴り合ってる内に、なんか馬鹿馬鹿しくなってきて。

 オレ、聞いたんだわ。お前どうして人間を殺すんだって」


「俺も、どうして魔族を殺すんだって聞き返した」


「アレ?

 これはお互いに守りたいもんに手を出さなきゃいいだけなんじゃね?

 って、同時に気づいたってわけだぜ」


「うむ。守りたい存在は違っても守るこころはひとつ!」


「「セカイを半分ずつにしよう! ってな」」


「ま、魔王と勇者で変な納得するな!」

「そ、そうだ! 魔王は悪で勇者は善! なれ合い禁止!」

「永久に戦争が続くことを前提に社会は出来ているんだ!

 目をさませ!」


「「それはお前らだけに都合のいい社会だろ!」」


「ぐぬぅ」

「だが勇者! お前は孤児院をトンネル企業にするような悪人ではないか!

 つまり、わしらの仲間! 仲間仲間仲間!

 こっち側の人間の筈だ!」


「あんなのお前らを信用させるいためのウソに決まってるだろ」


「な、なんだと!?

 勇者のくせにうそをついたというのか!?」


「オレ達に必要だったのは殺し合うことじゃなくて」


「愛し合うことだったんだ!」



「「「カラダの相性もばっちりだったしな!」」



「ええっっ!?」



「燃えたなー。あんなに燃えたのは初めてだったぞ勇者!」


「そういうお前だって、すげぇテクニシャンで意識がなんどもとんじまったぜ魔王!」


「お、お前ら、そういう性行だったのか!」

「そりゃハニートラップひっかからないわけだ……」


「そ、そんな……さようなら私の初恋が……」


「オレは、勇者だからよー。

 その権限で最前線の戦いをみーんなやめさせて」


「そのあいだに、俺が王都で大暴れしたわけさ。

 この場所だけは判らなかったけど、追い詰められたら勇者を呼ぶだろうって予測できたし」


「というわけで、オレたち!」


「魔王と勇者は協力してセカイをおさめるんで!」



「「成敗!」」


ぎゃぁぁぁぁぁぁ!


「略! プラス鉱山でメスオチ!」

「というわけであんたが最後ね王様」


「わ、ワシを助けてくれるのか!」


「王女さんに謝れ」


「へ?」


「彼女がなぜ、すごく恥ずかしい検査まで受けて、ここに来たかわからないのか?

 彼女は、最後の最後まで、お前が反省の色を見せてくれるんじゃないかと思ってたんだよ」


「かーっ。いじらしいじゃねぇか!

 ま、オレの予想通り、お前ら揃ってカスで、彼女の言葉は全く届かなかったわけだが」


「ええと……わ、判ったすまん!

 いまいちナニを謝らねばならんかわからんが……

 これで命は助けてくれるんじゃろ?」



「「「……」」」



「アレか? アレなのか!?

 お前の母を殺したことがバレたのか!

 アレは、今の妃が王妃になりたいってねだるから仕方なくだな――」


「勇者様、魔王様、今すぐこの人間の形をしたゴミを始末してください。

 もう、見ていたくもないです」



「おっけー」


「わかった」



「ま、まて! 最後にひとつだけ聞きたい!

 お前らはどっちがネコでどっちがタチなんだ?」



「うーん。その日の気分?」


「TPOに応じてってとこ」


「ちなみに、オレはバイで男でも女でもありだな」



「な、ならなぜ!? 聖女にも第一王女にも手を出さなかったんじゃ!

 少なくともあいつら美人だったぞ!

 それに! 具合もよかったぞ! 確かめたからまちがいない!」


「性病移りそうだったし、そもそもオレの趣味に合わなかった!」


「人選ミスかぁぁぁ!」


「ちなみに、俺は男でも女でもなれる! 魔王だからな!」


「なるほど! すごく納得だ! 思い残すことはない」



「「ということで成敗」」



「ぜ、前言撤回! ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



「略! プラス性転換して娼館落ち!」



「終わった終わった。

 友よ、いっぱいやろうぜ」


「うむ!

 ん? お嬢さん。ナニを泣いているのかな?」


「私の初恋も終わったからです……」


「どうして?」


「だって、おふたりは強く思い合って結ばれてるんですもの。

 私の入る隙間なんてどこにも……」



「「いやいや! ちゃんと空けてあるから!」」


「ど、どういうことですかっ!?」


「王女さんって強くて勇敢でいじらしくってオレ好み!」


「え」


「うん。俺もお嬢さんは好きだな!

 最初は俺達、王家はみんな滅ぼそうと思ってたんだけど。

 お嬢さんだけは真面目だし、がんばってるし」


「うぶだし、かわいーしな!

 オレも王女さんが王都で頑張ってるって聞いて、すごく励まされてたんだぜ!」


「え、え、ええっ?」


「そういうわけだからよ!」


「俺達と結婚しよう!」




「よ、喜んで! って、たち!?」




「おっと、友よ愛する女よ!

 こんなところにいい感じのでかいベッドがあるぜ!」


「うむ。心の友よナイス発見だ!

 さっそく3人の初夜だな!」


「そんな、え、あ、あっ、だめっ、ああっ。

 いいっ、前から後ろからなんてこんなのはじめてぇ。

 ふたりともすきぃぃぃぃぃ」




 はっぴーえんど!





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以前投稿した時に読んでくださった方々へ。

あんな人が見ない時間に投稿したのに読んでくださって感謝しかありません。

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― 新着の感想 ―
[一言] そんなバナナ。 王女失恋して終わりかと思ったらまさかの3P。 しーんじられなーいことでしょーおけれどー 最初から最後までの謎の疾走感が謎に気持ち良かったです。
[一言] 魔王の特性でプレイの幅が広がりそう。
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