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005:新しい一歩②

「うっ……!?」


 【解放】(リリース)の後、急にズキンと脳に痛みを感じた。

 常時魔術の発動による膨大な魔力の消耗がなくなり、体内の魔力バランスが崩れたのだろう。


 なにせ5年ぶりの解放状態だからな。


「お、おぉ……? 体が、軽い……思考がすごくクリアだ……」


 自分でも驚くほどだった。

 俺はこんなに魔力を消費していたのか。


 魔力の使い過ぎによる副作用といえば身体能力や思考力の低下があげられる。

 魔術師なら誰もが知っている症状だが、自分が常にそんな状態にあったとは思わなかった。


「自分では気づかないものなんだな……」


 もう魔術の常時発動には慣れていたつもりだったのだが、さすがにパーティ全員をサポートし続けるなんて無理があったようだ。

 パーティのランクが上がるにつれて補助の効果も高くしていく必要があったからな。


 今は体中に魔力が満ちるのを感じる。

 まるで初めてのような感覚で少し戸惑うが、それにもすぐに慣れた。


 これが自然な状態なのだから当然だろう。


「これでトランたちは本当に俺の補助が全くない状態になったんだよな。5年ぶり……うーん、本当に大丈夫なのかな……? 専門ではないにしても補助魔術はかなり研究していたつもりだが……」


 って、ダメだダメだ。

 もう仲間じゃないんだから、気にする必要はないだろう。


「はぁ……」


 いつまでも未練がましいぞ、俺。

 はやく気持ちを切り替えないとな。


「そうだな……俺よりレベルの高い新しい仲間だって加入するんだし、問題ないハズだよな。補助専門の魔術師なら俺より補助魔術は強いだろうし、うん」


 そんな事より、今は自分の事を考えるべきだろう。


 なにせ金も装備も魔道具もないのだ。

 こじんまりとしたカバンの中にはカチコチのパンと水だけ。


 トランと再会してしまうリスクを考えると、この街にもいられない。

 その内「さっさと出ていけ!」というトランの幻聴が聞こえてきそうだ。


「よし、今度こそ……行くか!」


 いつまでも元パーティから離れきれない気持ちを切り替えるために、俺は大きく息を吸い込んだ。


「すぅー…………あっ」


 ふと見上げた夜空に輝く星々に、俺は少しだけ見ほれた。


「夜の空ってこんなにキレイだったのか……」


 ずっと部屋で魔術の研究ばかりしていたから、知らなかった。

 俺にとってはそれが全てだった。


 魔術の上達だけが、仲間たちに認められるためにできる唯一の方法だと思っていたから……。


「そうか。もう、そんなことする必要もないんだな」


 もう暗い部屋に閉じこもる必要もない。

 わずかに与えられる報酬金を節約して高価な魔術書を買いあさる必要もない。


 もう大抵の魔術は使いこなせるようになっている。

 一人で冒険するにも困らないだろう。


 そう考えると、今の自分がとても自由な事に気が付く。


 ずっと命を削る覚悟で使い続けてきた補助魔術を解放したからなのか、心の奥底に絡みつくようなモヤモヤした気持ちも吹っ切れたような気がした。


「……よし!」


 気が付けば少しだけワクワクしている自分がいた。

 さっきまでの暗い落ち込んだ気持ちが嘘みたいだ。


 夜空が明るく見える。

 街を照らす灯が俺の行くべき道を照らしているかのように感じる。


「のぞむところだ……!」


 これからは勝手に、好きに生きてやるさ。


 行き先も、買う物も、全てが俺の自由だ。

 装備する武器だって、使う魔術だって俺の意思で自由に選べる。


 だからこれからは好きに生きる。


 誰の指示でもない、俺の意思で。

 好きなことで、生きていく。


「……まずは、この街を出よう」


 だから5年前とは違う。


「そして……」


 今度はトランの意思じゃない。

 俺の意思で……俺がそうしたいと思ったから。


「最高の冒険者になってやる」


 冒険者登録が破棄されたくらいで、諦めてやらない。


 行く先はたった今、決めた。

 なかなか踏み出せなかった一歩がとても軽い。


 今、踏み出したこの足はどこへ向かって進んでも良いんだ。


 ここから先は俺のための人生にする。

 全ては俺の自由なんだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自由な冒険良いですねぇ 個人的には最初の街が拠点になるとか、序盤でいきなり離れられない人間関係やシガラミが構築されるとか、最悪序盤で結婚や立場が固定され、自由ではないチート物語になるという展…
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