表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある高校生冒険者のAdventurer's Report ━あるいは陰キャ型高校生が彼女を作りたかっただけの話━  作者: 適当男


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/165

page.29 破滅を告げるもの、汝の名はヨクアルタイムズ その物、校内新聞なり

昨日はあの後、生活指導室で池流と共に反省文の作成に追われた。

おのれ教師共め。と思う気持ちが無くも無いが、謹慎・停学とかにならなかったのは正直彼らの温情だと思うのでこれ以上は思うまい。

一週間程度の停学と、三学期の平日放課後一時間が徴収されるのはどちらが良かったか悩みどころだが。

一昨日に引き続き、父さんに怒られ、母さんにも怒られ…… 泣かれなかったのが幸いか。

はぁ、気分が落ち込む。

二学期の時みたいに注目されないのは良いんだけど、昨日みたいなアンタッチャブル扱いだと俺含めた全員きっついなー、と思ってやってみたが、どうなるかな。

さすがに不登校になったクラスメイトはいないよね、いないでくださいお願いします。

祈りながら校舎に入り下駄箱に近づいた辺りで、騒がしさに気付く。

何だ?

靴を履き替えて騒音の出所を追ってみると廊下の掲示板に人だかりがある。

近づけてみるが掲示物まで五、六人分位の厚さの人混みがある。

遠めに見るしかないのだが、騒ぎの原因となった掲示物はすぐに分かった。


『衝撃!!! 翌亜琉高校に魔王降臨!?』


東○ポか週刊誌の中身かな?

大文字太字のタイトルがハッキリと見える。

嫌な予感がする。というか、確信する。違ったら自意識過剰ヤローって事だけど、正直その方がいい。いいよね、いい……

先頭から出ようとした誰かが俺の方を向き、「おい、あの人……」と隣に声を掛ける。

「え?」「あっ」「やばい、やばいって……」

自然に俺と掲示板の間の人だかりが割れ、その場にいる生徒の注目が俺に集まる。

さっきの確信を確信する。頭痛が痛いと同レベルだ。ボスケテ。ボスはいないけど。

HRの時間が近いので、スマホで掲示物を撮影してその場を離れる。

集まっていた皆さんは進行方向の道を速やかに開けてくれた。

翌亜琉高校の生徒は親切だなぁー(棒


教室に入ると、

「おはよー 守。昨日は凄かったな、あれから大丈夫だったか?」

「……おはよう、拳道。無論、大丈夫な訳ないだろ。ペナルティきついわ」

「はっはっはっ ご愁傷さん。いやぁあれは、ここしばらく無いくらいに笑わせてもらったぜ」

「……そいつは良かったな。こちとら朝からキッツイもん見て全く笑えんわ」

「あー、掲示板のあれな。うちの学校、新聞部あったんだな。俺初めて見た気がするわ」

主犯は新聞部か。

「内容は見えなかったがタイトルがなぁ……」

「あー、あれなぁ」

席に着いてHR開始までクラスの様子を見たところ、今日は欠席者は居なかった様だ。

話し声はするが、微妙に緊張感があってぎこちないと言うか、俺の様子を窺っている感じがある。

HRで名指しで注意を受けたくらいで、午前中は空気に固さを孕みながらも特に問題なく進んだ。

で、クラス外の問題だ。朝撮影した新聞もとい怪文書を休み時間に読んだのだが。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ヨクアルタイムズ号外  翌亜琉高校 新聞部作成


『衝撃!!! 翌亜琉高校に魔王降臨!?』


短い冬休みが明け、三学期が始まった我らが翌亜琉高校。

その始業式からわずか数日で、このような惨劇が起こるとは誰が想像していただろうか。

噂はあったのだ。冒険者になり夏休みデビューを果たそうとしたと思われる生徒Oが、デビューに失敗し一発屋芸人にすらなれなかったある種の憐れみを感じさせる彼が、無謀にも総合格闘部の期待の新人Kと対戦すると言う噂が。

本紙記者はこれを生徒Oの冬休みデビューの亜種と推測して取材を試みるも、同生徒に接触する事ができず、巧妙かつ狡猾な情報隠蔽の気配を感じさせられた。生徒Kは放課後は夜遅くまで修練に励んでおり、取材を持ちかける事が躊躇われたので仕方なく別の線から噂の元を辿った所、ある信用できる筋から決闘の真偽と日取りの裏を取る事ができ、本紙記者は事件当日に、その決闘の開始から決着まで余すところ無く真実を、あるいは悲劇をその瞳にしっかりと捕らえたのだ。

舞台の幕は武道場で上がった。

審判役の外部顧問、元A級冒険者であり、総合格闘部の部員に師匠と慕われる彼が立会いのルールを告げ、双方共に最初は礼儀正しく挨拶を交わし、いざ尋常に勝負! とここまで言えば読者の誰もが少年漫画の一幕かオリンピックの試合の立会いを想像するだろう。


だが、ちょっと待って欲しい。


果たしてそれは、現実にあった風景だったのだろうか?

