049:薬草とゾンビボア①
「あ、ルードさん。お疲れ様です」
冒険者ギルドに戻ると、いつものビジネス笑顔でエナンが迎えてくれた。
「薬草採集、クリアしてきたぞ」
「お早いですね。予想していましたけど」
「これくらいの依頼ならな。スー、出してくれ」
「はいなのです」
「あら、スーさんは荷物持ちのお手伝いですか?」
「いや、今日はスーが採集を手伝ってくれたんだ。というより、今日はスーが全部やってしまったんだが、問題だったか?」
「いえ、品質に問題なければ大丈夫ですよ。奴隷の使役自体はちゃんと認められていますし」
正確には奴隷契約なんてしてないんだけどな。
そこまで厳密には調べられないようだ。
スーはポーチから採集してきたイヴサン草を取り出し、カウンターに並べる。
小さなスーの体型に合わせた小型ポーチからは明らかに容量オーバーした量の薬草が出現し、エナンもそれに気が付いた。
「って、そのポーチってアイテムボックスですか? さすがルードさん、珍しい魔道具を持っていますね」
「はいなのです。ご主人さまが作ってくれたのです」
「へぇ~、そうなんですね。可愛いポーチで……って作った!? アイテムボックスを!?」
「そうだが? 採集を手伝うと言いだしたから、あった方が便利かと思って即席で作ったんだ」
これくらいすぐに作れるからな。
別に驚くほどの事でもないと思うが。
「しかもそんなお手軽に!? い、いや……ルードさんですからね。今更おどろきませんけどね!」
思いっきり驚いていたように見えたのだが。
それでも笑顔を崩さないのは相変わらず器用なものだ。
気を取り直して薬草の査定を始めるエナン。
「あら、すごい……なかなか上質なモノばかりじゃないですか。初めてとは思えないですね。スーさん、冒険者の才能がありますよ!」
スーの腕前にエナンが眼鏡の奥で瞳を輝かせていた。
上質な薬草はいくらあっても困らない。
ギルドとしても助かるだろう。
「そ、そうなのです? ご主人さまがいろいろ教えてくれたおかげなのです。えへへ……あっ、あの、でもわたしはご主人さまの奴隷ですから! 冒険者にはなりませんなのです!」
「あら、気が向いたらいつでも声をかけてくださいね?」
「かけないのです! わたしはご主人さまのモノなのです!!」
そう言って元気な声をギルドに響かせて俺に抱き着いてくるスー。
「おいおい、あんな幼い子供を自分のモノあつかいかよ。絶対ヘンタイだぜ」
「しかもめちゃくちゃ可愛い獣人だ。うらやま……絶対ヘンタイだな!」
「くそっ! うらやま……けしからん!!」
相変わらず周囲の目が痛い。
そういえば、そういう発言はギルドで控えるように言うのを忘れてたな。
今度こそあとで言おう。
「……はい、査定完了です。品質には問題ありません。というよりすごく良い品質でしたよ。これで薬草採集の依頼は無事に完了ですね。報酬をお支払いしますので少々おまちください」
「わかった。あ、サヴィニアはいるか? ちょっと気になる事があって話したいんだが」
「いますけど……ああ見えて忙しい人なので、普通なら事前に面会申請が必要なんです。けど、ルードさんなら特別にお通ししてもよさそうですね。こちらへどうぞ」
そう言ってギルドマスターの部屋へと通された。
登録試験の時にサヴィニアと模擬戦を行なった部屋だ。
あの時とは違い中央には来客用のテーブルやソファが置かれている。
「失礼します」
「おい、エナン。今日は面会の予定はなかったはずだぞ。ちゃんと事前に申請をしろと……ん? なんだ、ルードか。どうしたんだ?」
サヴィニアは机で書類をにらみつけている所だった。
俺の姿に気づくとメガネを外し、席を立つ。
そうして当たり前のように受け入れてくれた。
「薬草採集の途中で妙なモンスターに遭遇したから、それを報告したかったんだ」
「ほう? どんなモンスターだ? というより悪いな、薬草採集なんて依頼を任せてしまって。君の実力ならもっと高難易度の依頼を任せたいんだが……」
「いや、いいさ。それが規則だろ? それより呪力によってゾンビ化したワイルドボアに遭遇した。おそらくはAランク相当の危険度だと思うから早めに知らせておこうと思ったんだ」
その言葉にサヴィニアが反応した。
ピクリと眉が片方、跳ねる。
「呪力? ……興味深いな。詳しく話を聞かせてくれ」
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