page.110 多の死威夏休みの死苦大 2日目
五稜郭城塞―――――――――――――――――――――――――――――――
幕末の動乱で一躍名を馳せたこの城塞は、北海道失陥の時より現在に到るまで日本国最北の防衛の最前線として今もなお、その名を轟かせる国防陸軍の基地である。
貴き方の御所を守護する近衛師団の入団条件や士官の将官への昇格条件に五稜郭での多年の配属経験が条件にあるなど、エリートの登竜門としても知られてもいるが。
そんな未来のエリート様や将官の皆様に混じって軍議に参加させられる俺と言う異分子。
「この様に旧国道に沿って進軍・主だった市町村を確保次第、陣地化・補給路の確保を繰り返し、第一作戦目標の札幌まで……」
「失礼」
正直この空気の中で話を遮るのは怖いし、発言と同時に室内の軍人さんに一斉に視線を向けられたのはチビりそうになるが、このままだと軍の作戦に組み込まれて、本来の稼ぎ目的が……
「どうかされましたか、小野麗尾さん」
どうかしたもこうしたも。
「まず、私が御国の為に防衛軍に協力するのは構わないのですが、私個人の裁量と言うのはどの程度考慮されているのでしょう?」
当初の考えでは、北海道の端っこにでも輸送してもらえれば後は好き勝手やるつもりだったんだが?
「と、いわれますと?」
何か心外そうなイントネーションですが。
「当初私が板挟見大佐にお話させて頂きました内容が、通常のダンジョンでは運用に難があるヨモツイクサ達の無制限運用を北海道で行わせて頂きたい、と言う相談だったのですが、軍の方々との連携を求められれば、私には役者不足と言いますか……」
「役者不足等とはとんでもない!小野麗尾さんが居るからこそ、過去幾度となく実施された奪還作戦に於いて失敗要因であった対モンスター群への対処が可能と判断できたのです!?」
ここで別の士官の方が後を引き継いで、
「従来の作戦ではモンスターの襲撃後の立て直し並びに野営の際の再襲撃により後退を余儀無くせざるを得なかったのですが」
聞いた話では次から次に群れが沸いてきて、その回転率も非常に高いという。
だからこそ稼ぎ場として非常に価値が高いと見たんだけど。
「普通に後詰を用意していても対応できなかったのですか?」
「お恥ずかしながら、前回・前々回の結果を踏まえて対策しても……」
毎回想定を覆される物量で押されるのだと。
「参謀本部の見解でもこちらの対応を予想し、対応の対応を備えているようだと」
ええ……
「嫌だなぁ。これ、毎回スタンピード起きてませんか?」
「はい、ですので今回は前回の作戦で確認できた発生元に軍の特殊作戦群と高ランク冒険者の皆様に向かって頂こうと」
軍隊を後方支援とインフラ代わりに使うと言うトンデモ作戦になったとの事。
……との事、で済むんですか、コレ。
「札幌までの道中は空軍・海軍が協力して進路を確保する事になっております。
この時点で道内の各所からモンスターが沸いて一斉にこちらに向かってくるでしょう。
これに対する迎撃及び防衛は軍が受け持ちます。
陸軍は札幌の確保並びに陣地化を行います。
此処までが作戦の第一段階になります。
冒険者の皆様は第一段階終了まで此方に待機していただき、第一段階終了後にまず札幌に入り、作戦の第二段階に備えてください。
第二段階では札幌からモンスターの発生源となっているダンジョンへのルートを確保、ダンジョン前を拠点化、最後にダンジョンの攻略となり、ここまでが第二段階、そして最終局面となる第三段階では確保した拠点を基に道内の全モンスターの駆除及び道内の再占有を行う事になります」
「お話を聞く限りでは、私に限らずとも、十分に実行可能だったのでは」
「ダンジョンが1つ2つであれば仰る通りなのですが……
米国の偵察衛星の画像を共有させてもらった所、I.F.L.を起こしているダンジョンが大小合わせ36個あるのです」
画像を基に事前観測・偵察を行った所、
Sランク相当の反応を出す所が5、
Aランク相当が30、
それ以下が未確認無数……
「Sランク反応の内、一つは軍が、一つは皇家が、最後の一つは冒険者の皆様にお願いしたいのです。
Aランク以下は軍と冒険者の志願者で攻略を……」
よし。Aランク以下に志願しよう。俺は只のCランクだし……
「冒険者のSランクダンジョン攻略班は既に人員が選定済みであり、まずは言わずと知れた小野麗尾さん。次にAランクの……」
待って。言わずと知れたと言われても、それこそ俺が知らないんだけど。俺はどう知られているんですか?
あと皇家がSランクダンジョン攻略とかそれこそ聞いていない……!
夏休みの納涼旅行兼アルバイト感覚のお仕事が何で国家事業に……!
軍からの守君の評価:必殺の神的国防兵器
それはそうと、この小説の1日当たりのPVが1000あるかないかってのは作品としてはどうなんだろうか?読者の皆、オラに所感を分けてOKURE!




