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ある高校生冒険者のAdventurer's Report ━あるいは陰キャ型高校生が彼女を作りたかっただけの話━  作者: 適当男


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page38 ヒゲオヤジと言えば花札屋の配管工の方が有名だと思うんだが

さて、やって来ました。

ヒゲオヤジ(推定:アル中)のお宅。

非常に不幸な出会いではあったが、本戦前の貴重な追加戦力確保とあってさっそく臨んだ契約の場は。


……村!?

どこかの森の中の村の中央広場みたいなところに立っていて、目の前には一軒の石造りの家があった。

周りにある家も同じような造りの家になっているが、おそらく契約対象のドワーフはこの家の中にいるのだろう。

ドアには金属製のノッカ-が付いていたので、若干強めに、


ガンガンッ、と鳴らすと中から


「誰じゃ朝から喧しい!?鍵何ぞ掛かっとらんから入ってコンカ!」


 めんどくさそうなオヤジ気質の持ち主の予感をしつつ、開けようとすると。


「お爺ちゃん!知らない人かもしれないし、名前くらいは聞かないと!?」

 オオゥ、ロリ声…だと……!?不毛の大地に希望が芽生えてきた!!!?

だが待て。落ち着くんだ、守。まずは落ち着いて慎重かつ冷静に確認しなければ。

女性を外見で判断・評価したくはないが、流石に髭を生やしたガチムチの女性は……その、何だ。


凄く……困る。(真剣


そういう男のUTUWAを試される様な娘ではなく、もう少しこう、普通のだね……


ええい、ままよ!


「失礼します!!」

ドアを開けると足元にマットレス、眼前にでかくて頑丈そうなテーブルセット一式が。

左奥の席には予想通りのヒゲジジイとその陰に隠れた女の子がいた。


「何じゃあ、お前は……!?人間が何しに来やがった!!!?」


「えっ?人間?人間なの?」

 この手の頑固オヤジパターンだと回りくどい言い方をすると却って面倒な事になるな……

「爺さん。アンタと召喚契約を結びに来た。契約の細かい事は後で詰めるとして、結んでくれるかい?」


「おう、話が早いじゃねーか。だが、断る!ワシャもう人間からの依頼は受けんと決めたんじゃ!」

 また、厄ネタ持ちか。これだから髭ジジイは(無関係・風評被害

「そうか。時間と酒代は無駄になったがシャ-ナイ、じゃーな」


「待ってください!」

今までジイさんの陰に隠れていた女の子が急に大声を上げた。

「何じゃ、リミカ。危ないから下がっておらんか」

ジジイの声を無視してトテトテトテとこちらに近づいてきた少女は、

「あ、あの、お爺ちゃんが契約しないなら、私が契約します!!!」


「こら!何を言い出しとるんじゃ!?」


「お爺ちゃんは黙ってて!!! お爺ちゃんが仕事しないからもうず~っとお酒が飲めないんじゃない!!!!!」

 この子、見た目は子供だけどもしやアル中……!?

「む。それを言われるとアレじゃが「働かないなら私がおしゃけを稼ぐのを邪魔しないで!!!!!」オイ、ワシじゃって働かないわけではないワイ。よし、そこまで言うなら爺ちゃん明日から……「今日から!!!!」ウ、ウム。今日から、今日からのう……なぁリミカや、やっぱり明日から……「人間さん!私リミカって言います! ドワーフ女子として鍛冶戦闘全般は一通り納めています!不束者ですが、末永くお願いいたします!」ダ、ダメジャアアアアア!!!!可愛いリミカを人間の所に何ぞやれるか!おい小僧!ワシに何をさせる積りか知らんが、仕事の報酬は前払いでしか受け付けんぞ!!!後払い。ましてやツケなんぞ認めんからな!!!!踏み倒し何ぞ企みやがったら地獄の底まで取り立てに言って身包み引っぺがしてやるからな!!!!!!」」

 エインセルに続き、ドワーフまで。一昔前のサマナー達はモンスターを何だと思っていたんだ……

「おk。報酬は…「おしゃけ!おしゃけでお願いします!!!!!」おk。じゃあ一旦仮契約ってことでここで契約して、報酬として提供する予定の酒とツマミを後でお試しで渡すから、本契約するかはそれから決めるってことで……「いつですか!おしゃけはいつ渡してもらえますか!!!?」…必死過ぎるだろう。飢え死に渇き死に寸前の人でもここまで必死にならんわ。多分。「そんな事はどうでもいいんです!」……仮契約が終わって帰ってからだから2時間…って伝わるかな?「はい!」ならそういう事で。「はい、よろしく」「よろしくお願いするワイ。ふぅ~ワガママな孫を持つとジジイになっても苦労するワイ。ワシも酒は随分と久しぶりだからのう、質も大切じゃが、量の方も期待させてもらうゾイ」

 酒屋に樽一つ分注文したけど、足りる……よな?ビールサーバーのレンタル代込みで2万くらい商店街の酒屋に払う羽目になったんだが。追加でもう一つ注文しておくか?樽一つで1万円とか高すぎるんだが。水詰めてもバレない、とか……

