page.112 多の死威夏休みの死苦大 4日目
日曜日の午前を犠牲に最新話を召喚!
土曜日?ああ、あいつはイイ奴だったよ……(武装探偵を名乗るJKと大泥棒と傾奇者に巻き上げられて薄くなった財布の中身を見つつ
ズシーン……ズシーン……
ズシーン……ズシーン……
白一色の雪原を全高300mはあろうかと言う超巨大牛丼:城塞盛りがのし歩いていく。
晩夏の北海道に存在する雪原という異常地帯の横断に危機感を抱いた陸軍からの要請に応じて、陸軍3個大隊に全冒険者を載せて道東は旧:網走に存在が確認されたSランク相当ダンジョンに向けて配送作業に従事する事になったのだ。
とはいえ俺がやる事は目的地と進行ルートの通達と周囲に散らした牛丼:並盛・小盛の報告を聞く位である。
モンスター?牛丼が自動的に”処理”しているし……
偶に抜けてくる高ランク個体も何トンあるかも解らん脚の一本でプチッとなるのだ。
大きさと重量だけで凶悪な制圧兵器と化した牛丼:城塞盛りは現在の所、只の一発も砲はおろか、近接制圧用の機銃すら撃っていない。
兵装に掛けた15億の費用に思いを馳せながらボーッとしていると、先行していた牛丼1セットから判断を要する事態の発生の報告が入った。
「マスター、大変です!こちらに保護を求める民間人らしき人達が居ます!!!」
……北海道に民間人が居る?有り得ない。念の為、参謀本部に報告、判断を仰ぐか。
「彼女達はこちらの代表に会いたいと言っています!」
……彼女達?女性なのか?
「何をしている!艱難辛苦に満ちた”試され過ぎる大地”を生き抜かれた女性を外にお出ししたまま等、小野麗尾興業の社名が廃る!
速やかかつ丁重に保護するんだ!」
「ハ、ハイ!!」
保護を開始したと同時に、軍参謀本部への連絡も済ませて一休み。
軍医の方々からの連絡では、特に問題が無い、と……
ん?問題が無い?極めて健康?
……
まぁ、いいか!問題が無いんだから良いんだよな!そうだよな!!
……イ イ ワ ケ ガ ナ イ
―――キイィーーーーーーン――――
「えと、これで良いんですか?」
「はい、もう繋がっていますよ」
「凄いですね、これで声を伝えられるだなんて……」
ガチャ!
「あんた達、もう聞こえているわよ!?部屋の外で本当に声が聞こえた!?」
!!!!!????
「こちらHQ!全体放送の使用許可は出していない!誰が使っている!?」
「あ、マスター!こちら牛丼・並盛123号改めヒフミです!先程保護した人達が皆さんに是非お礼を伝えたいとの事でしたので放送室にご案内しました!」
「ご案内しましたじゃない!おバカ!?」
「知らないんですか、マスター?バカって言う方がバカなんですよ?」
「あわわわわ、ケンカしてますよ!やっぱりいけなかったんですよ!?」
「あ~、もう。ラピス!ここまで来たんだからちゃっちゃとやる!!ほら、オピスも良い?」
「そうだね、ルビちゃん!」
「ん。私も大丈夫」
「ほら、息合わせなさい!」
「せ~の、
「「「ふ と ん が ふ っ と ん だーーー!!!!!」」」
……なんて?
ツキジめいた極寒の空気の中、
「や、やりました!私達やり遂げましたよ!」
「ん。これで里も救われる」
「雪女の里秘伝の究極凍結呪法なんだから効かないヤツなんていないでしょ。ほら、さっさと男を見繕って持って帰りましょ!
今日から私達は里の救世主なんだから!」
何かはしゃいでやり遂げた感を出す推定3人組。
……まって。待って。情報量が多い…… 多い?多いか?
確かな事は唯一つ。
何もせずにここで待っていたら、俺は……女の子達にお持ち帰りされる……って事!?
「ちょっと何考えているのかしら?ゴ・シュ・ジ・ン・サ・マ?」
いつの間にか後部座席に座っていたエインセル(天女 宇受乃モード)に後頭部をゲシゲシ踏まれてトドメに妖精モードに戻った彼女のピコハンまで喰らう。……くそっ!何て世の中だ!?
俺と同じ発想に至ったのであろう連中が恍惚とした表情で運び出されるのを見て無言で砲撃指示を出しつつ、状況の把握に動き出す。
「此方、牛丼リーダー:小野麗尾 守!この放送が聞こえているなる関係各位より報告を求む!繰り返す!」
しばらくして集まった情報を基に状況を整理すると、事の推移は、
1.民間人を騙り、モンスター:雪女の3人組が侵入
2.軍医の医療チームの検診を受けるも、俺と同じ様に怪しんだ軍人さんが拘束しようとして失敗、氷漬けに。
3.3人組が牛丼を誑かし、皆にお礼を言える環境を訊ね、人を疑う事を知らない牛丼が放送室にご案内
4.究極凍結呪法、発動
5.一部軍人・冒険者にやむを得ない被害が出たが、
正気を保っていた乗客の皆さんが3人組を制圧
6.
「ごべんなさい~でもこのままだと里が絶えてしまうんです~(泣」
泣きじゃくりながら土下座する金髪蒼眼の子に、
「ん。ウチの里は最後の男が死んでもう10年。男を連れ帰れないと子供が生まれなくて終わり」
正座で淡々と事情を説明するおかっぱ黒髪黒眼の子に、
「くっ、殺すなら私だけを殺しなさい!後ろの二人は私に無理矢理連れてこられただけで関係ないわ!」
仁王立ちになって身体を震わせながら両手を広げ後ろの二人を庇う様に威勢を張るロングポニテの銀髪赤眼の子に、
「…………」
事態の責任を問われ、この子らの処遇を委ねられた俺。
人生初の生くっ殺……
別に聞きとう無かった……
益体も無い事を考えながら、
「お父さん、お母さん……」
「な、何よ!べ、別にアンタなんて怖くなんか……「打首……獄門……今ならおしりペンペン5百回も……」ヒイッ!」
もう何もかも投げ出したいなぁ、と思考が進みかけるも。
「はじめまして。俺の名前は小野麗尾 守。まずは君達の名前を教えてもらえるかな?」
お菓子を見せびらかしながら言うと事案その物な挨拶から始めたのであった。
こんなショーもないネタの為に読者の投稿企画にわざわざ制限を出した作者がいるらしい……