本紙記者のジャーナリストとしての名誉にかけて”いざ尋常に勝負”の下りまで誤った記述をしていないのだが、結論から述べると貴方の想像は違う。それは、そうそれは残念ながら間違いなのだ。

本紙記者はそれを証明するために以下の証拠を提示しよう。


【生徒Kの決闘直前の写真】【生徒Oの決闘直前の写真】


お分かりいただけただろうか。そう、当時二人は確かに心情こそ尋常に勝負に臨んではいるが、これは明らかに異常である。

道着姿の人物と、何処の特殊部隊かと見紛う人物の勝負。しかも生徒Oはボウガンまで持ち込んでいるのだ。


だが、心配のしすぎではないか。


そう思った貴方は幸いだ。貴方はまだ何も知らないのだから。

生徒Oは、この回の決闘ではボウガンを使わなかったものの開始直後に二メートル以上は有ろうかという棍を振り、生徒Kが飛び上がって避けた所を虫を叩くかの如く執拗に叩き伏せ、トドメに背負ったメイスを親の敵の如く側頭部に叩きつけたのだ。

勝負の世界は厳しい物と言われるが、果たしてこの厳しさは必要だったのだろうか。いや、これは本当に厳しさなのだろうか?

生徒Oが生徒Kに何らかの悪意を持っていなかったと誰が証明できよう。

生徒Oの生徒Kに対する心の闇は今後の取材により明らかにされるだろうが、今はこの事件について続けて記述しよう。

これ以上記述する事があるのか? と読者の皆様は思われたかもしれない。

だが、残念ながらあるのだ。しかもこの生徒Kに対する出来事は本事件の全体からすれば極々一部分に過ぎない。


次の犠牲者は生徒Kの先輩に当たる人物で、生徒Oは彼に対しても武器による一方的な攻撃の後、練習に明け暮れた彼らをあざ笑うかのごとく、格闘ゲームの必殺技を再現したかのような非効率・非現実的な挙動による一撃を加えた後、それでも飽き足らぬとばかりにその両手で握り締めたメイスを哀れな被害者の腹部に叩きつけた。


【総合格闘部二年生をジョー、リューケンした時の写真】


三人目の犠牲者にいたっては、悲惨の一言に尽きる。遂に、ここに来て遂に生徒Oはボウガンを取り出したのだ。


一発だけなら誤射かもしれない。


貴方はそう思ったかもしれない。だが、現実は恐ろしく残酷で無残なものだ。生徒Oは一発どころかネコがネズミを甚振るかのごとく、数十発にも及ぶ射撃を淡々と、だが執拗に犠牲者に浴びせたのだ。


【総合格闘部部長の敗北直後の写真】


犠牲者に淡い思いを寄せているであろう総合格闘部のマネージャーの女子が必死に矢を外す傍らで、気遣う素振りも見せず悠然と外された矢を拾い集める生徒O。彼はこの時何を思っていたのだろうか。

普通の感性を持ち合わせていると自負する本紙記者には到底想像することが出来ない。

生徒Oはもはや常人には理解する事のできない精神構造をしている物と思われる。

その後も惨劇は止むことなく生徒Oによる最終的な被害は、クラスメイト生徒Kを三回殺害、総合格闘部の生徒もそれぞれ一、二回殺害。

被害は他の部の生徒にも及び、少なくとも六名の生徒が一回は殺害されている。


生徒Oは何故このような凶行に及んだのか。

この悲劇は事前に食い止めることが出来なかったのか。

事件後に外部顧問が責任を取ると声明があったが、彼の責任云々よりもまず対処すべき問題は、今だに何の処罰も受けず野放しとなっているであろう生徒Oの処遇ではないだろうか。

本紙記者は、この事件の真相を探るべく今後も取材を続けていく所存である。


最後に読者の皆様に一言警告を送りたい。


この恐るべき魔王は、まだ貴方の通う学校にいるのです。たぶん今この時も。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


記事書いたやつとOHANASHIしなきゃ(確信


いや、ほらせっかくの魔王認定だし。

いや、ホント。ホントに、ねぇ……


何なのこの記事(怒


俺に対して、ものっそい悪意に満ち満ちた内容に俺の怒りが有頂天になった。

この怒りはしばらくおさまる事を知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