「オウ、いきなり踏み倒しの算段か?いい度胸しとるノゥ?」


「踏み倒す気は無いけど金が無いんだよ。何か売れるものない?金が出来れば追加で持ってくるけど」


「金になる物か。おい小僧、そっちだと今何が高く売れる?」


「え?う~ん。パッと思いつく所だと貴金属とかアクセサリーとかかな?」


「何じゃ。武器防具はイランのか。ドワーフ製っちゅーたら結構売れると思っとったんじゃがノゥ」


「ごめん。需要はあると思うけど、供給するためのツテが無い。そっか。ブランド販売……そういうのもあるのか今度鍵瑠に相談してみるか」


「装飾品は今手元にないのう……」


「おしゃけぇぇぇぇぇ~~」

諦めなさい。樽一つでも10リットルは入っているから。



そして、2時間後に酒樽担いでやって来たドワーフ村では。


「「「「ようこそ、人間様!!!!!!」」」」

ヒゲオヤジとリミカちゃん含むドワーフ共が皆大好き包囲殲滅陣を敷いていた。

「おい、ジジイ!!!!!これはどういう事だ!!??」

「知らんわ! コヤツラ何処からかワシ等の話を聞きつけよって湧いてきよった!!!おい!!!テメェラは散りやがれ!これはワシの「ワタシのおしゃけ~」じゃぞ!!!」

怒り狂うジジイを横目に何人かのドワーフオカンが近づいてくる。

「いや~アンタが今度ルドルフのヤツと契約しようっていう人間かい?」

 あのジジイの名前はルドルフか。ジジイには勿体無い名前ではないか。

「ああ。そうだけど。何か用ですか?」

「ああ、そう身構えないでおくれよ。なに、契約の件だけどウチのヤドロクなんかどうだいって話さ。

ルドルフさんも鍛冶の腕は村一番だし、昔は戦士の腕も一番だったんだけど、ホラ。もう年だからさ。何かあったらリミカちゃんも大変だし、そこんとこウチのヤドロクだと鍛冶の腕はあんまりだけど、まだ働き盛りだから家で獄潰しされていてもねぇ、ってわかるだろう?そういう事だからさ。」

 どういう事だってばよ。 似たような売り込みを何度か聞かされる。一聞するとジジイの家を案じているように聞こえるが、要は自分達にも稼ぎが欲しいという事だろう。これで何某かに聞くような「働きたくないが金は欲しい勢」なら普通にCO案件だが労働力の提供を提案されているし、別にジジイの家をムラハチにしたいわけでは無いので、

「みんなー!お酒が飲みたいか~!」


「「オオ~!!!」」


「ツマミも欲しいか~!?」


「「「はい!はい!はいはいはい!」」」


 担いできたビールサーバーと樽をジジイに出させたテーブルの上に設置して、各人のコップに注いでいく。

「ワ、ワタシのおしゃけ~」

お酒惜しさにマジ泣きする少女とか特に見とうなかったんじゃが。

ビールが行き渡ったのを見届けると、

「挨拶とか考えてないのでとりあえずカンパーイ!!!」

「「「「「カンパーイ!!!!!」」」」」

その場にいた俺除く全員が一息でコップのビールを飲み干すと、

「「「「「ウオオオオオオオォォォォォー!!!!!」」」」」

「何じゃこの酒は!!!!!」

「ウマイ!!!ウマスギル!!!!!」

「カユ……ウマ……」

「おい、小僧!?この酒は何じゃ!!!?ワシャ今まで生きてきてこんな美味い酒は飲んだ事ないわい!!!!!」

「言いすぎだろ。これビールって言う向こうじゃ庶民向けに作られて売られている酒だぞ?」

「ビール……ビール言うんか……」

「いや、こんな美味い酒は相応の敬いを持って呼ばねばならん!おビール様!この酒は今日からおビール様じゃあぁぁぁぁぁ!!!!!」

「「「「「ウオオオオオオオォォォォォー!!!!!」」」」」

「「「「「おビール様!おビール様!!おビール様!!!」」」」」

「ウヘヘヘヘ……おビールしゃま、だいしゅき……」

これは酷い。とりあえずサーバーの樽を交換するとすかさず前に整列するアル中共。

飴はこれくらいで、そろそろ鞭を入れんとな。

「全員、傾聴!!!」

 心なしか飲んべえ共が背筋を伸ばした気が……

「ウヘヘヘヘ……リミカはおビールしゃまのお言葉はよ~く聞こえているのでしゅよ……」

 しただけだった。

「俺の名前は小野麗尾 守!人間の冒険者でサマナーだ!今日は貴方達ドワーフと契約を結びに来た!」

ザワザワザワ……

「契約に基づく労働の対価として支払われる予定のブツはMPと今貴方方に振舞ったビール並びにその他酒類又は食べ物である!!」

「おビールしゃま~!リミカはおビールしゃまにどこまでもついていきま~しゅ!ムニャムニャ……」

「お、俺もだ!こんな美味い酒を貰えるならどんな仕事だってやってみせらぁ!!!!」

「ほら、ヤドロク!アンタも男の見せ所だろう!?」

「カ、カーチャン。止めてくれって……行く、行くから」

「オイ、小僧。ワシも腹ァ括ったぞ。ジジイの腕で良けりゃ貸してやるワイ」

次の瞬間、召喚機に格納されていたはずのドワーフのカードが何故か目の前に出てきたかと思うと、目算5メートル位まで浮かんだかと思うと一瞬閃光弾の様に光り輝いた。落ちてきたカードを受け取ると、そこには暗い鍛冶場で鉄を打つドワーフが一人描かれていただけのカードが、真昼間から村の広場で宴会騒ぎをしている酔いどれドワーフ達の絵のカードに切り替わっていた。

思わずゲートを二度見するが、ゲートは開いたままだった。

危うくアル中共の巣に閉じ込められるところだったと思うと冷汗がブワッと……


この話を書いたせいで、わた、と入力すると、

ワタシのおしゃけ~、が変換候補に並ぶようになった。orz

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