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062:お一人様のダンジョン攻略②

 

【照明魔術】(ライト)


 薄暗い洞窟の中を光の魔術で照らす。


「闇の魔力が濃い場所では光の魔術は阻害されやすい。こういうダンジョンで火属性の魔力が使える場合はそれでサポートする手もあるし、明かりの魔道具を持ち込むのも有効だろう」


 スーに向けた解説をはさみながらダンジョンを進んでいく。


 実際に光の【照明魔術】に火属性を加え、術式をカスタマイズしてみせた。


 真白だった光の球に赤みが加わり、目に見えて照明としての効果が増す。


「なるほどなのです……!」


 拾った小石を加工したイヤリング型の魔道具からスーの感心したような声が聞こえる。


「ルート選びでは最短ルートを見つけるだけではなく、モンスターと出会わずにパーティの消耗を少なくするためのルート選びも重要だ。【遠見】(スコープ)なんかを使えると便利だが、簡単な魔力探知でも問題ないぞ」


 とはいえ、今回はモンスターを避けるルートは選ばない。


 ダンジョン内の様子見も兼ねているからな。

 まずは接敵してモンスターのレベルを確認しておきたい。


 ダンジョンを進んでいくとゴブリンらしき個体を発見した。

 薬草採集の時にであったボアと同じく、全身を呪力に侵されている。


「ゴブリンゾンビか。今回は調査も兼ねて戦闘するが、目をつぶっていても良いんだぞ?」


「だ、だいじょうぶなのです! わたしだってご主人さまのために戦えるようになりたいのです!」


「わかった。気分が悪くなったら無理するなよ?」


「はいなのです!」


 ゴブリンゾンビ。

 呪力の強さを考えても危険度はBランク下位程度か。


 ゾンビボア以下だな。

 この様子なら、浅い階層なら問題なく進めるだろう。


 そう判断し、俺は剣を抜いた。


 町を出る前に1本、買っておいた物だ。


 一人(ソロ)で冒険者として活動するのなら、魔術に頼りっきりともいかない。

 魔力攻撃に耐性をもつモンスターも存在するからな。


「剣か、懐かしいな……」


 戦いの場で剣を握るのは実に久しぶりだった。


 うっすらとした記憶ではあるが、孤児院では剣の鍛錬をしていたハズだ。

 最初から見込みがあれば冒険者として出荷する予定だったからだろう。


 今思えば、鍛錬とも呼べないただのゴッコ遊びだったが、おかげでトランに拾われたと考えるなら無駄とも言い切れない。


 トランにパーティメンバーとして拾われた時、俺は魔術剣士として拾われた。

 魔力を持っていて、そして孤児院の子供たちの中では一番剣が使えたからだ。


 ハイエアは剣と拳の世界だ。

 魔術が否定されているわけではないが、それでも強力な魔術を使う魔術師よりも白兵戦に長けた一流の剣士や武闘家が称えられる文化圏である。


 だから俺に最初に与えられた武器はこんな金属の剣だったのだ。


「そういえば、初めて戦った相手もゴブリンだったな」


 俺は懐かしさを感じながら、剣を握る手に力を込めた。

 不思議なもので、剣の使い方はまだ体が覚えている。


 あの時はゴブリンの群れに無謀な突撃を仕掛けたトランがアーチャーに奇襲され、そのトランをかばった俺は膝に矢を受けてしまったんだっけか。

 だがケガまでしたかいもあり、なんとかゴブリンの群れを討伐できた。


 それが『黄金の薔薇』(ゴールデンローズ)の快進撃の始まりになったのだ。


 俺はケガのおかげでしばらく後方支援をする事になり、そうしてそれが役割として定着した。


 もしケガしていなければ、俺はまだトランの隣で戦えていたのだろうか……。


「ゴバババァァァ!!」


 ゴブリンゾンビが知性の欠片もない喚き声とともに突進してくる。

 腐敗した爪は今もなお鋭い。


 剣士としての自分の可能性。

 試してみたい気持ちはあった。


 トランは俺にとって、本当の勇者だった。


 だからその背中をいつも見てきた。

 トランの血統、ストックラット家に伝わる剣技だ。


 自身に【身体強化】を付与し、構える。


 目指すのは、トランの姿。

 Sランクパーティのリーダーとして俺の前に立っていた背中だ。


 そのレベルまで補助を強化し、身体能力を底上げする。


 俺はその姿を思い出しながら、ゴブリンに肉薄した。


 剣の刃を水平に、全身をひねり、茨の鞭がしなるように剣を振るう。


 薔薇の剣技。

 よく覚えている。


『薔薇十字』(ローゼンクロス)


 ズババァアアン!!


 一瞬にして縦と横に切り裂かれ、ゴブリンゾンビが4つの肉片に変わる。


 剣に付与した解呪の力により呪力が打ち消され、もう復活する事もない。


「ふぅ……よし。問題ないな」


 ゴブリンゾンビは間違いなく死んでいた。


「す、すごいのです! ご主人さまは剣も使えたのです!?」


「ただの見よう見まねだけどな」


「それでもモンスターと戦えているのです! さすがご主人さまなのですー!!」


 グロテスクな死体を見せるのはどうかと思ったが、スーは全く気にしていないようだ。


「……まぁ、こういうのも悪くないかもな」


 今までは誰かのために魔術を使い続けてきた。

 仲間のサポートのために常に意識を向け、魔術を使い続けるのが役目だったから。


 だが、こうして1人で戦うというのも悪くないようだ。


 余計な事を考えず、目の前の戦いにだけに集中できる。

 自分に足りていないモノは考えなくともわかりやすい。


 それを魔術で補完していけば良いだけだ。


 やはり俺はハイエアの冒険者なのだろう。

 いまだ勇者の姿にあこがれている。


 この力で自分がどこまで戦えるのか、少し楽しみになってきた。

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