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歴史転換ヤマト  作者: だるっぱ
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雪山登山②ー足

 40代の頃は淀川の河川敷で行われるマラソン大会に毎年参加していましたが、50代になってからは参加していません。定期的にランニングをしていたのに、最近は時々しか走りません。また40代の頃のようには走れないという、体力的な衰えも感じはじめました。それでも、僕が普段履きにしている靴はランニングシューズになります。

 ――俺はまだ走ることが出来る!

そんな未練のような思いが、僕のランニングシューズには込められています。


 半年前の9月に、大台ヶ原に行きました。大台ヶ原には2つの登山コースがあり、有名なのは東大台コースになります。アップダウンが少なく登山というよりもハイキングなのですが、見どころは満載。家族と楽しめる良いコースだと思います。対して西大台は、アップダウンが激しい上級者コースになります。原生林の中を歩く苔生した世界で、とても神秘的でした。


 大台ヶ原で登山といっても普通はどちらかのコースを選ぶのですが、欲張りな僕は1日で2つのコースを歩いてきました。その合計距離18km。この時に履いていた靴はランニングシューズになります。

 ――ランニングシューズ最強!

みたいな変な思い込みが僕にはあったのですが、これが仇になりました。平地の18kmと山道の18kmは、全くの別物。歩き終えて登山口があるビジターセンターに辿り着いたころには、立ち上がれないくらいにヘトヘトになってしまいました。これほどまでに体力が必要だったとは……。ただ体力以上に辛かったのが、足首と膝関節の痛みになります。あまりにも関節が痛くて、最後は足を引き摺っていました。


 登山道は舗装された道ではありません。凸凹でアップダウンが激しくて、危険なガレ場があったりします。そうした道を歩くときランニングシューズのように底が柔らかい靴では、足の関節に負担がかかってしまいます。山道を歩くために作られた登山靴は底が硬い。更にはハイカットのタイプは足首を固めることが出来ました。登山靴は、登山をするために作られた専用の靴だったのです。早速購入することにしました。


 それ以後の登山は、新しく購入した登山靴のお陰で関節の痛みが軽減しました。ただ、冬季の登山は道に雪が積もっています。登山靴だけでは、足元が滑ってしまい太刀打ちが出来ません。足を滑らせないための装備としてアイゼンがあります。これは、登山靴に装着する爪になります。アイゼンにも種類があって、12本爪の代表的なアイゼンは本格的な雪山仕様で、雪が少ないのなら4本爪の軽アイゼンやチェーンスパイクを選択します。


 12月に山上ヶ岳に登った時は、チェーンスパイクを装着してみました。歩きにくいのかな~と思っていたのですが、それほどでもありません。それどころか雪が深くなるほどに、チェーンスパイクの爪の効果を感じることが出来ました。また渓流の岩場を渡る時も足元が滑らない。安心して歩みを進めることが出来ました。ただそれでも、2月の厳冬期の雪山登山に向けてはチェーンスパイクも役不足に感じます。更なる装備の充実が必要でした。その装備とは、12本爪のアイゼンとスノシューになります。スノーシューとは、「かんじき」のことです。深い雪を歩くとき、これがあれば足が雪の中に沈みにくくなります。

 

 登山に関係する道具は、どれも高額でした。命を守る装備なので、高額なものはそれ相応のスペックを備えています。ただ僕は性格がケチ臭いので、できるだけ安く購入したい。ヤフオクを利用することにしました。ただ知識がないので、商品の良し悪しが分かりません。スノーシューにしても、似たようなものにワカンという製品もありました。ただ、ヤフオクでも案外と高い。ジャンク品であっても、物によってはドンドンと競り上がっていきます。そうした中、アイゼンをかなりお安く競り落とすことが出来ました。


 数日後、現物が自宅に届いたのですが、錆びまくったアイゼンでした。安かったのでこれは仕方がない。さび落としで綺麗にします。ただ、登山靴にどのように装着したらよいのかが分からない。ネットで調べるのですが、僕が競り落としたアイゼンの装着方法が分からないのです。それもそのはずで、このアイゼンは僕が子供の頃に使用されたかなり古いアイゼンだったのです。現代のアイゼンは、もっと軽くスタイリッシュになっていて、登山靴に装着しやすい。対してこのアイゼンは、完全な鉄の塊で装着が難しい。どうりで安いわけです。


 自分なりにアイゼンの装着方法を考案して、厳冬期の高見山に次男と一緒に登ってきました。次男にはチェーンスパイクを渡して、僕はアイゼンを使います。結果は最悪でした。3メートルも歩けば、アイゼンが足から外れてしまうのです。息子に格好良い父親の姿を見せたかったのに、アイゼンの不調で僕は足を止めてばかり。往復4時間の登山コースなのに、僕の所為で5時間以上もかかってしまいました。まぁ、息子は初めての深い雪山に喜んでくれたのでそれは良かったのですが、アイゼンの問題は僕に重く圧し掛かりました。


 僕が目標とする山は、標高1,915mの八経ヶ岳になります。ネットにアップされた登山の様子を追いかけていると、皆がスノーシューやワカンを使用していました。山頂は腰上の雪が積もっているので、アイゼンだけでは太刀打ちが出来ないようです。しかし、ヤフオクでスノーシューを競り落とそうとしても、良いものほどドンドンと競り上がります。またスノーシューにも種類があって、何でも良いわけではない。雪山を登るためには、坂に合わせてスノーシューの角度を変えることが出来る製品でないと、返って足に負担をかけてしまうようです。結局のところ、スノーシューを競り落とすことが出来ませんでした。


 とうとう八経ヶ岳に登る日がやってきました。僕の装備は古いアイゼンのみ。装着方法について、更なる改善を試みたのですが、結局のところこのアイゼンが原因で登頂は叶いませんでした。荷物の量を減らすためにチェーンスパイクを持っていかなかったのですが、山に登りながら、ずっとこのことが悔やまれました。せめてチェーンスパイクを持ってきていたら……。

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