063:お一人様のダンジョン攻略③
それからある程度の戦闘をおこない、モンスターのレベルは把握できた。
後は最短距離で進む事にする。
これまでダンジョン内で出会ったのはゴブリンゾンビがほとんどだ。
あとは洞窟によく生息している大型の吸血コウモリ、ダークバットなどもいたが数は少ない。
通常のモンスターが少ないのは呪力の影響だろうな。
これくらいなら複数を相手にしても問題ないレベルだった。
ついでなので多数のモンスターとの戦闘もやって見せておいた。
「ゴブザクゥ!!」「ゴブグフゥ!!」
あえてゴブリンゾンビが複数いるルートに進み、そして囲まれないように間合いを取る。
あとは隙をついて順番に斬撃で切り捨て、それと同時に解呪して討伐していく。
冷静に状況を判断できていれば、少し数が増えたところで問題はない。
「複数のモンスターと対峙する場合には位置関係の把握が重要だな。こいつらはゾンビ化して知性が低いが、モンスターによっては連携して襲ってくるパターンもあるから気を付けた方が良い」
「わかりましたなのです!」
そして現在地点は6階層。
途中でキャンプの跡を見つけたが、この程度ならまだ休息すら必要ない。
だがここでダンジョン内に満ちている魔力の様子がかなり変わった。
「ふむ、闇の魔力が濃くなっているな。呪力が強まっている。スー、魔力濃度の変化があった時には特に気を付けた方が良いぞ。強力なモンスターが近くにいる事が多いからな」
「は、はいなのです。気をつけてくださいなのです……」
さらに進むと予想通り、今までとは違うモンスターが現れた。
巨大なゴブリンゾンビだ。
もうボロボロになっているが他のゴブリンよりも派手な装飾品をつけている。
手にはモンスターの死体を無理やり組み合わせて作られた不気味な棍棒のような武器を持っている。
おそらくはキングだろう。
ゴブリンゾンビキングと言ったところか。
危険度はゾンビボアよりも高いだろうな。
少なくともAランク以上か。
そしてゴブリンキングがいたとなると、このダンジョンはもともとはゴブリンの巣だったのかも知れない。
それがなんらかの影響で崩壊し、呪いの溜まり場となった。
あるいは逆で、強い呪力によって巣が崩壊して乗っ取られたのか。
……まぁ『邪龍の呪穴』なんて呼ばれているらしいから原因にも想像がつくものだがな。
この階層からは道が一本道になっている。
本来ならここまでがゴブリンの巣を形成していたのだろう。
ともかく進むには目の前のデカブツを倒すしかない。
「ゴゴブァァァァァァアアアアアアアアアッッ!!!」
威嚇するような咆哮。
空気がビリビリと震えるほどの音量だ。
ゴブリンにしては驚異的だな。
だが無意味だ。
「『月穿つ茨』」
一気に懐に潜り込み、そして全身を使った縦の回転切りを放つ。
斬撃はキングの巨体を股下から頭部まで駆け抜けて、そして真っ二つに切り裂いた。
本来ならば残虐で狡猾な、知性があるからこそ危険なのが群れの長たるゴブリンキングだ。
だが呪力によってすでに脳まで腐敗しているのだろう、行動パターンは武器を持っただけのゴブリンゾンビと変わらなかった。
悲鳴を上げる間もなくキングが倒れる。
「あんな大きなモンスターを一撃で倒しちゃったのです!? さすがご主人さまなのです!!」
「デカいだけだったな。これくらい大した事はない」
さっさと進んでしまおう。
様子見のつもりだったのだが、この調子なら1日もかからずに攻略できそうだ。
安全とは言え、スーを1人で長い時間またせるのもイヤだからな。
「……いや、まだか」
「ゴブ、ボッ、ゴバッ!! ゴブゥゥゥ!!!!」
倒したハズのゴブリンゾンビキングが再生している。
呪力の核はキングの胴体中央にあった。
胴体を切り裂いた時にその核は確実にとらえていたし、その証拠にその呪力の気配は消えている。
解呪によって浄化された切断面からも呪力は消えていた。
だが、その周辺から再び浄化された部分へと呪力が侵食していた。
「い、生き返ってるのですー!?」
「そもそもゾンビだからな」
……だが、これは少し妙だ。
核を失えば呪力は弱まるハズだが、その様子がない。
「【調査】」
周囲を調べると洞窟の中にいくつもの呪力溜まりがあった。
どうやらこのエリア自体が呪われた空間になっているらしい。
「なるほどな。このフロア自体が呪力に侵されて異空間になっているのか……」
強力な呪術による罠だ。
この階層から急に密度の高い闇の魔力が充満していたのはこのためだろう。
このゴブリンキングの死体はただの傀儡というわけだ。
これではいくら剣で攻撃しても倒せない。
「さてと……」
この傀儡を無効化する方法は2つある。
1つは周囲にある呪力を全て解呪する事。
もう1つはゴブリンゾンビキングをまるごと消滅させる事だ。
前者の方法は簡単だ。
このエリアを解呪してしまえば解決する。
だが、ここはあえて後者を選ぶ事にした。
「さすがに剣技ではきびしいな。相性が悪い」
斬撃ではどれだけ細切れにしても復活するだろう。
一時的に行動不能にするだけでも先に進む分には問題ないのだが……
「良い機会だからな。実戦での攻撃魔術を見せてやる」
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