page.81 駄羅駄羅学校生活
いつの間にか100話に到達していたという恐るべき事実。
100話記念は思いつかなかったので今回も普通の話を。
入部試験から3日後の月曜日。
昼休み中のクラスの中で、入部希望者の書類を見ていると、ふとクラスの中の会話が聞こえてくる。
「ねぇねぇ、志子ちゃんってやっぱり小野麗尾君と付き合っているの?デートとかした?」
「はい、小野麗尾様と私は召喚モンスターとして「いやいや、そーゆーんじゃなくてこう、男と女の仲っていうか……」
そういうことでしたら旦那様とは末永く「キャー!旦那様ですってよ!奥様!?「SUENAGAKUだそうですわよ、奥様!?」」
あの、それで”でぇと”というのは一体何でしょうか?私、当世には疎いものでして「デートね、デート。仲を深めたい男と女が一緒に出かける事よ」そうなのですか。当世では逢引の事をその様に呼ぶのですね「いや、逢引って……」「まぁ、間違ってはいないけどね」
それでしたら、私が初めて現世に御呼び頂きました時に、
旦那様に白須等自然公園なる場所に連れて行って頂いた事が御座いまして「白須等自然公園?あそこって只の散歩道」「しっ!」
初めて浴びた日の光に、吹き抜けた風、道端に生える木々や花々の数々にな、泪が……「ちょ、志子ちゃん、涙涙!」「私ら別に泣かせたかった訳じゃ」も、申し訳ございません!あの時を思い出すだけで私、泪が出てしまいまして!
旦那様に手を引かれて木漏れ日の中を共に歩いて、大きな木の木陰で木に背を預けて心地よい風に吹かれただけで本当に幸せでしたので!?」
「デート……?」「今時小学生でももう少し……」「でも志子ちゃん凄い幸せそうな顔してるし」
カーッ!ペッ!
田舎者共の自己主張が激しいのぅ……
そして、あの時志子ちゃんはそんな風に感じてくれていたのか……
黄泉の国はサップーケーだったから思い付きで現世の自然風景を見せあげたかっただけなんだけどな……
夏は海に行こうかと思っていたけどこの分だとハイキングとかも喜びそうだなー
「淡姫ちゃんは……何かこう恋人とか夫婦ってより相棒感が強いよね」
「そうそう、冥探偵と助手って関係性が強いってゆーか」
「そういえば冥探偵の事件簿シリーズの最新刊っていつ出るの?」
「アレはエッちゃん次第ね!」
「エッちゃん?もしかして淡姫ちゃんは江戸川先生の事をそう呼んでいるの!?知り合い!?マジ!?」
「そりゃあ、私の本の事をお願いしているんだから、顔合わせぐらいは……「マジ!?サインお願いできる!?ウソ!?」
そういう話なら旦那にした方が早いわよ。小野麗尾デッドマンズレーベルとかゆー集まりも旦那の仕切りだったはずだし」
「僕ならライナーをもっと曇らせる事が出来るよ……」等と悍ましい事を宣いながら漫画の神が原稿データを持ち込んだのはいつの日の事だったか。
死して尚創作と言う業から逃れられない亡者の群れがある日突然人の家に押しかけて、
「我々には創作物を世に送り出す権利がある!」
「多くの人が続編を待ち望んでいるのだ!」
等と、余りにも騒ぎ立てるので仕方なく小野麗尾㈱編集部を立ち上げ、小野麗尾デッドマンズレーベルと銘打った数々の遺作・遺稿を大手出版社に売り込んでやったのだ。
それらは随分と高値で売れ、思わぬ臨時収入に湧いたものだが。
これを受けた海外から、
「シェイクスピアは黄泉の国にお邪魔しておりませんか!?コナン・ドイルは!アガサ・クリスティは?」
等の問い合わせが相次ぎ、トチ狂ったファンがこれらの作者が実は日本人だったというどう考えても無理のある歴史歪曲に取り組もうとしたのを当該国政府が取り締まったり。
淡姫ちゃんの言葉を聞いたクラスメイトがこっちに来たので、書類は隠して。
「サインは色紙を用意してくれれば一人一枚ね。サインを持ってない先生は名前を書いて貰えばいいかな?」
「冥探偵の事件簿シリーズの最新刊はちょっと時間が掛かるかな?「どーして?」
ほら、あの事件の話が入るからさ。「どの事件?」
十重交差犯罪事件。「あー、あの事件ね」」
そう、十重交差犯罪事件。それは今まで冥探偵淡姫ちゃんの手がけた事件の中で最難の事件。
田舎の村のお屋敷の一室で一人の老人の死体が発見された事から発覚した事件である。
現場は開放感の強い角部屋で、初動を担当した刑事はすぐに解決できると見込んでいたが、
捜査が進むにつれ、指数関数的に増えていく容疑者・目撃者・証拠品。
そして発覚する複数の犯罪。謎が一つ解かれる度に、他の謎の難易度が跳ね上がり、
容疑者と目撃者のアリバイが他の犯罪の真相を覆い隠していく様から名付けられた事件。
殺人・詐欺・窃盗・名誉棄損・強盗・傷害・性的暴行等々……
10の犯罪と犯人が一つの現場に収束された負の奇跡の結晶を解決すべく、
警視庁の依頼を受けて我らが冥探偵が現場を訪れた時、謎は解き明かされる……?
とにかく人間関係が複雑骨折しまくって、登場人物全員の行動をタイムテーブル化するのだけで相当な手間と時間が掛かったし、田舎特有の排他・閉鎖環境で聞き込みも碌にできず、最後はブチ切れた淡姫ちゃんの大暴れで力ずくの解決をしたという……
江戸川先生には最後の大暴れを伏せてミステリー物として読めるようにと言う無茶振りをしたしなぁ。
そんなトンデモ事件の文章化とか拷問にも程がある。
関連資料だけでファイル1冊分になったしなぁ……
「それじゃあ、色紙は明日持ってくるわね!」
「ありがと~、小野麗尾君!」
「はいはい。言うまでも無い事だけど、家族の分とか友達分とかましてや転売分とか論外だから」
十重交差犯罪事件。いつかミステリー物を書く時にと考えていたネタですが、適当男の頭ではどうしようもありませんでした。
もしミステリー物に自信ニキネキの作者様がいらっしゃいましたら、一言メッセージ頂ければネタの持ち出しはご自由に。書き上がったら絶対見に行きますんで。
 




