page.114 多の死威夏休みの死苦大 5日とんで14日目
雪女の子供3人組を里まで届けて、お上に用地買収の根回しをして早数日。
北海道攻略も順調に進んで、後は残存モンスターの掃討と失地奪還宣言位か、という所迄来た日の夕食後に勧められたアフターディナーティーを飲んでからやけに眠い。
日中は特に戦闘に出る事も無く、鍛錬していた位なのに、何故……
Zzzzz……
ハッ!と目を開けると、
「知らない天井や……」
おい、待ってくれ。何だこれ……誘拐?誘拐?
北海道攻略が終わったら、先行視察と称して雪女の里の温泉でオヌェさん達とキャッキャウフフでモテモテな混浴休暇を……
こんな金属造りの一室なんかではなくてだね……
嘘だ…これは夢だ……
そう、目が覚めたら俺は牛丼の操縦席に居て、作戦終了の報告を……
コンコン
「小野麗尾さん、お目覚めですか?」
野太い男の声
「嘘だあああああああああああああああああああ!!!!!」
その頃、小野麗尾君が連れられている戦艦大和の艦橋にて
「はて、今どこからか悲鳴が聞こえてこなかったかね?」
と聞いてきたのは、山本五十六海軍元帥
「気のせいでしょう。それより今後の予定ですが……」
平然と返すは栗林忠道中将
「うむ。先の作戦では損害らしい損害が出なかったからね。戦力をそのままに、防衛ラインを押し上げて再構築するプランが可決されたのもむべなるかな、といった所だね。ハバロフスクに上陸の橋頭保を築き、征夷作戦同様、かつての市街の要塞化及び点を線で繋ぎ、面制圧による占領解放の繰り返しとなるだろう」
「ただ、彼に話を通していないのが気になる所ですが……」
「彼には私から話をしておこう。何、聞く所によると近頃珍しい愛国精神を持つ若者との事じゃないか。
膝を突き合わせて話せば分かってくれるさ。折角取り戻した北海道への脅威を取り除くのだからね」
「……かつてとは時代が違います。議会からの干渉を受ける前に、という我々の都合で一服盛って無理矢理連れてきたのです。
最悪の場合、彼の協力は得られない事はおろか、敵にすら……」
「むぅ……御国のために、とはいかないものか……」
「いかんでしょうなぁ……」
「待て。そなた等はマモルを無理矢理連れてきたのか?」
「武様」
「その通りでございます。ですが、これには訳が……」
「どの様な訳だ?」
「彼は……一言で言うと、やり過ぎたのです」
「此度の征夷作戦、軍は8割ほどの損害を覚悟の上で兵を動かしました。
しかし、蓋を開ければ1分にも満たぬ損害で北海道解放に至りました。
これ程の戦果を挙げる事が出来たのも偏に彼の”準備”による物。
最早彼は国家戦力として扱われる事は免れぬでしょう。」
「それと同時に、彼に対しても様々な思惑が働きます。
取り込もうとする者位ならまだましで、最悪は他国からの暗殺すら……」
「我が国では護れぬのか?」
「護れぬとは申しませぬ。
ですが、その場合、彼は我が国の思惑によって人生を決められてしまうでしょう。
恐らくは国家保有戦力としての人生を……」
「我々としては彼に多大な恩がある以上、その生き方を強制させるという恩を仇で返す様な事はしたくありません」
「それと今回の件がどの様に繋がるのだ?」
「つまるところ、彼には冒険者としての実績を始め、まだ様々な力が足りないのです。権力、とも申しましょうか」
「北海道は国家の領土故、彼個人に対価無く与える事は出来ませんが、現在大陸の領有権は我が国含め、どの国にもございませぬ」
「例えば一個人が絶大な戦力で実効支配する地域があったとして、何処からも文句が出る事はございませんな」
「軍としても隣接地域が安定しているに越した事はございませんのでな」
「彼には大陸でのご活躍をお祈り、と言う訳です」
「ふ~む……だがそれも、結局は我々の都合で、彼の意思を無視しているのではなかろうかのぅ……」
「故にこそ、悩んでいるのです。どの様に説得した物かと」
「欲の薄い御仁ですからの。あのくらいの年の若者ですと、女か金か……おお、殿下の前で俗な事を」
「よい。……女…… 姉上とか?」
「殿下。彼はあれ程の器量の異性が複数近くにいるにも関わらず、未だに……未だに?本当に??手を出されていないのですぞ?」
「そうだな。姉上も随分と器量は良いと思うのだが、あの中に並べるとなると……」
【悲報】守君、やりすぎを懸念され大陸に出荷。なお、追放ではない模様。
国内のコネはあるけど権力は別にないからね。なお、影響力は絶大な模様。
MPも国から出すにも限度があるからね。しょうがないね、ヤンナルネ……
戦力・財力共に大で将来性バツギュンの企業経営者の未婚の男とか本来なら……




