page.109 多の死威夏休みの死苦大 1日目
ガタンゴトン、ガタンゴトン……
おかしい。こないだ皆で海で遊んで俺の夏休みはまだ折り返しに入ったばかりだったはずなのに、
どうして今俺は日本国防衛陸軍の秘匿護送列車に揺られて北海道に出荷されているんだ……!?
北海道失陥時に爆破封鎖したはずの青函トンネルを秘密裏に再掘削して五稜郭絶対防衛城塞地下と直結して兵站輸送路にしていたとか軍事機密を俺に聞かせてどうするつもりなんだ……!?
同車両内には明らかに将校クラスの軍人さんがいて全く落ち着かないんだが。
「ちょっといいかね?」
勲章がずらりと並んだ軍服を着たご年配の将校に声を掛けられて、
「は、はい!!!何か御用でしょうか!?」
「いや、そんなに緊張しないでくれ。私は君にお礼が言いたくてね」
「お礼、ですか?私が何か……?」
「今回の征夷作戦の発端……いや、民間では北海道奪還作戦、だったな。まぁいずれにせよこの作戦の切欠になったのが君の提案だと聞いてね」
「私は北海道失陥当時、あそこに居たのだよ。大陸から逃れてきた露西亜軍人、中華人民、モンスター……一斉に押し寄せてきたこれらを押し返せず北海道を失わせてしまったあの時の事は今でも夢に見るんだよ」
「はぁ……」
「私が生きている内に早数十年。何も成果を上げられず、このまま汚名返上の機会が無い物かと諦めの境地に至ろうとしていた所に今回の作戦だ。正直、感謝しても感謝しきれん。何か今後困った事があれば私も君に力を貸そう。只のジジイではあるが、何、年を取っている分色々とツテやらコネやらはあるつもりだ」
「五稜郭~五稜郭~間もなく五稜郭に~到着いたします」
「おっと、もう着いたか。ワシの名は栗林じゃ。何かあったら遠慮なく訊ねてきてくれ。軍の者には話を通しておくからの」
栗林……栗林?
……栗林忠道中将!?
去っていく後姿に慌てて敬礼する。
硫黄島の守護神参陣とか防衛陸軍ガチ過ぎんか……?




